休み明け《side ロジェス》
ロジェスの訛りは適当なのでツッコミ不要でお願いシャス!
不思議やなぁ、ユズキは漆黒の騎士役やったはずやのに…
「…で?説明してくれるかな?」
なーんで魔王ガルドみたいなオーラ漂わせてるんやろ。
俺の気のせいなのか、ツノまで生えとる気ぃするわ。
笑顔なのが余計に恐ろしい。
朝一、教室に入って来たユズキのその表情に、つい反射的にその場にいた殆どの奴らが正座したしな。
ちなみに座ってないのはメイーナくらいや。
あとまだ登校しとらん奴らやな、羨ましい。
そんな事を思っとると、メルヒー、ユリル、マレーンがモジモジしながらユズキに言い訳を始めた。
「いや、えっとぉ…普通の魔法発表じゃつまらないから、みんなが楽しい方がいいかなぁって…」
「ちょうどユズキ君って漆黒の騎士扱いされてたし、ありかなって…」
「ふぅーん、で?なんで僕には相談なかったのかな?」
「え、えっとぉ…えへへ♡」
あ、なんか教室の空気がごっつぅ冷えた。
急激に冷えた。
ユズキ、水属性持ちやったっけ?
高位魔法の『ブリザード』でも使ったん?
「…僕は出ないからね。裏方なら手伝うよ」
「ダメよ!もう提出しちゃったから変えられないわよ!」
「…あぁん?」
まさかのさっきより冷えたやん、なんでや。
見かねたローグナーが助け舟を出すようやな。
「まぁまぁユズキ、どうしてそんなに嫌なんだよ」
「…めんどくさいし、最後の最後でなんでそんな事…」
「でもさ、もうこうやってみんなでなんかするなんて、出来ないかもなんだぜ?地方に帰る奴だっているし、また会えるかなんて微妙じゃんか」
ローグナーの言葉に、ユズキが苦虫を噛み潰したような顔で口籠る。
「そ、それに、学院長も嬉々として許可の印鑑下さったし…」
「…学院長…」
あら、今度は呆れたように頭抱えてはるわ。
ユズキって学院長と仲良かったんかな?
にしてもユズキがここまで嫌がるって…やっぱ、俺の仮説は正しいのか?
ユズキは多分、普通の平民やない。
多分、貴族教育を受けた事のある人間や。
この前も親戚が貴族だった言うてたし、メイーナと同じ庶子か、若しくは俺と同じ移民か…
目立ちたがらないところを見ると、高位貴族の庶子の方が濃厚か?
まぁたまに吹っ切れたように目立ったりするけどな、例の漆黒の騎士事件みたいに。
今回の寸劇はメルヒー脚本で、どちらかと言えば漆黒の騎士の方が目立つ役所や。
続編寄りって事やな。
「ちなみにエーデル姫がサナンで、フィリウス王子がメイーナ、ガルド魔王はローグナーよ!」
「…ん?メイーナ、王子なの?」
「うん」
「婚約者同士の絡みがあるんだもの、未婚の男女でやるのは無理だわ」
「あぁ、成る程ね…女の子同士なら問題視されないか」
「最初は配役で揉めたんだけど、珍しくメイーナがやるって言ってくれてね!だからお願い!ユズキも出てちょうだい?!」
眉間のシワが深くなるユズキ。
メイーナとメルヒーの顔を見返しながら、諦めたようにため息をついた。
「…衣装は僕が決めていい?」
「勿論よ!」
「極力セリフは少なく」
「元々喋るキャラじゃないし、大丈夫!」
「…変な事はさせないように」
「任せて!」
「…まぁ、いいや、台本出来たら早めにちょうだいね」
「ありがとう!ユズキ!」
勢いよく立ち上がったメルヒーがユズキに抱きつく。
特に赤くなるわけでもなく、頭をポンポン撫でながらユズキはメルヒーを受け入れていた。
「ローグナーもよくやる気になったね」
「まぁ最後だと思ったらやってもいいかと思ってな。他の何人かもガルド魔王の手先役やってたりとかするんだぜ」
「ロジェスは?」
お、話振られたか。
「俺は防御担当やでー?万が一魔法が客席に飛ばんようにな」
「あぁ、そういう担当もあるのか。僕もそっちが良かったな…」
「そう言うなて、役者は立ち回りとかもあるから華やでー?」
「じゃあやれよ」
「嫌や、そういう目立ち方はしたくない。それに俺は肉体派じゃないんよ」
「…そういえば、さ。アッシュ君は何するの?今まだ来てないけど」
「アイツは最初、王子か騎士やりたいっつったんだけどなぁ…まぁ無理な理由話して、そのまま丸め込んだ」
「はい?」
「舞台上で演じるよりも、裏方で魔法を上手く使った方が評価良いって言うてたな、ローグナー?」
「まぁ嘘じゃねぇだろ」
ユズキも乾いた笑いしとるわ。
まぁ否定は出来ないわな、見る人はそっち見てくれるやろ。
「そう言えばメイーナ、ユズキとのデートどうだったの?」
「…凄かった」
「「「「凄かった?」」」」
「慣れ過ぎてた」
「「「「慣れ過ぎてた?!」」」」
ユズキ、お前どんだけ女の子と遊んでるん?!
