ビバ!日本食
その後、しょうもないアニメの話なんかをしていたら、お昼になっちゃいました。
とりあえずジーンを待たせてたので控えの間に戻る僕と華さん。
扉を開けたら少し不安そうな表情だったジーンが満面の笑みで駆け寄ってきた。
いやぁ、こういうところが犬っぽいよねぇ。
幻覚で耳と尻尾が見える。
「ユージェ様!お帰りなさいませ!」
「ただいま、ジーン。何か変わった事はなかった?」
「あー…なんか、数人の人がその扉を少し開けて覗いてキャーキャー言って帰ってったりしたくらいですかね…」
「あらやだ、あの子達来てたのかしら?」
「誰?」
「例の街に住んでる5人の中で、若い女の子が2人いるのよ。多分その子達と、その友達でしょうね」
「あぁ、成る程」
「とりあえずお昼食べに行きましょ?途中で会ったら紹介するわ。食べ終わったらお待ちかねの問屋さんに行って醤油とか見ましょうか」
「待ってました!!うわぁ、楽しみだなぁ」
「今日はここに泊まっていきなさいな。帰るのは明日以降でもいいんでしょ?」
「そうだね、ちょっとジャルネを探索してから帰ろうかな。また調味料終わったら遊びに来るよ」
「その時は入国審査とか必要ないから、勝手にこのお城までいらっしゃい。殿か私に取り次ぐように言えばいいから」
「うん、ありがとう」
いやぁ、持つべきものは同郷の戦友だなぁ。
戦ったわけじゃないけども。
「あ、その服ちょっと目立つから着替えない?まぁその顔立ちとかで目立つ事に変わりないけど」
「なんか貸してくれる?」
「普通の服とコスプレ衣装、どっちがいい?」
「…好きにしてよ」
「やった、じゃあコスプレね!」
楽しそうだなぁ。
暫くして華さんが持ってきた衣装の山に、軽く引いたのは内緒です。
そして着替えたのは、ジーンが新○君スタイル、僕がヅ○スタイル。
色合いは少し暗めだけどね。
ただ例のリボンが全く似合わなかったので、紺の組紐を借りてます。
「やだ、いいじゃなーい!ユージェは高○と主人公で迷ったけど、これもシンプルでいいわね」
「包帯で目ぇ隠さなきゃいけないからやめとくよ」
「ユージェ様、よくそんなワンピースというかスカートみたいな服着れますね…俺のこのズボンみたいなやつだってなんかスカスカして心許ないのに」
「慣れだね、慣れ。元々女装もするし」
「あぁ…そうっすね…」
だからそう遠い目しないでよ。
あとは着物も浴衣も前世で着てただろうから全く違和感もないや。
強いて言うなら男物は初めてで、帯の締め方がわかんなかったくらい。
「私も着替えようかしら!」
「チャイナ?」
「流石にそれは悪目立ちするから無理よ」
それもそうか。
まぁ結局着替えないでそのまま行く事になった。
街の中を歩いていると、結構な人が僕達を見ているようだった。
「華様!珍しいな、お客人かい?」
「えぇ、こっちがユージェ、こっちがジーンよ」
「お兄さん達、すっごいカッコいいねぇ!」
「あ、ありがとうございます」
「もしかしてどっかの王子様かな?」
「えーっと、母が元王女ではありますね」
「本当かよ!すっげぇな、アンタ!」
中々フレンドリーだな。
にしても、華さんは様付けか。
ここでも一応転生者は特別扱いなのかな?
敬われてる感じ?
「ここよ、ここの和食が美味しいんだから!なんてったって店主が元コックだからね!」
「それは期待出来るねぇ」
「月詠ぃー!日替わり3人前お願いねー!」
華さんが叫ぶと、奥からパタパタと足音が響いて聞こえた。
そして出てきたのは、なんと幼女。
ふわふわのロングの黒髪に、くりっくりの真っ黒お目々。
4〜5歳くらいかな?
和服にぴらっぴらフリッフリのエプロンが良く似合ってて可愛いなぁ。
「華しゃま、こんにちは!あい、日替わり3人前ですね!」
「黒鉄に伝えてくれる?今日は特別美味しく、日本の味にしてちょうだいってね」
「あい!わかりまいた!」
元気よく敬礼してから店の奥に戻っていく幼女。
いやぁ、癒される。
「あの子はさっき言った5人のうちの1人、黒鉄の娘の月詠よ。可愛いでしょう?」
「めっちゃ可愛い、癒された」
「ツクヨミ、クロガネ…なんとも珍しい響きの名前ですね」
「あはは、慣れれば気にならないよ」
店内に入って、辺りを見回す。
座敷はなくて机と椅子のセットだけど、雰囲気は蕎麦屋さんとかみたいだな。
あー、蕎麦も食べたい、乾麺とかないかな?
あるなら買って帰ろう。
うどんなら作れるし、なんなら作った事もある。
でも啜るのはマナー違反かなって思って、1人で1回だけこっそり食べたくらい。
でもあんまり美味しくなかった。
だって醤油ないんだもん!
キノコや魚から取った出汁だけじゃ限界があったわ!
