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おめでとう

毎度毎度遅くてすみません…

次は頑張ってお昼頃更新します!

庭園に1人なう。

え?なんでかって?

泣きそうだったからだよ…!!


「…まさか、ここまでとは」


メルヒーと離れて少ししたら、主役2人が華々しく登場した。

純白のウェディングドレスを纏ったデイジーは本当に綺麗で、その隣にいるダティスさんもとても幸せそうだった。

その幸せそうな笑顔を見て…誰かの顔(・・・・)が重なった。


『相楽は料理上手いんだなぁ、お弁当なんて作った事ないよ。相楽と結婚出来る奴は幸せ者だなぁ』


優しそうな目元は、ダティスさんと一緒だった。

声のトーンとか、それも変わらず。

ずっと忘れていたあの人は、幸せそうに微笑んでいた。

それを感じてしまって、つい泣きそうになって。

ナタリーにお手洗いに行くと言ってその場を離れてしまった。

ベンチに座って、空を見上げる。

快晴で、結婚式には持ってこいだね。


「…ガチ泣きしそう…でも不審がられるよね」


ただの友人の結婚式で号泣する愛し子…

実は新婦が好きだったんじゃないかとか噂されたら、困るのはあの2人だ。

なんか泣くの止めるスキルとかないかな?

無表情スキルとか…いや、それは祝いの席でダメでしょ。


「…どうした?」

「え?」


声に驚いて顔を前に戻すと、少し心配そうなルーファスが立っていた。

うーわ、気付かなかったわ…


「…なんでもないよ、人が多いと疲れちゃうよねぇ」

「嘘だな」

「え?」

「お前はそういうの気にしない奴だ」

「…よくお分かりで」

「何年の付き合いだと思ってる、ニコラ達も心配してたぞ?」

「…バレバレだったんかい」


恥ずかしーい…

少しため息をついたルーファスは、僕の隣に座った。


「俺が聞いてもいい事か?」

「あー…んー…こればっかりはベティ様にさえ話してない事なんだよねぇ…知ってるのはリリエンハイドくらいか…」

「精霊様?そこまで大事な内容なのか?」

「いや、別に大した事でもないんだけど…まぁ、ルーファスはいずれ知る事になる内容に関係してるんだよなぁ…」

「…愛し子様の真意についてってやつか?」

「あれ?まさかもう聞いた?」

「いや、正式に宰相の仕事を引き継ぐ事が決まったら教えると父上に言われている。だからそれまでユージェの事を信じて頼むと」

「…ジェイク様もなんだかんだ僕に甘いなぁ…」

「先に聞かない方がいいんだろう?だから、話せる事だけ言ってくれてもいいぞ?」

「ん、ありがと。なんて言えばいいのかなぁ…あの2人が幸せになってくれたら、いいなぁって、思ったんだよね…」

「…ユージェがそう思ったのなら、そう願えばいい」

「え?」

「よくわからんが、ユージェはあの2人の結婚を心待ちにしていたな。どうしても幸せになってほしいと願ってるように見えた。なら、願えばいいだろう?たまには愛し子様の権力を振りかざせばいいじゃないか」

「…ルーファスにしては、珍しい意見だね…あんまり力を使えなんて積極的に言わないじゃん」

「お前が好まないからだろう?特別扱いを。まぁユージェはたまに突拍子もなく権力も力も軽々使うが」

「はい、ごもっとも」

「それでお前の気が済むなら…前に進める(・・・・・)なら、派手にやってやれ。そこまで盛大に愛し子様が祝ったら、文句を言う奴なんてこの国にはいないだろ。いたとしても、俺が黙らせてやるよ」


ニヤリと不敵に笑うルーファス。

悪役顔になってるのに、超イケメン!!


「ルーファス…カッコいい、惚れそう」

「だが断る」

「断るの好きね?!僕ショックよ?!そんなにダメですか?!」

「惚れるなら心底大事な奴にしとけ」

「…大事な奴、ねぇ…みんなそう言うけどさ、大切な人って、作るの怖くない?」

「あ?」

「いくら大事で大切でも…いなくなったら、どうしたらいいのさ…」


あの人は、何も言ってくれなかった。

何も言わずに、逝ってしまった。

何か言ってくれれば、引き止められたのに。


「そんなの簡単だろう」

「え?」

「『勝手にいなくなるな』と言えばいい。まず言葉にしなければ、伝わらないからな。約束は大事だぞ?それでいなくなったら相手が悪い。約束を破ったのは相手だ、万が一会えた時には責めてもいいな」


…ポロリ。

なんか、目から鱗が落ちた感じ。

そうか、僕…()、伝えてないんだ。

先輩に『いなくならないでほしい』と、『側にいてほしい』と…『死なないでほしい』と。

告白なんてしてないし、それなのにいなくなるのが怖いだなんて…


「…だねぇ…僕って傲慢だなぁ。んじゃ、今度こそ約束しないと」

「ん?いなくなるなって?」

「まぁそれもあるけど、一方的にいなくなるなって言っても、不測の事態もあるわけでしょ?」

「まぁそうだな」

「なら、守ればいいんだ。幸い、そのための力なら今の僕には(・・・・・)有り余ってるからね」


そうだよ、今までだって大事な友達を守るために魔導具作ったり色々したじゃないか。

たった1人の大切な人を守る事くらい、愛し子の僕には朝飯前でしょ?

