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ある日の放課後

意外と卒院発表の練習は順調だった。

というかメイーナの王子様役がハマり過ぎてて、女子達がメロメロになってた。

そりゃそうだ、ナル君で男役は慣れてるもんな。

瓶底眼鏡なのにイケメンに見える不思議。

ちなみに寸劇をやる事を家族に話したら、全員が観に行くと張り切り始めた。


「いや、無理でしょ」

「何故だ?!親なんだから観に行く権利はあるぞ?!」

「僕、孤児のユズキ(・・・・・・)だよ?」

「「「…っ!!」」」


なんで兄様までショック受けてるの?

そして1人勝ち誇った顔のフローネ。


「私は在校生ですから、式のお手伝いを申請すれば見れますわ!後は学院長に直談判します!」


そう、フローネは今年から入学していた。

関わりがないって前提なので、会いに行ったりとかすれ違ったりとかもしないけどね。

校舎も違うし、全く接点がないのです。

ただまぁ周りは凄い盛り上がっていた。

愛し子様の妹君は美しい、可愛い、などなど。

何を当たり前の事を。

でもまぁ、フローネには悪意・害意その他諸々を防ぐ魔導具を渡してるから、比較的穏やかに過ごしているそうで、友達も出来たらしい。

そういえば、例のルーファス妹はうちの学院に入らなかったそうだ。

領地に程近い場所にある、規律の厳しい女学校へ通っているとの事。

どうやら宰相様を怒らせた模様…

詳しい事は教えてもらったわけじゃないけど、卒業までの3年間でまともにならなければ親戚の子爵家へ養子に出すかもってさ。

一体何をしたのやら。


「…陛下方が出席予定だから、護衛としてついて行けばいいか…」

「いやいや、そういう事は次期師長の僕が経験を積む為に出席すべきだよ、うん」

「あらあら、ちょうどその日は学院長とお茶する予定だから、そーっと覗くのはアリよね?」

「そんな予定ないでしょうが。学院長もお忙しいんだから、権力使っちゃダメだよ?母様」

「だってぇ…」

「父様と兄様も、真面目にお仕事して下さい」

「「…」」


そこ、黙るな。

そして結局、フローネはお手伝い要員に潜り込み、陛下方の護衛なので父様は式に参加する事になった。

2人の喜びようったら凄かったね。

そして対照的に母様と兄様の落ち込みようったら…

父様とフローネに『メモリー』で見せてもらう事で漸く落ち着いたよね。

…ビデオカメラの開発成功してる事は黙っておこう。



そして時は流れて、年を越し、パラパラとみんなの進路が決まり始めた。

ローグナー、バグッド、サラスは狩人になるので、特に試験とかはなし。

ロジェスは王城の文官の試験を受け、合格していた。

メルヒーはどこかの子爵家の侍女試験を控えていて、毎日ソワソワしている。

メイーナは家業を継ぐそうなので、ここも変わりなし。

その他の同級生達も色々考えてるみたい。


「そんで?ユズキはどうするんだ?」

「んー、卒院したら狩人しながら少し旅に出るよ」

「へぇ、1人で?」

「いや、同郷の先輩と一緒にね」

「あぁ、先輩と一緒なら心強いわな。帰ってきたら連絡せぇよ?たまには会いたいからなぁ」

「ロジェスとはたまに会いそうだけどね」

「そりゃ俺は王都にいるからすれ違ったりするかもしれへんな」


いや、王城の中ですれ違いそうだよ。


「ユズキ、私にも連絡」

「勿論、それに帰ってきたらお店に買いに行くよ」

「あたしはお仕えするところの指示次第だからなぁ。王都に決まったらちゃんと連絡するからね!」

「俺はたまに戻るだろうから、その時は連絡するよ」

「俺らは地元に戻って活動するから、あんまり会えないかもなぁ」

「ここから遠いしね」

「こうやって騒ぐのももうすぐ終わりかぁ…ちょっと寂しくなるよなぁ」


なんだかしんみり。


「あ、いたいた、みんなー」

「お、サナンやん」


エーデル姫役の星組サナンが教室に顔を出した。

今日は練習するからって態々来てもらったんだよね。

ちなみに今は放課後です。

サナンはピンクがかった茶髪で中々可愛らしい顔立ちの少女だった。

お姫様にぴったりって感じ。

というか、乙女ゲーのヒロインっぽい感じ。

いや、貶してるわけじゃないよ?

顔立ちとかがね?

