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緊急事態

天ぷらとかき揚げはみんなに喜ばれました。

なんと母様からは伝説の『ほっぺにちゅー』を頂きました!

美人からのほっぺにちゅーとか、破壊力抜群だった…

しかも満面の笑み、プライスレス。

お金で買えない価値があったわ。

ロイ兄様とフローネは家庭教師とお勉強中だったから、ミーナとセリスに預けておいた。

…2人とも、目が食べたそうにしてたな。

ちょっとだけもらえるといいね、兄様達から。


そしてまた手が空いたので、魔導具作りに勤しもうと思います。

いつも通り、自室に篭ってるなう。

実は何を作るかもう決めてある。

というか、父様とはお揃いにするつもりだ。

父様とレリックもイヤーカフ、母様とシャーリーはブローチ。

本当は母様もイヤリングにするつもりだったけど、母様とフローネがまるっきり同じ色合いとデザインになっちゃうからやめた。

それに母様は社交界に出かける身だし、ドレスにあった装飾品にする必要があるだろう。

ブローチなら最悪ドレスに合わなくても、どこかに隠して付けておける。


「そうと決まれば、これと、それと…」


ちょうどよく母様の装飾品がいっぱいあるから、素材には困らなそうだった。

宝石も…あぁ、似た色のやつあった!

ちょうど父様の瞳の色に似た宝石の付いたブレスレットと、母様の瞳の色に似た宝石の付いた指輪があったので、両方を机の上に置く。

素材…足りなそう、2セットずつ作るし。

シルバー部分が足りなそうだから、箱の底に転がっていた千切れたチェーンとダイヤモンドが付いた壊れたバレッタも置いておく。


ちなみに、今度こそ無詠唱もどきを試すつもりだ。

失敗したら普通にやり直します。


えっと、デザインと付与する魔法を考えて…

僕は机の前に立ち、軽く指を鳴らした。

パチン、と軽い音を立てる。

するといつもの白い光が机の上を照らし、しばらくして収束した。


「…おぉ…成功か…?」


机の上には、思い描いていたものが鎮座していた。

僕とロイ兄様とお揃いの色違いイヤーカフが2つと、月から風が流れるようなモチーフに深紅の宝石とダイヤモンドが散りばめられたブローチが2つ。

うんうん、見た目はいいじゃん!

さて、付与はどうかなー?

鑑定するために、それらをじーっと凝視する。


【領域のイヤーカフ×2→『リフレクション』『バリア』付与済み。最初に付けた者にのみ効果を発揮する ※所有者が死亡しない限り譲渡不可】


【領域のブローチ×2→『リフレクション』『バリア』付与済み。最初に付けた者にのみ効果を発揮する ※所有者が死亡しない限り譲渡不可】


よっし、成功だぁ!

いいねいいね、無詠唱もどき成功させたぜ!

でももうちょっと慣れないとなぁ。

今の段階じゃ、発動するまでに考える時間がかかっちゃう。

要注意事項だ。


「リリー」


扉を開けて、外を覗き見る。

リリーは扉の横に立っていて、僕の顔を見ると近寄ってきた。


「どうされました?」

「あのさ、こう、プレゼント用の包装紙とか小さな箱ってあるかな?」

「探して参りますが…何に使用するかお聞きしても?」

「えっと、あの…明日僕の誕生日でしょ?その時に父様と母様にプレゼントしたいものがあるんだ」

「まぁ…!」


リリーが少し涙ぐむ。

え、そんなに驚く事かな?!

だって、お礼がしたいんだもん。

僕を…『ユージェリス』を産んでくれて、育ててくれてありがとうって。

変わってしまった僕を、愛してくれてありがとうって。


…ちょっとした罪悪感が、そうさせるのかもしれない。

だって、2人の大事な『本物のユージェリス』は、もうこの世にいないんだから。


「それでしたら探して参りますので、お部屋でお待ちいただけますか?」

「うん、わかった。よろしくね」


リリーにお願いして、僕は部屋に戻る。

さて、どれくらいで見つかるかなー…

おや?


