さよならジャルネ、こんにちはトラブル
また遅くなってしまいました、すみません!
「もうちょっといても良かったのにねぇ」
「いやぁ、父様達に怒られるんで…」
夕方、観光を終えた僕とジーンはあの壁のところまで華さんと十六夜さんと焔さんに見送りに来てもらっていた。
虎徹さんはお城からあまり離れられないらしい。
「このウォール・ジャルネは殿の魔法で作ってるのよ。殿の特殊能力は『完全防御』。どこかを起点として発動するとこういう壁が作れるの。その起点が城だから、基本はあそこにいるのよ」
「これ、ウォール・ジャルネっていうのか…巨人好きは虎徹さんだったのね…」
「実は葉桜の能力が『拡大縮小』っていって、大きくなったり小さくなったり出来るんだけど…大型役やらせて爆笑してたわよ」
「兵士役は?」
「まだ東雲がいた頃だったんだけど、見た目が主人公にちょっと似た感じだったから無理矢理やらせてたわ。本人は嫌そうにやってたわね」
「超見たかった。なんなら僕も混ざりたかった」
「今度やりましょうか、服装作っとくわ!」
「俺もやる!」
「じゃあアタクシもぉ〜」
「お、俺もなんかやりますか?」
「ジーンは撮影係ね、または効果音と演出係」
「じゃあお手伝いします」
「よろしく!次に来る楽しみが出来たなぁ、ふふふ」
「待ってるわよ、ユージェ」
「今度はなんか俺にも面白いもん持ってきてな!」
「また良いものあったらよろしくねぇ」
「うん、本当にありがとう!また来るね!」
「お邪魔しました、ありがとうございます」
みんなへ手を振ってからジーンの腕を掴んで、指を鳴らす。
やっぱり来れて良かった、早く帰ってベティ様にも話したいな。
というか、連れてきたい。
王妃様連れ回しちゃ拙いだろうなぁ…
ベティ様が陛下と喧嘩して家出する事になったら連れて行こう。
是非黒鉄さんのご飯をみんなで食べたい。
「…うん?ここどこです?」
「行ける限界まで飛んでみた。どこかはわからん!」
「微妙に怖い事しないで下さいよ!」
「そして僕は立ってるのが精一杯!」
「威張るな!」
ぶぅ、だって早く帰りたかったんだもん。
ガチの本気で鼻血出す限界までだと眠気がやっばい。
「というか、国境毎に飛ばないと不法入国じゃないんですか…?」
「…確かにぃ!やっべ、とりあえず毎日国毎に飛んだ方がいいな…今日はどこかで泊まって、明日はスラース公国とサクヴァン王国の境に戻ろう。よくよく考えたら僕とジーンってジャルネで入国申請はしてないからスラース公国にいた事になってるもんね」
「…というかノワールとブランがスラース公国に預けたままですからね?!ジャルネは島国だから連れてけないかもって近くの宿場に置いてきたじゃないですか!!」
「しまったぁ!!!置いてきちゃったよ!!!
「体力戻り次第帰りましょう!!」
「だね!!ごめん!!」
こうして翌日スラース公国に戻った僕達は、心なしか不貞腐れた2頭に謝り倒すのだった。
数日後、僕達はレレートレード王国にやってきた。
さっさと通り過ぎても良かったんだけど、折角だからシャーロットさんに会っていこうかなって。
なんとなくだけど、ジーンも会いたそうにしてたし?
あの商会の近くまで行くと、何やらバタバタと立て込んでいるようだった。
「忙しいのかな?」
「商品の入れ替えでもしてるんでしょうか?」
「ジーン、敬語」
「…気をつける」
商会の前に辿り着き、近くにいた男の人へジーンが話しかける。
「すみません、シャーロットさんはいますか?」
「え?!うわ、どっちもカッコいい!!え、もしかしてアンタ達のどっちかがお嬢さんの言ってた…?!」
「「え?」」
「旦那、旦那ぁー!!」
叫びながら店の中へ入っていく男の人。
うん?なんかもしかしてタイミング悪かった?
「貴様がうちのシャーロットを誑かした奴かぁー!!」
「「はいぃー?!?!」」
急にストレイトさんが目を血走らせながら僕とジーンに掴みかかってきた。
何々、どういう事?!
「…ん?貴様、ジェリスさんに似てるな…?」
ぎっくーん!!!!
やめて、そこには気付かないで!!!!
「えーと、すみません、自分達シャーロットさんの知人で…今日はいらっしゃいますか?」
「え?知人?そっちの子も?」
「えぇ、前回街に寄った際に顔見知りになりまして…また通りかかったので挨拶だけでも、と」
「あ、そうでしたか、それは失礼しました…えぇと、娘なら中にいるのですが…」
「ちょっと、叔父様!一体何を騒いで…あ!ジーンさん、ユズキさん!」
「よぅ」
「こんにちは、シャーロットさん」
おや、シャーロットさんも出てきた。
そしてジーンを見て少し頬を赤らめてる。
やっぱり、もしかしてもしかするのか?
ジーンも隅におけないねぇ!
「シャーロット、この人達じゃないのか?」
「なんの話?」
「旅に出たいと言ってただろう!誰か男と駆け落ちする気だろう!」
「なんでそうなるの?!ヘイゼート兄さんが結婚するなら、私は家を出た方がいいわよねって話から派生した話でしょう?!」
「他国へ行きたいなんてお嫁に行きたいって事じゃないのか?!」
「そんな人いないわよ?!」
…成る程、単純にシャーロットさんは新婚生活を邪魔したくなくて独り立ちしようとしてるのね。
ならまぁ味方してもいいんだけどさ。
「ちなみにどこへ行こうと?」
「あの!リリエンハイド王国に行こうと思ってるんです」
「「…ん?」」
「とても安全な国だとお聞きしています!防衛面が優れているのだとか!女性が1人で住んでも安心だとか!」
「…どこからそんな話に?」
「あぁ、でも確かローグナーが似たような話してたかも…?」
「彼の国特有の有名な方がいらっしゃるんですよね?その方がとてもお強いんだとか!そういう国でしたら安心して働けると思うんです!」
「リリエンハイドだって?!どれだけここから離れてると思ってるんだ!!向かうのにだって何ヶ月かかると!!」
「今まで外に行く機会もなかったんだから、今回くらい許して下さい!それにこのお2人はリリエンハイド王国の方なの!今から帰るはずだから、護衛として雇えば無事に着けます!」
「…うーん、えっと、確かに帰るとこではあるんだけど、急いでるから最速で帰る予定なので…」
「生憎誰からも依頼は受けずに帰るんだ、連れて行く事は出来ないな」
流石にね、こんなところで『ワープ』してますとは言えないよね。
「そ、そんなぁ…!」
「ほれみろ!シャーロットは無計画過ぎるんだ!この前の家出未遂の時もそうだったが…!!」
「そ、その話はやめてよ!お願い、ジーンさん!私を一緒に連れていって…?!」
おぉ!どさくさに紛れてシャーロットさんがジーンに抱きついた!!
そんなシャーロットさんに女の子慣れしてないジーンは顔が真っ赤だ、面白い!
シャーロットさんって大人しそうに見えて変なところ大胆だよなぁ。
あ、めっちゃ困った視線向けてくる。
さて、どうしたもんかねぇ…




