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ジャルネ自治国

心の憂いも晴れた、5雷のある日。

ついに、ついに辿り着きました…!!


「やってきたぜ、ジャルネ…!!」


ただし、問題が1つ。


「…これ、どこが入り口なんでしょうかね…」


そう、到着したと思ったら、見渡す限り壁、壁、壁。

国境沿いは馬鹿でかい壁オンリー。


「ウォール・○リアかよ…」

「なんですか?それ」

「ごめん、こっちの話。にしても、扉らしきものがないねぇ…ロッツォさんは島国って言ってたし、多分この壁の向こうは海か湖みたいな感じだと思うんだけど…」

「地図的には馬鹿でかい湖ですね、ジャルネ自治国自体はうちの領地2〜3個分ってところでしょうか」

「ここはまだスラース公国なんだよねぇ…ねぇ、壁壊したら侵略行為と見做されるかな?飛び越えるのもダメだよね?」

「やめて下さいね?」


ちぇっ…

暫く周りを歩いて見たけど、やっぱり切れ目はなかった。


「しょうがない…ここは正攻法か…」

「何するんですか?」

「…《開け、ごまー!!!!》」

「はい?!」


力の限り叫んでみました。

すると…


「…嘘だろ…?」


ゴゴゴゴゴ…と大きな音を立てて壁が割れ始めた。

すっげぇ、まさかマジで開くとは!

ジーンなんて口開いたままだし、間抜け面よ?

2〜3メートル開いたと思ったら、中から人が出てきた。

女の子…だな、まさかの着物?浴衣?みたいなの着てるし。

黒髪黒眼で、なんだかとても安心出来る雰囲気を纏っていた。

凛とした表情の女の子は、僕達を見据えて足を止める。


「ジャルネの方ですか?お願いがあって参りました」

「…お聞き致します」


この場でする事と言えば、ただ1つ…!!


「…醤油と味噌とその他諸々売って下さい!!あるならみりんも!!」


ジャパニーズ土下座!!

いつにもまして綺麗に土下座を決めた僕に、ジーンは引き気味だった。


「…ならば質問にお答え下さい」

「はい」

「…この壁を見て、どう思われました?」

「…ウォール・○リアって体当たりで壊せばいいんだっけ、です…」

「…そしたら駆逐します、1匹残らず」

「…頸は勘弁して下さい」


…なんだろう、こういう会話、デジャブ。

確かベティ様とはド○えもんだったな。


「…っぷ、うふふふふ、くふっ、あはははは!!」

「「…え?」」


なんだなんだ?

急に笑い始めたぞ?


