それぞれの思い《side another》
昨日は更新出来なくてすみません!
間違えて書き溜めていた2話分ほど消してしまい、打ち直してたのですが眠気に負けて…orz
☆★☆side 出席者☆★☆
華やかな会場でソファに座って酒を飲む俺。
今日は親戚の結婚式だ。
と言っても血の繋がりは薄いけどな。
俺の叔父の妻の祖父の妹のひ孫…だっけ?
あれ?血ぃ繋がってなかったわ。
まぁでも歳は近かったから、子供の頃に何回か遊んだ事がある。
あまり気の強くない優しい奴だったと思う。
それがなんと、中々の美人を娶ったそうで。
…俺なんて婚約者すらいねぇのに。
歳が近くて婚約者いない子が中々いないんだよな…
俺子爵家次男だし、相手が長女で家を継ぐとかじゃなきゃ爵位もなくなるからなぁ…
いや、一応家の手伝いはしてるけどさ。
というか、なんで兄貴じゃなくて俺が出席しなきゃいけないんだよ。
親父の命令だから仕方なくデート断って来たってのに、相手してくれそうな子もいないなぁ。
あーあ、どっかに可愛い子とかいないかなー?
「おい、あれって…」
「え、まさか…」
「本当だったのか…」
物思いに耽っていると、突然会場の空気が変わった。
何がきっかけかはわからんので、とりあえず辺りを見回す。
すると会場入口にみんなの視線がいってる事がわかったから、俺も向けてみると…
「…何あれ」
すっげぇ美男美女ばっか!!
最初に入ってきた男はかなりの男前だし、隣の子も大人っぽい美人だわ!
次に入ってきた男は中性的な顔立ちの美少年で、隣の子もめちゃくちゃ可愛い美少女!
次の男なんて可愛い双子の女の子はべらかして羨ましっ!!
軽そうに見えるけどこれまたカッコいい奴だし、憎むに憎めない…!!
というか、あれ招待客なのか?
なんかオーラが別物なんだけど。
嫁さんの友達…とか?
え、紹介してもらえるかな?
「まさか、こんな至近距離でお会い出来るとは…」
「お近付きになれないものかしら…」
「無理だわ、あの布陣はあの方を守るためでしょうし…」
「未来の宰相に睨まれるのはな…」
「後ろのはウィンザーだろう?あそこは拙い、敵に回すと厄介だ」
…未来の宰相?ウィンザー?
確か公爵家と伯爵家だったか…
…あれ?あの真ん中の美少年、見覚えがある…ような…?
「なぁ、あれ誰だかわかるか?ほら、あの真ん中の…」
近くにいたメイドに声をかける。
頬を赤らめてあの集団を見ていたが、俺の声に我に返ったようだった。
あ、てか結構このメイドちゃん可愛い。
ついでに口説いちゃおうかなぁ。
あんまり遊び慣れたりはしてなさそうだし、たまにはこういう子もいいかも。
「えっ?!あ、その…ご存知、ない、の、ですか…?」
「え?」
「…愛し子様ですよ、ユージェリス=アイゼンファルド様です」
「…は?」
「周りは宰相様のご子息だったり、第3師団長のご息女だったり、です」
え?あの?
アイゼンファルド侯爵家の?
あ!髪が黒いところある!
本物初めて見た!
マジかよ、なんて大物来てんだ?!
え、誰のツテ?!
え、しかもなんかこっち向いた?!
え、なんでそんな笑顔なの?!
え、なんでこっちに歩いてくるの?!
やめて!そんな中性的な顔で綺麗に微笑まれるとなんかいけない扉が開きそう!!
確か侯爵夫人って元王女だっけ?!
そっくりだって噂だけど、確かに似ててヤバい!
あ、だめ、やめて、来ないで、可愛い、や、だめ、あ、美人、あ、や、あ、アッー!!!
「やっぱりメルヒーだったのか、子爵家のメイド服可愛いね、よく似合ってるよ」
…挙動不審な俺を素通りして、横にいたメイドちゃんに話しかける愛し子様。
え?知り合い?