よくある悪役令嬢がヒロインざまぁする感じの方じゃないから。

サナンは良い子だし、勉強もそこそこ出来る。

もう少しでローグナーと組替えになるところだったんだから。


「お待たせ、準備に手間取っちゃった」

「いいよ、今日は読み合わせなだけだからね」

「じゃあ俺らは帰るわ、ほななー」

「「「「バイバーイ」」」」


ロジェス、バグッド、サラスが帰って行く。

メルヒーはナレーション担当なので一緒に居残りです。


「さてと、やりましょうか。今日は台本なしで通しをやるわよ!」

「あー、俺覚えてっかなぁ…」

「あたしや主役よりも少ないんだから頑張りなさい!」

「細かい役所のセリフはメルヒーちゃんが言ってくれる?」

「勿論よ」

「じゃあ始めようか」


スラスラと進んでいく物語。

仲睦まじい婚約者同士がお茶をしていると、魔王が現れて姫を見染める。

魔王は国に呪いをかけ、解呪してほしくば姫を差し出せと言って姿を消す。

王子は怒り狂い、騎士と共に魔王を倒しに行こうとする。

王子が傷付く事を恐れた姫は王子に別れを告げて、単身魔王の元へ。

悲しみに暮れる王子は腹心の部下である騎士に喝を入れられ、2人で魔王を倒す旅に出る。

見事魔王を倒して姫を助け出すが、呪いを解く事は出来ていなかった。

姫は嘆き悲しみ、それを救わんと叶わぬ恋をしていた騎士がその身を犠牲に呪いを解く。

2人の側にいれなくなった騎士は姫への秘めたる想いを胸に、2人の幸せな結婚式を背に旅立つのであった…


寸劇だから短めに変えてるけど、流れとしてはこんな感じ。

本当の原作…というか小説版はもっとボリューミーらしい。

旅の描写や魔王との戦闘シーンが長いんだよね。

原作は絵本だからもっと簡単で短い。

でも成人直前の人間がやるには絵本バージョンだとちょっと足りないんだよね。

なので小説版のアレンジカットしたってわけ。

メルヒーは文才があるねぇ。


「…ふぅ、まぁこんなもんかしら」

「メイーナちゃん、本当に上手よね!」

「すげぇよなぁ、いつもの話し方とは全くの別人だし」

「ユズキ君も上手だわ、最後のシーンなんて本当にドキドキしちゃう」

「ふふ、ありがと」

「ローグナーはもう少し覚えてきてよね」

「ぐぅ…頑張る…」


頭を抱えるローグナー。

役に入りきれば演技力はあるんだけど、いかんせんセリフが覚えられないらしい。

僕?暗記スキル持ちですからなーんも問題nothing!


「そういえば、衣装は各自でなんとかしてもらってるけど、大丈夫そう?」

「それなぁ、ちょっといいのが見つかんないんだよなぁ…」

「あたしも、ドレスって持ってないし…」

「…私は、とりあえず、大体」

「僕は知り合いが作ってくれるって言うから、丸っ切り任せてる」

「あら、裁縫スキルか刺繍スキル持ちの人なの?」

「そう、話したら張り切っちゃって。無駄に凄いの出来そう」

「…もしかして、この前の人?」

「そうそう、娘の服も作ってるんだってさ。メイーナも王子様マントとか必要なら作ってくれるかもよ?」

「…それは、ちょっとお願いしたいかも」


そうなのです、リリーがめちゃくちゃ張り切っちゃってるのです。

育休に入り、ますます裁縫スキルを磨いてる模様。


『ユージェリス様の晴れ舞台!今はお休みをいただいていますが、専属侍女の私がやらないで誰がやるんですか!!』


なーんて意気込んでいた。

実はユズキやユズの時の私服もリリーの手作りなんだよね。

衣装も最初は市販の買って、ちょっとした刺繍とかをアリス嬢にお願いするつもりだった。

アリス嬢の刺繍スキルは凄いからね!

でもその前に遊びに行った時にその事をチラリと話したら、もうね…

仕舞いにはラウレアにもドレス作って、僕と並べて絵を描いてもらうんだとか言ってた。

なんでもドリーが絵画スキル持ちらしい。

…まぁそうなったら僕が『ピクチャー』使ってあげてもいいけどね。


「うぅーん、ドレスどうしよう…」

「誰か貴族科にツテないの?着なくなったドレスとか借りればいいんじゃない?」

「そうねぇ…コースが同じの方に聞いてみようかしら…不敬にならないかな…」

「男爵家のご令嬢とかもいるから、そこに聞いてみなよ。ほら、えっと…フラメンティール家とか…」


ニコラなら面白がって貸してくれそうだ。

背格好もサナンと似てるしね。

僕が寸劇やる事も知ってるし。


「フラメンティール…あぁ、ニコラ様ね!そうね、あの方ならあまり緊張しないでお願い出来そう!」

「えー、俺どうしよう…」

「黒のパンツに黒のワイシャツ、それにマント代わりの少し煤せさせた黒いシーツとか纏わせれば?後は女の子達の装飾品とか借りてそれっぽくしなよ」

「あー、成る程、それいいな。服は簡素にして、ジャラジャラさせた方が魔王っぽいか?」

「いいわね!髪は魔法で赤に染めるし、それに合った色合いがいいかも!」

「黒いシーツじゃなくて、黒い羽毛のもっふもふのでもカッコいいかもしれないよね!」

「じゃあとりあえず週末探してみるわ!」

「…なんか、ちょっと楽しい」


そうだね、メイーナ。

友達とわちゃわちゃするの、楽しいね。

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