あのメイーナにそこまで言わせるなんてやば過ぎへん?!
仮にも貴族教育を知っとる奴がそう言うなんて…
「メイーナ、誤解が生まれる、やめて」
「ちょ、どんな事したの?」
「待ち合わせには私より先に来てた。腕組んで予約済みのカフェでお茶、しかも奢り。1頭の馬で少し遠乗りして、サーカス見たり体験したり。お昼も奢ってくれて、座る時にはハンカチ敷いてくれた。帰りも家まで送ってくれた。凄い、慣れてる」
「メイーナさん、マジで黙って?」
マジかいな、ユズキ、どんだけスマートなエスコートしとるん?
しかも腕組んだり馬相乗りしたり…側から見たら恋人同士に見えるに決まっとるやん!
あぁ、女子達がめっちゃときめいた顔しとる…
そして無駄にハードルが上がった男どもは冷や汗が止まらんかった。
確かカザフとバグッドは星組に好きな子おるとか言うとったな…
心なしか顔色悪なっとるやん。
「やだ、あたしもユズキとデートしてみたい!ねぇねぇユズキ、誘ってくれない?」
「えー?!あたしもお願いしたーい!」
「ゆ、ユズキ君、私もしてみたい…な?」
「興味あるなぁ、あたしともどう?」
めっちゃ女子に囲まれとる。
さっきの3人以外、というかメイーナ以外の女子が殆ど群がっとるやないかい。
珍しくユズキの顔も焦っとるな、面白いわー。
ユズキって意外と顔立ち整ってるっぽいから、ちゃんとすればもっとモテるだろうになぁ。
いつもボサボサ頭でけったいな眼鏡しよって、ちょっとは身嗜みに気をつければええのに。
「もうダメ!もうしない!特別な子以外とはデートしません!」
「「「「えー?!」」」」
「そんなにデートしたいならロジェスやローグナーとして来なさい!」
「ローグナーは無理でしょ」
「ローグナーは無理よねぇ」
「ローグナー君はちょっと…」
「なんで俺こんなに拒否されてんの?!」
「ローグナーはエスコート出来ないでしょ、絶対」
「自分の行きたいところしか行かなそうよね」
「ロジェス君は意外と気にかけてくれたりして良さそうだけど…」
「わかる、ロジェスはアリ」
どっから目線やねん。
褒められた気ぃせぇへんわ。
「ユズキ、お前のせいで基準が上がりまくりやないかい。どう責任取ってくれるんや?」
「え、僕のせいなの?みんなが嵌めるからいけないんじゃん」
「メルヒー達が考えた事やし」
「同罪だよ、ざまぁみろ」
んべー、っと舌を出して挑発してくるユズキ。
…コイツ、ホンマに高位貴族なんかな?
こんだけ馴染んでる所を見ると、ちょっと自信なくなるわ。
ま、庶子であれ移民貴族であれ、ユズキがユズキである事に変わりはないんやけどな。
メイーナと同じ考えのロジェス。
そしてそっと数人初出のお名前がありますが、同じ月組のクラスメイトになります。