楽しいお茶会(特に一部が)
「全く、お前が飛び出していってヒヤヒヤしたぞ」
「だよねぇ、いくらユージェでもあれはデカ過ぎるでしょぉって思ったわぁ」
「魔物ってあんなにも怖いものなのですね…初めて見ました…」
「小動物の自然級を遠くから見た事はあったけど、まさかあんなに大きいなんてね…」
そんな親友達の反応。
まぁ非現実的だっただろうしねぇ。
「全く僕の敵じゃないよ?というか、なんなら4人だって問題ないけどね」
「「「「え?」」」」
「アレを倒せる僕が作った魔導具持ってるんだよ?死なないし、なんなら傷すら付けられないから」
「…これ、そこまで凄いのか…」
「…そこまで気にしてなかったけど、国宝級ってやつだねぇ…」
「…こんな普段使いしてはいけないのかしら…?」
「…でも普通付けてなきゃこの前みたいに突然の時に対処出来ないもんね…」
そんな深刻な顔しなくたって。
あ、ちなみに今日は僕の家でこれからお茶会です。
4人以外にもダティスさん達も呼んでるし、アリス様も呼んでみた。
まだ5人とも来てないけどね。
お、誰か来たっぽいな?
「ユージェ様!お久しぶりです!」
「ダティスさん!舞踏会以来ですね」
「えぇ、今回はデイジーを領地に迎え入れる為に来ていたものですから。そしたらユージェ様のお屋敷に来れるなんて、運が良かったです!」
「お招き頂きありがとうございます、ユージェ君」
「いえいえ、今日は楽しんでってね」
「「ご機嫌よう!ユージェ君!」」
「やぁ、シンディとドロシー、いらっしゃい。体調はもういいの?」
「えぇ、ご心配をおかけしました」
「魔物を初めて見て寝込んじゃうなんて、ユージェ君からしたら弱っちぃですよねぇ」
「そんな事ないよ、誰だって怖いものは怖いんだから」
「あら、ユージェ君にも怖いものが?」
「あるよ?秘密だけどね」
「「えぇー?」」
ふふふ、そんなに膨れた顔で睨んでも教えませんよーだ。
とりあえずみんなを席につかせる。
後はアリス様か…思ったよりも遅いな?
「ユージェリス様、プレッシェン子爵令嬢様がいらっしゃいました」
「ありがとう、シャーリー。連れてきてくれる?」
「かしこまりました」
シャーリーが連れてきたアリス様は、かなり挙動不審だった。
「こんにちは、アリス様。来て下さってありがとうございます」
「ゆ、ユズキ君…いえ、ユージェリス様、ご機嫌よう…」
「そんなに緊張しなくても…」
「いえ、そうは言われましても…招待状が届いた時には家族全員から質問攻めでしたし…とりあえず舞踏会でお話した事と、学院の同級生であるダティス様や学院で仲良くなったナタリー様達が親しいから今回呼んでいただけたんだと説明致しましたわ…」
「…僕からじゃなくて、ナタリー経由でお誘いすれば良かったですね、すみません」
「あ、いえ、お気になさらず…」
しまった、配慮不足だったな。
次回は気をつけよう。
そんなこんなでバタついたけど、お茶会は楽しく進んでいった。
テーブルにある料理は僕が用意したもので、みんな喜んで食べたりしてくれた。
特に初めて食べるアリス様の反応が良かったし、面白かったね。
暫く旅に出るからって事でその前にみんなとのお茶会を企画したけど、大正解だわ。
みんな顔見知りだし、気まずい空気もなかった。
『レター』で伝え忘れてたメルヒーの事もダティスさん達に伝えたところ、とても嬉しそうに快諾してくれた。
デイジーも僕の友達がいてくれるなら安心だと言ってくれて、僕も嬉しいな。
そして途中で母様とフローネも挨拶に来てくれた。
これにはアリス様がガッチガチになってたね。
こうやって元王女で侯爵夫人の母様と話すのは初めてだったらしい。
ちなみにフローネはやっぱりルーファスに話しかけて、そのままお茶会に合流した。
…なんとなく、ルーファスも満更じゃなさそう?