「なんだ、あれ…」


窓から外を見下ろす。

僕の部屋の窓からは、裏庭が見えるんだけど、なんか裏庭の植木が不自然に動いた気がする。

あの裏庭の後ろは塀があって、多分向こう側は道があるんだと思う。

いや、向こう側も林だったっけ?

んで、確かその奥にある山の向こう側は王都ではなく、このアイゼンファルド侯爵領なんだそうだ。

この前みんなで散策してた時に、兄様が教えてくれた。

山の秘密のルートを通れば、すぐに領地に行けるって言ってた。

普通は山を迂回して、数日かけて馬車で向かうんだそうだ。


「…あら?」


あれ…人じゃね?

子供…うん、多分兄様と同じくらいの子供っぽい。

服的には平民かな?

なんでこんなところにいるんだろ…

てか、見つかったらヤバくね?

うーんと、どうしよう、とりあえず…


「『ハルーシネイション』」


この魔法は幻覚魔法で、今の自分と違う姿を映し出せる。

触られなければ気付かれないし、とりあえずこれでいいっしょ。

黒髪のツインテールに、リリーと同じメイド服。

15歳くらいを意識して見た目を変えてみた。

これなら僕とは別人でしょ!


「そこの貴方、どこから入られたの?」


僕は窓を開けて、男の子に向かって声をかける。

まだ声変わり前だし、女の子っぽい口調ならまだ違和感はない。

声をかけられた男の子は驚いたように肩を揺らし、周りをキョロキョロ見た。


「ここよ、上」

「あ…」

「別に不法侵入を怒ってるわけじゃないわ。迷ったの?」

「う、ううん…ここって、こーしゃくさまって人の家?」

「ええ、そうよ。宮廷魔術師長でもあるアイゼンファルド侯爵様のお屋敷よ」

「こーしゃくさまはどんな病気でも治せるって本当?」


それは知らない…

でも聖魔法使えるし、なんとかなるのかな?


「なんでもってわけではないけど…」

「俺の母ちゃんの病気も治せるかな?!」

「お母さんの?どんな?」

「わかんない…急に昨日からおかしくなって…俺、この林の先の山の向こう側のこーしゃくさまの領地から来たんだ」

「まぁ、そんな遠いところから?それで、おかしいってどんな状態なの?」

「最近ちょっと体調悪そうだったけど、昨日突然倒れて…体が痣だらけだから、殴られたのかと思ったけど、なんか違くて…苦しそうだったから、町の薬屋さんに相談したら、こーしゃくさまみたいに魔法が使えないとわからないって…」


…そういえば、この世界に『医者』という職業はないらしい。

大抵の病気なんかは魔法で治療出来るから、お金を払って魔術師にお願いするものなんだとか。

でも光魔法や聖魔法の持ち主は少ないから、町に必ずいるとは限らない。

そういう時用に、町には必ず1つ薬屋がいる。

でも薬屋はあくまで薬を売ってるだけだから、病気の人を見る事は出来ない。


あんまりいい制度とは言えないよなぁ。

ベティ様、元々看護師さんだし、なんか上手い事やってくんないかな。


「そう…でもごめんなさいね、今、侯爵様はお城へ行ってるのよ。どうしようかしら…」


こういう場合、どうしたらいいんだろ。

この子を鑑定しても病名なんてわからないよなぁ…

いや、病気を鑑定するのは別のスキルか?

とりあえず、じーっと見てみる。


ーーーーーーーーーー

【鑑定結果】

ジーン


職業・なし

称号・平民

年齢・7歳

属性・水/地/無

HP・147/385

MP・300/300


状態・疲労、寝不足(黒死病潜伏中)

ーーーーーーーーーー


わぁ、見えちゃったよ、チートだなぁ…

って、あれ…?


「…黒死病…?」


黒死病って…世界史で習った気がする…確か、伝染病…だった、ような…


ブワッと、全身が泡立った。

待ってよ、伝染病?