「…その格好だと、さすがにまだ気後れするわ…」
「ん?何が?」
「なんでもないわ。にしても、その髪型も素敵ね」
「ありがとう、嬉しいよ。あ、ナタリー、この子はメルヒー、僕の友達なんだ。メルヒーはナタリー知ってるかな?」
「勿論よ、愛し子様のご友人として有名だもの。ナタリー様、ファラフス子爵家侍女のメルヒーと申します」
「改めまして、ナタリー=スタンリッジです。メルヒーさんとお呼びしても?」
「呼び捨てでも構いません、お好きにどうぞ」
「では、メルヒーさんと。ユージェ君の事、よろしくお願いしますね」
「勿論です」
「ん?何を?」
「「付き合いが長ければわかる事ですよ」」
「…なんとなくわかりました…」
…謎の会話が真横で繰り広げられている。
今更退けなくなった、どうしよう。
ジリジリと離れていこう。
「にしてもユージェ君、何もこんな人の多いところで話しかけなくても良かったんじゃ?メルヒーさん、目立ってしまいますよ?ユージェ君に近付くために狙われてしまうかも…」
「んー、そうかな?狙えるものなら狙ってみればいいと思うけど」
「「え?」」
「聞こえた人は少ないだろうけど、僕はさっきメルヒーを友達って言ったでしょ?僕の友達に手を出すんだ、それなりの覚悟があるって事だよね?」
…愛し子様の視線が、一瞬こちらを向いた気がした。
俺の気のせいかもしれないけど。
でも何やら背中に汗が伝ってる気がする。
心臓の音が頭に響く。
「メルヒーを悪いように扱ってごらんよ…何をされても、文句はないよね?」
気のせいじゃなかった。
今度はガッツリこっちを見ながら、笑ってた。
いや、目は笑ってない。
口角が上がっただけの、不自然な笑みだった。
血の気が引くとはこの事か。
寒い、極端に血が足りないみたいだ。
この人は俺がこのメイドちゃんに何かしようとしていた事に気付いてたんだ。
だから、態と割って入るように声をかけてきた。
これだけ目立った子に改めてすぐ声をかければ、俺は周りから愛し子様と関係を持ちたいと思っていると認識される。
別に権力には興味ないけど、周りの認識は『権力にすり寄る子爵次男』。
乗っ取りだの、兄貴との確執がなんだのって、騒がれるとかなり困るわけで。
兄貴は今、家督相続で色々とバタついてるんだし。
これは、もうこの子に手を出せない。
「んもぅ、ユズキってば物騒だわ!あたしが何かされるわけないじゃない!どちらかといえばあたしが誰かに何かする、つまり粗相する側よ?いつか紅茶をひっくり返しちゃうかも!」
「ふふふ、それは気をつけてね?僕もいつだってフォロー出来るわけじゃないし。というかそれをフォローしたらあからさまな贔屓になっちゃうから、メルヒーのためにもやめておくよ」
「そうしてちょうだい!失敗したら自分で責任取ってなんとかするわ!」
「まず失敗しないように頑張ってよ」
「勿論努力するわよ!」
「ふふふ、メルヒーさんって面白いですね」
…ほのぼのとした空気に戻ったけど、俺の顔色は戻ってないと思う。
ふらりとそこから離れて、バルコニーへ向かう。
彼らの姿が見えなくなって、やっと空気が吸えた。
…目を付けられてしまったかもしれない。
それは、この国で生きていけない事を指す。
あれは明確な敵意が含まれた目線だった。
田舎に暮らす俺のような下級貴族でもわかる。
多分、愛し子様は自分の世界を壊されたり乱されたりする事が嫌いなタイプだ。
その世界の一部だったらしいメイドちゃんにちょっかいを出そうとしたわけで…
「…まずったぁ…」
知らなかったとはいえ、これは自業自得か。
今まで適当に遊んできた女の子達だって、大切に想ってた人達もいたんだよな…
ただ、今回はそれが愛し子様だった。
愛し子様に過激な方はいないのが通説だけど、果たして本当か?