これは本当にルーファスが僕の義弟になる可能性が出てきたか…
「デイジーは漆黒期明けに出発するの?」
「えぇ、その予定です。ユージェ君もでしたっけ?」
「うん、ヴァイリー王国まで飛んで、そこからは馬で移動予定なんだ」
「国内は帰国後でしたよね?」
「そう、今回はスルーさせてもらう事にしたんです。出来るだけ外にいる時間を減らそうかなと。帰りも目的地のジャルネからここまでひとっ飛び予定です」
「そんな長い距離、転移可能なんですの?」
「まぁ無理なら行けるとこまで行って、何回かに分けてみるよ」
「たまにはお手紙下さいませね?」
「うん、新しい土地に着いたら連絡するよ」
「なんだか寂しいね。何かあったら帰ってくるんでしょ?」
「ベティ様と毎日定時連絡取り合う予定だから、何かあればすぐに戻ってくるよ」
「お兄様…私の卒院式までには絶対に帰ってきて下さいませ…」
「それは勿論!辿り着いてなくてもそのために1回帰ってくるから!」
「ユージェは相変わらずフローネ嬢に甘いなぁ」
「大事な妹だからね。僕がいない間、ルーファス達もちょっと気にかけておいてくれる?」
「あぁ、任された」
ちょっとした援護射撃。
フローネの頬は少し赤らめていた。
うぅ、ちょっと寂しいけど、妹の幸せのためだもんね…
それにルーファスはいい奴だから、妨害する気もないし…
…複雑な兄心です。
「そういえば、みんなの漆黒期明けの予定は?」
「私はダティとファラフス領へ向かいますわ」
「半年から1年くらいは向こうで慣れて貰って、その後結婚式を挙げる予定です。可能ならユージェ様にも出席頂きたいのですが…」
「勿論!日付が決まったら教えて下さいね」
「私達は王城へ侍女見習いです」
「旦那様探し、頑張ります!」
「あはは、2人も可愛いんだから、すぐに見つかるって」
「私もお2人の先輩として引き続き頑張ります」
「よろしくお願いしますね」
「俺はまぁ前にも言ったが、父上に付いて王城にいるな」
「僕もそんな感じかなぁ」
「じゃあまぁ帰ればいるね、2人とも」
「私は一旦領地に帰る事になりました。姉の結婚もあるので、暫くは補佐として働く事に」
「あたしも領地に帰るよ。卒院したのにお勉強地獄だよ…こんな事なら文官コースにしとけば良かったかな…」
「ナタリーも帰っちゃうのか、残念。ニコラは入った時には士爵令嬢だったもんね…」
基本的にコース選択は3年間変わらないからなぁ。
ニコラはこれから経営学とか学ばなきゃいけないのか、大変だわ。
「離れ離れって寂しいねぇ…」
「何言ってるんだ、お前が1番遠くに行ってしまうんだろうが、ユージェ」
「それもそうでした」
でも今の気持ちのままだと僕、頻繁に帰ってきちゃいそう。
「ユージェ、その髪どうするの?色変えるの?」
「どうしよっか、他国の高位貴族とかならこの一部分の黒髪で愛し子ってわかる人もいるらしいんだよね」
「というか、銀髪自体も高位貴族に多いから、凄い目立つと思うよぉ?」
「あー…じゃあ、変えるか。ジーンが黒髪だから…僕はユズの状態にしておこうかな。暗い茶髪で、眼の色は変えないで、眼鏡は…うん、なしにしよう」
「…眼鏡、やめちゃうんですか…」
「え、まぁ顔隠す必要はないしね?ナタリー、なんかあった?」
「…男性の眼鏡って、素敵ですよね」
「ん?」
「色気を感じると言いますか、外した時との差も素敵と言いますか…」
「おーい、ナタリーさーん?」
「ユージェ君、ナタリーさんは眼鏡フェチなんですよ」
「程よく付いた筋肉とかも好きですよね」
「よくみんなで語り合いましたよねぇ」
…それって、恋愛対象的な好みの男性の話?
それとも腐腐腐な好みの男性の話?
待って、聞くの怖い。
「でも確かにユージェ様って眼鏡似合いそうですよね!」
「あ、ありがとうございます、ダティスさん」
「…可愛い系年上攻め…」
「いえ、王子様系年下攻めかも…」
「どっちもアリだと思いますの…」
「いっそその2種類には別のお相手がいて、とか…」
「「「何それ、気になり過ぎます」」」
やめて、落ち着いて4人ともぉ!!!
「…なんの話?」
「よくわからんな。フローネ嬢はわかるか?」
「わ、わからないです…なんでしょう…?」
「恋愛話とかでしょうか…お相手とか言ってますし…」
「攻めって言ってるし、戦術とかの話なんじゃ?たまにデイジーって不思議な言葉を言うんだよ」
「んー、気にしなくていいと思いますよぉ?ねぇ、ユージェ?」
「ソウダネ、キニシナイ、キニシナイ」
どうやら腐ってるのはこの4人だけのようで安心したよ。
そしてレオも意味はわかったみたいで笑顔が引き攣ってる。
目だけで会話をして頷き合うと、ガシッと手を組み交わした。
「「「「…軽い系攻めと王子様系受け…」」」」
いい加減にしてぇー!!!!?!