それはマズイ、侯爵領は王都のすぐ隣で、この子みたいに潜伏中で来てしまう人もいるかもしれない。


…ヤバイ、早く、伝えないと。


「君、そこ動かないで!」

「え?!」

「《ヒール》!」


ジーン少年の周りに白い光が迸る。

強い光が辺りを照らし、ジーン少年の体に吸収されていく。

光が収まると、ジーン少年は驚いたように自分の体を見回した。

どうだ、成功したか?!


ーーーーーーーーーー

【鑑定結果】

ジーン


職業・なし

称号・平民

年齢・7歳

属性・水/地/無

HP・385/385

MP・300/300


状態・なし

ーーーーーーーーーー


よっっっっしゃぁぁぁ!!!!!

僕すげぇぇぇ!!!!!

え、そんな上手くいくもん?!

持ってる魔力次第で治せるってなってたけど、僕はどうなってる?


「《ステータス》」


ーーーーーーーーーー

ユージェリス=アイゼンファルド


職業・アイゼンファルド侯爵家次男

称号・精霊の愛し子

年齢・5歳

属性・火/水/地/風/雷/光/闇/聖/時/無

HP・725/725

MP・1045/9500

戦闘スキル・剣術∞、槍術∞、弓術∞、投擲∞、格闘∞

生活スキル・料理∞、清掃∞、作法∞、歌唱∞、舞踊∞、乗馬∞、錬金∞、調薬∞、付与∞

特殊スキル・気品∞、暗記∞、身体強化∞、鑑定∞、幸運∞、手加減∞

ーーーーーーーーーー


いやいや、めっちゃ消費してるじゃん!!

…いや、さっき魔導具作ったな。

『アルケミー』と『グラント』が250くらいで、付与した2つが3000と3500、『ハルーシネイション』が300だけど使い続けてて、あと昼間の料理中に50くらいは使ってるから…

『ヒール』1回で1000近く使ったの?!

潜伏中の病気に対して?!

え、これって治療対象増やして、相手が発病してる人ならどうなんだろ…

『エリア』を使えば広範囲にもいけるよね…

最悪この屋敷くらいなら、残りの魔力でなんとかなるかな…

あ、ってかまだ感染はしてないか。

病原菌が舞ってるかもしれないから、それの対処はしなきゃ!


「《エリア》!《ステリライズ》!」


うぉっ、めっちゃ体が重い!

屋敷広いから、結構『エリア』だけでも負担になるな…


「あ、あの、姉ちゃん?どうしたの?」

「…ちょっと問題が発生したのよ。なんとかするから、君はしばらくこの屋敷にいてもらう事になるわ」

「え、でも母ちゃんが!」

「そっちもなんとかする。だから任せて欲しいの」

「ユージェリス様、先程何か魔法使われましたか?!なんか凄い光が…!!」


慌てたように部屋に入ってくるリリー。

僕の姿を見ると、動きを止めた。


「え、あ、誰…?」

「リリー、まだレリック戻ってないよね?」

「え、は、はい…」

「なら僕、急いで父様のところに行かなきゃいけない。説明は後でするから、あそこの男の子を保護しておいて。怖がらせないようにね」

「ま、まさかユージェリス様ですか?!そのお姿は…」

「いいから、返事!」

「は、はい!!」


リリーは狼狽しつつも、僕の命令に返事をする。

僕は『ハルーシネイション』への魔力供給を止めて、元の姿に戻った。

えっと、転移魔法まだ使った事ないんだよな…

転移の距離によって魔力の消費量が決まるみたいで、どれくらい使うかわからない。

伝説の属性って事で、資料が少なかったんだよね…

でも、やるしかない。

『テレパシー』って手もあるけど、多分残り魔力じゃ意外と距離がある王城までの『エリア』が足りない。

『レター』を使って手紙を飛ばしてもいいけど、父様に辿り着くまでに検問がいくつかあるらしい。


…それじゃ遅い、伝染病は一刻を争う。


「…《ワープ》」


体からごっそり力が抜ける感覚がした。

そしてそのまま、視界が歪んでいく。

再び目を開けると、目の前には驚いたような表情の父様とレリックが立っていた。

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