あの目は敵と認定したら完膚なきまで叩き潰せる奴がする目だろ?
「…大人しくしよう」
女の子遊びは自重しよう。
…まさか親父、これが目的で俺を送り出したわけじゃないよな…?
もしそうだとしたら、大したもんだよ、親父…
★☆★side メルヒー★☆★
びっくりしたぁ!
ユズキってば、今日もカッコ良すぎるわ!
しかも周りの方々も美男美人で…
あれは見惚れちゃうわよね。
しかもその後あたしに向けられた笑顔…
すっかり身内認定なんでしょうね。
でも、多分だけど…
そんな物思いに耽っていると、突然同僚や先輩達数人に囲まれちゃったわ。
「ちょっとメルヒー!貴女、愛し子様とどういう関係なの?!」
「なんであんなに親しそうなのよ!白状なさい!」
「ま、まさか、愛し子様とお付き合いとか…?!」
「なわけないですよ!詳しくはお話し出来ませんけど…その、愛し子様とは、友人…なんです」
「「「「友人ー?!」」」」
「あの方は気を使われたり特別扱いされるのが好まれないので、普通の同い年の友人として接しているんです」
「え、そうなの?」
「知らない人から馴れ馴れしくされるのは嫌いなんです。友人と認めた人しかあの態度は許されないので、間違っても擦り寄らないで下さいね?」
ユズキは、女の子が苦手なわけじゃない。
なんなら女の子大好きだと思う。
扱いも上手いし、あたしだってデートしてみたかったわ。
今考えるとかなり不敬だったわね…
でも、擦り寄られるのとか、男と女として接せられるのは、好きじゃないと思う。
ユズキとして学院にいた時も、好意を寄せていた女の子は数人いた。
なんでかわかんないけど、ユズキはそういう子とはあんまり一緒にいようとはしてなかったの。
あたしがユズキの友人として側にいれたのは、あくまであたしが恋愛感情を抱いていなかったから。
カッコ良かったし、勿論好きよ?
でも、不思議と恋愛対象ではないのよねぇ。
どちらかといえば、ジーン様の方がタイプ。
「えぇ?メルヒーの同僚ですって話しかけちゃダメなの?」
「それは貴族の方でも暗黙の了解で出来ない事ですよね?だから、ダメです」
ユズキが嫌がる事はさせないわ。
ここの人達はみんな良い人だし、話せばわかってくれるはず。
まず今日の主役のお2人が愛し子様とご友人なんだもの、不快な事なんてさせないでしょうけどね。
ちゃんと守ってあげるわ、大事なあたしの友達だもの!
☆★☆side ダティス☆★☆
綺麗なお嫁さんと、幸せな結婚。
今日の僕はとても最高な気分だった。
…まさか結婚出来るとは思わなかった。
なんでかわかんないけど、物心付いた頃から自分は結婚出来ないと思ってたんだよね。
でもデイジーと出会って、日々を重ねて、心が癒される気分だった。
『この子となら一生を過ごせる、今度は逃げない』
そう思って、改めてデイジーにプロポーズする事が出来た。
きっかけは、大切な友達の涙を見た事だった。
何故かわからないけど、彼の涙を見たら、僕は幸せにならなきゃいけないと強く思った。
涙なんて流さない人だと思ってたから、本当にびっくりしたんだ。
結局彼が泣いた理由はわからなかったけど。
「ダティ?どうかしたの?」
「いや、なんでもないよ。そろそろ行こうか」
「えぇ、みんな来てくれてるかしら?」
「きっととっくに来て、目立ってるんじゃないかな?特にユージェ様は有名人だからね」
「うふふ、そうね」
あぁ、幸せだ。
絶対に守るんだ、デイジーを。
この特殊スキルは、そのためにあるのかもしれない。