相手と話して、約束して。

側にいて、離れないでもらって。

どんなものからも、守ればいい。

お互いが笑顔で日々を過ごすために。


そして、そうやって僕がずっと隣で守っていきたいのは…


「…あー、でもなんか自覚したくないなぁ…」

「ん?思い当たる奴でもいたのか?」

「…まぁ、そうだねぇ…うーん…いや、まぁ、まだ内緒」

「気になるな、教えてくれよ」

「ルーファスも教えてくれるなら、いいよ」

「俺はいないぞ?」

「本当に?側にいて、笑っててほしくて、守りたい人って本当にいないの?」

「…あー…あー…?んん…ちょっと待て、なんか思い当たりそうで嫌な汗が出る」

「どういう事よ」

「…こう、シルエット的に思い浮かんだけど、その人の前にでっかい障害物があるというか…」

「何それ、僕が蹴散らそうか?」

「いや、それも無理そうというか寧ろ…んー…?いや、俺もとりあえず内緒だ、一旦考えるのをやめる。それよりまずは宰相候補として一人前になる事だな、うん」


なんだそりゃ、気になるなぁ。

個人的にはその相手がフローネだと嬉しいんだけども。

まぁ黙っておきましょうか。



会場に戻ると、ちょうどデイジー達がレオ達と談笑してるところだった。


「ユージェ君!どうかなさいましたの?」

「お待たせ、ナタリー。もう大丈夫だよ」

「そう…ですか?そうですね、顔色も戻ったみたいですし、大丈夫ならいいのです」

「ユージェ様、今日は来て下さってありがとうございます!旅の途中でしたでしょうに…」

「お2人を祝うためならどこからだって来ますとも。そうだ、結婚祝いを受け取っていただけませんか?みんなで選んだのです」

「まぁ!そんな、よろしいのですか?」

「あぁ、みんなで頑張って作ったんだ。仕上げはユージェだがな」

「えぇ?!手作りなんですか?!」

「はい、世界に1つだけですよ」

「どうぞ、開けてみて?」


僕はアイテムボックスから出しておいた紙袋をデイジーに渡す。

恐る恐る開けたデイジーは、中身を見て小首を傾げた。


「額縁…ですか?それにしては小さいような…」

「これはね、こう使うんだよ」


指を鳴らして、2人の目の前に1枚の写真を差し出して仕舞い込む。

そう、これは写真立てだ。

ルーファスとレオに枠組みは作ってもらって、女性陣にビーズやレースなどで飾り付けをしてもらった。

そして仕上げは、さっき会場に入って来た時の幸せそうな笑顔の2人の写真を入れて、出来上がり。

この世界に写真はない。

写真という概念がない、と言えばいいのかな?

『メモリー』や『プロジェクト』なんかはあくまで動画で、静止画は絵でしかないのだ。

こんなフォトペーパーなんて、存在しないのだよ。

だからまぁ、僕ら愛し子しか作れないだろうね。


「まぁ…!!なんて精巧な絵なんでしょう…!!」

「デイジー、これは絵じゃなくて鏡みたいだね!!しかもこんなに小さくて…!!」

「これなら小さなデスクでも置けるでしょう?書斎でも寝室でも、好きなところに置けるし移動も出来ますよ」

「なんて凄いものなんだ…!!ありがとうございます、ユージェ様!!」

「皆さんもありがとうございます!大切にしますね!とても可愛いです!」

「気に入ってくれて嬉しいよ」

「このレースは私が探してきたんですよ!」

「これはお気に入りのドレスに使われている物と一緒なんです、綺麗でしょう?」

「あたしは領地にいて作れないから、綺麗な水晶のカケラをレオ達に送ったの!」

「それはここに使ったよぉ、綺麗な色だよねぇ」

「ダティスさんとデイジーさんの瞳の色ですものね。流石ニコラちゃん、素敵ですわ」

「さてと、これからが最終仕上げだね」

「ん?まだ何かするの?ユージェ」

「まぁ僕にしか出来ない事さ」


少しみんなから離れて、向き直る。

真正面にはダティスさんとデイジー。

周りの人達もこちらに注目しているようだった。


しかと見とけ、彼らの姿を。

息を大きく吸って、胸の前で両手を組む。

リリエンハイド、僕に力を貸して?


「《我らが友へ祝福を》」

「「?!」」


僕の言葉に反応して、2人の体が淡く白く輝く。

対して僕の体は淡い金色に輝き始めた。


「《精霊の愛し子、ユージェリス=アイゼンファルドの名の下に、永遠(とわ)の幸せと不屈の愛をその絵に誓って約束しよう。其方らの未来が幸多からん事を》」


僕を纏っていた金色の輝きが写真立てに吸い込まれていく。

全てが吸い込まれた瞬間、強い光が一瞬弾けた。


『その願い、聞き届けたのら。末永い祝福を』


頭に響き渡る声。

流石リリエンハイド、わかってらっしゃる。

やっぱり君も先輩の事、心配してたんだね。

ありがとう、見守っててくれて。


「…今、のは…」

「…ダティスさん、デイジー」

「「は、はいっ」」

「…本当に、結婚、おめでとう。幸せになってね」


今度こそ。


「「はい…!!」」


貴方のその笑顔で、()は救われるのです。

只今GW毎日更新を計画中です。

ステイホーム週間ですので、少しでも皆様の暇潰しになればいいかな、と。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして:ジェリスちゃん?
[一言] ユージェの想い人がナタリーでありますように( ・∇・)
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