「あーい、日替わり3つ、お待たせませたー!」
「お待たせしました、だろ?華、今日は珍しいタイプのツレがいるんだな?」
月詠ちゃんが1つ、後ろのガタイのいいスキンヘッドのおじさんが2つトレーを持って現れる。
あれだ、海○主っぽい、サングラスかけて下さい。
色付き眼鏡でも可。
…にしても、月詠ちゃんに全く似てないな、遺伝子って不思議。
「殿から聞いてるでしょ?こっちのユージェがそうなのよ。ジーンは従者だって」
「ほう、そうか、ジャルネへようこそ。俺は黒鉄、アンタと同類だよ」
「あ、ユージェリス=アイゼンファルドと申します。ユージェとお呼び下さい」
「ジーンです」
「ユージェは久々の味を堪能してくれ。ジーンは初めてだろうからカトラリーも置いておくな」
「ふわぁぁぁ…!!」
やっばい、味噌汁の出汁の良い匂いが立ち込めてる!!
ラインナップは魚の塩焼きに、だし巻き卵、ひじきの煮物に豆腐とわかめの味噌汁、漬物各種になんと納豆まで!!
あー、ヤバい、これは泣きそうだわ。
「い、いただきますっ…!!」
もう人目とか気にせず掻っ込んだ。
あぁ、体の隅々まで染み渡るぅ…!!
これを欲してたんだよ、僕の心は!!
「…ユージェ様がここまで食い付くのを初めて見ました」
「まぁ、ユージェが長年求めていた味だろうからねぇ」
「あんまり掻き込むな、おかわりもあるんだからゆっくり食えよ」
「むりぃ…!!ふまい…おいひい…しあわしぇ…!!」
「あはは、お兄しゃま、良かったねぇ!あい、お茶もどーじょ!」
「あいがとぉ…!」
もうダメだね、タガが外れた。
食えるだけ食ってやる。
【暴食スキルを取得しました 】
【食い溜めスキルを取得しました 】
…なんか久々にスキル取得した気がする。
そしてなんとも言えないスキルだな。
食い溜めスキルって確かいっぱい食べておけば数日食べなくても活動出来るスキルだっけ…
暴食スキルってのも酷いな、普段の食事の5倍は食べれるようになるスキルでしょ?
…はっ!つまり今日本気で食べてもお腹壊さないって事?!
なんて神スキルなんだ、ありがとう暴食スキルさん!!
そしてきっちりおかわりしても、まだまだお腹は痛くない。
あぁ、清々しい気分…!!
「…ユージェ様、そんなに食えたんですか…」
「いいスキル取得出来たから、問題なし」
「それはそれは…というか、この豆なんなんですか…?臭いし、ネバネバしてるし、本当に食い物…?あと、この棒で良くそんな簡単に食べれますね…」
「納豆は好き嫌いあるよねぇ、僕は大好きだけど。箸は初見じゃ無理だよ」
「私も好きよ」
「俺も好きだな」
「あたしは苦手でし…」
「確か牡丹も苦手よね?葉桜は?」
「葉桜は食えなくもないって感じだったな。焔は絶対無理だって言ってたぞ」
「どちら様?」
「例の人達よ。全員の詳細を言うのであれば、殿、黒鉄、焔、東雲が男。あたしと牡丹、葉桜、十六夜、神楽が女。その中で東雲と神楽が外出中よ」
「全体的に名前が古風」
「殿の趣味なの。この国の子供の名前は代表である殿が決めるのよ。ちなみに東雲と神楽は他所だと名前が目立つから、シノールとカランって名乗ってるわ」
「まぁ目立つだろうし、呼びづらいもんねぇ。ジーン、言える?」
「く、クロガネさん、ホ…ムラ、シノオメ?ハナさんと、ボタン、ハザウラ…イザヨウ、カクラ?」
「色々惜しいな。字もわかってないからかめっちゃ棒読み」
「まぁしょうがないわね」
「すみません…」
しょんぼりするジーン。
まぁ日本の名前って言いづらいだろうからね。
「さ、気を取り直して問屋に行きましょうか!十六夜と焔がやってるお店なのよ」
「それは期待出来そうだね!」
「なんでもあるわよぉ?」
「…今更なんだけど、お金ってどうしたらいいの…?」
「うちの国、お金ないのよ。こういう飲食店はタダなの。問屋とかでは物々交換ね。何か渡せる物ある?」
「あー、一応色々あるかな…アイテムボックスに詰め込んだお土産品とかもあるし」
「じゃあ大丈夫よ。なんならユージェは殿のツケにしとけばいいわ」
「それもいいのか」
「無問題」
「じゃあ足りなければそうする。黒鉄さん、ご馳走様でした!めっちゃ美味かったです!」
「なら良かったよ。また食べに来いな?」
「はい!」
「あいがとーございまーしたっ!」
「月詠ちゃんも、またねー」
どさくさに紛れて月詠ちゃんを撫で撫で。
満面の笑みを貰ったら癒されました、あはん。
さぁ、買い物するぞぉー!!
さて、今日を含めて6日間更新頑張ります!
更新時間は未定です(笑)