「やぁだ、おっかしい。ちなみに貴方何県出身?」

「あ、神奈川です」

「あら、私もなのよ。後で地元ネタで語り合いましょ。とりあえず中へどーぞ」

「え?入国審査とかは?」

「さっきのでおっけーおっけー。そっちのお連れさんは普通の人?」

「あ、うん、そうです。知らないの」

「なら発言とか気をつけるようにするわ。そっちの人、彼を悲しませたくなかったら余計な事は聞かない方がいいわよ。あんまりしつこいと入国禁止にしちゃうわよ?」

「あ、あぁ…」

「じゃあ行きましょうか。あぁ、私は華って言うの、よろしくね」

「リリエンハイド王国から参りました、ユージェリス=アイゼンファルドです。ユージェと呼んで下さい」

「ジーン、です」

「ユージェとジーンね。私に敬語はいらないわ。ちなみにユージェはそれ(・・)でいいのね?」

「…うん、いいよ。僕はあくまで『ユージェ』だからね」

「そう、わかったわ」


華さんに案内されて、壁の中を進む。

暫く歩くと、目の前に海のような湖が広がっていた。

真ん中にあるあの島が、ジャルネ自治国か。


「飛べる?」

「うん、飛べるよ」

「船はないから、自力で付いてきてね。《飛べ》」


ふわり、と体が浮いて先に空を飛んでいく華さん。

成る程、この国では直訳英語な呪文や厨二病な詠唱は使わないのね。

ジーンはもう何がなんだかわからないのか、必死に詠唱して飛ぼうとしていた。

僕はいつも通り指パッチンして、ジーンごと空を飛ぶ。


「あら、無詠唱!流石ね」

「擬きだよ」

「私は端的に言う方が慣れてるけど、それもカッコいいわよね、大佐みたいで」

「炎出そうか?」

「なら見た目も似せて欲しいわ」


切れ長な目じゃないから、コスプレは似合わないだろうなぁ。

鋼のならいけそうな気がする、豆じゃないけど。

話は逸れたけど、すぐに島に辿り着いた。

あぁ、なんか、港町って感じ。

見える街並みや雰囲気はマジで江戸村だわ。


「人口は300人程度しかいないのよ」

「少ないね」

「この国に嫌気がさして出て行く若者もいるからね。そういうのは誓約を交わしてこの国の情報を外に出さないようにしてから出国させるの。残ってるのは向こう(・・・)から来た人間と、その伴侶である歴代の子孫とか、その子供とかね。子孫でも血が薄ければこの国の重要性がわからなくて出てっちゃうのよ。ちなみに出国したら2度と戻れないわ」

「え?なんで?」

「さぁ?昔からの決まりなのよ。逆に認められた他国の人間…貴方達みたいな人は入り放題だし、誰かうちの国の人を娶って永住してもいいのよ?スラース公国から移り住んだ人も何人かいるわ。その人達も子孫なんだけどね」

「ある意味、身内で固まってるのね」

「そういう事。どう?貴方も誰か娶ってここに住む?醤油や味噌、みりんに清酒、最近では塩麹なんかも作り始めたわよ?」

「魅力的なお誘い過ぎて本気で悩みそうっ…!!」

「とりあえず後でお茶請けにぬか漬けと浅漬け出してあげるわ」

「きゅうり?!」

「大根もあるわよ」

「お米も…!!おにぎりも下さい…!!」

「じゃあ梅干しのおにぎりと、豆腐とわかめの味噌汁と、漬物セットね。焼魚も付けましょうか?」

「拙い、僕泣くかもしれない」


夢にまで見た日本食セット…!!

全財産を叩いてでも買い占めちゃうかもしれない。

そしてベティ様にも作ってあげたい。

ジーンは街並みが気になるのか、僕達の会話はあまり聞いてなかったみたいだ。

僕が悶えてるのを見て首を傾げてたから。

にしても僕達の格好と見た目は浮くなぁ。

ここの人達、殆ど黒髪黒眼じゃないか。

めっちゃ見られてる。


「さ、こっちよ。城で殿がお待ちなの」

「殿?」

「うちの代表よ。ジーンは控えの間で待っててちょうだい」

「…俺は一緒に行けないのか?」

「精霊に関わる事よ、今回は遠慮してくれると助かるわ」

「…わかった、待ってる」

「ごめんね、ジーン」

「必ず戻ってきて下さいね?」

「勿論」


そうして連れてこられたのは、小さなお城だった。

大阪城とか姫路城とか、そういうサイズじゃなくて…

あれだ、日本一小さい杵築城ってやつ!

あのサイズ感だわ。

入ってすぐの部屋にジーンを留守番させて、華さんと奥へ進む。

すれ違う護衛の人達はお侍さんっぽい格好というわけでもなかった。

なんならあれだ、銀○的な着崩してたりする。

リアル江戸村かと思ったけど、天人襲来後の江戸に近いのかもしれん。


「とーのー!例の子、連れてきましたよー!」

「おぅ、まぁ入れやー!」


軽っ。

襖の前で叫ぶ華さんも軽いけど、殿も軽いな!

そしてノックとか何もせずに華さんがスパーンと襖をスライドさせる。

中に座っていたのは、バカ殿みたいな頭をした中年のおっさんだった。

ふくふくの体はエビス様感がある。


「お前がリリエンハイド王国の愛し子か?」

「あ、はい。リリエンハイド王国侯爵子息、ユージェリス=アイゼンファルドと申します」

「っかぁ、王子様みたいな奴だねぇ!乙女ゲーの攻略対象っぽいな!」

「あ、それ私も思った!」

「だよなぁ!それで?お前の前世の名はなんという?」

「あー、えっと…相楽柚月と申します」

「え?もしかしてお前女だったのか?」

「やっだ、マジ?大変だったでしょー!」

「まぁ…」

「まぁ座れや、緑茶飲むか?」

「いただきます!」


座布団を出されたので、正座する。

華さんが持ってきてくれた緑茶…あー、体に染み渡る。

昔は渋いからそんなに好きじゃなかったけど、久々に飲むと美味いわぁ…


「改めて、俺は虎徹ってんだ。まぁみんな殿って呼ぶから、好きに呼べや。柚月、お前ちゃんと手紙を受け取ったんだな」

「あ、はい。日本語だったんでこれはもう行くしかないかと」

「しっかし、意外と遅かったなぁ?」

「実は色々あって出国禁止令出されてて…」


僕は簡潔に魔症石の事や精霊と会って話した内容について説明した。


「はぁーん、大変だったんだなぁ。この国に魔物が出ないのは、その魔症石ってのがないからなんだろうな」

「精霊に会ったんだねぇ。うちの精霊にも会えるかしら?」

「精霊界とは時間の流れが違うから、簡単にはこっちに来れないってさ」

「あらあら、残念」

「なぁ柚月、お前この国に住む気はねぇのか?」

「向こうに大事な人達がいるから、住む気はないですね」

「だろうなぁ」

「にしても、この世界に来た理由とか聞いても驚かないんですね?」

「俺らは知ってるからな、むかーし精霊と会った奴から伝え聞いてるんだよ。ちなみに、俺達は生まれた時から記憶持ちだ」

「え?」

「うちはさ、転生者は腹の中に宿るんだ。生まれてすぐは赤ん坊の精神と入り乱れて混乱してわからないけど、話せるくらいまで大きくなると色々と納得出来るようになって周りに確認するんだ。んで先に生まれてた転生者が付きっきりで世話をして説明をする。そこの華は俺が世話したんだ」

「マジで意味わかんなかったもの、大混乱よ?」

「あー、気持ちはわかる」

「うちには今、転生者が9人いる。俺ら以外の7人中5人は街の中で暮らしてて、2人は外出中だ」

「外出?」

「たまには外の国の事についても確認しなきゃいけねぇからな。偵察忍者隊ってやつだな」

「何それカッコいい。そういえば、転生者の証とかないんですか?うちの国はここが黒くなるんですけど」


僕が髪を持ち上げながら見せると、華さんが驚いた声を上げた。


「あら、それ染めてるんじゃないのね!うちは魔法を使うと瞳が金色に変わるのよ、ほら《煌け》」


周囲が輝き始めるのと同時に、華さんの瞳が黒から金に変わった。

すっげぇ、めちゃくちゃ綺麗だわ。


「綺麗だね」

「私が?」

「勿論、華さんもね」

「うふふ、ありがと」

「なぁ柚月、ここに住まなくてもいいからコイツを娶らんか?お転婆じゃじゃ馬で貰い手がいねぇんだよ」

「こんなにイケメンなら大歓迎よ!どう?尽くしてあげるわよぉ?」

「あ、えーと、娶りたい人は既にいるので、光栄ですが…」

「ちっ、先約がいんのかよ」

「一夫多妻でもおっけーよ?」


先約…ではないけども。

告白すらしてないし。

この旅が終わったらちゃんと伝えるつもりはあります!!

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― 新着の感想 ―
[一言] どうかメイーナであれ。 自治国よりも、ユージェの最後の発言がきになるみーこであった。(*´∀`*)
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