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その後の話と新展開

その後兄様とエドワーズ様に詳細が送られ、2人の帰城を待ってから対処する事になった。

ルーシャン様を送り届けたという連絡が入ったのは、それから約3週間後の事だった。

『ワープ』でお迎えに行き、兵士長に挨拶をしてから王城に戻る。

そして、奴は死刑となった…らしい。

ここからは僕の管轄じゃないからって、宰相様達が詳細を教えてくれなかった。

まぁ、僕も死ぬ間際の事とか、処刑の方法とか聞きたいわけじゃないし、そこは引き下がった。

一応『不慣れな環境に馴染めず、体を壊して病死』となってるそうだ。

アイカット様もそう聞いたらしく、少し複雑そうな顔をしていた。

不仲だし殆ど会ってもなかったから、義弟が死んだとあまり実感が持てないのだそう。

それと、例の4人組も周辺国の兵士達が引き取りに来て連れて行かれた。

一応『愛し子様を寄越せと言われたが断った。それに対する報復だったらしい。魔法で暴れようとした所を愛し子様本人に捕らえられた』という事にしてある。

爆弾については秘密です。

彼らには『サイレント』をかけてあるので、話せなくなってるし、多分大丈夫だろう。

国へ戻り次第、即刻処刑されるらしい。

兵士達について来たお偉いさんが僕に会いたいとか言ったらしいけど、お断りしておいたと陛下から後日告げられた。

それでオッケーです、会うつもりはありません。

こうしてズルズルと続いていたガルデリバルサとの一件は幕を閉じたのだった。



そして月日はちょっと流れて、8雷のとある週末の光の10刻。

僕はユズキスタイルだけどちょっとだけお洒落をして、噴水の前に立っていた。

なんでかって?それは…


「…ユズキ、お待たせ」

「やぁ、メイーナ。僕も来たばっかだから、全然待ってないよ」


なんと、メイーナとデートの約束をしてたからです!

…いや、深い意味はないよ?

お互い『デートしよう』って会話してこの状況が生まれたわけじゃないから。

事の発端は、メルヒーの変な話からだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜

「あーあ、もうすぐ学院生活も終わるってのに、青春してないなぁ」

「なんやそれ、どういうこっちゃ」

「物語とかではさ、運命の男の子に出会ってデートしたり、色々ハプニングがあったりしてドキドキの学院生活を送ったりしてるのに…なーんも代わり映えがない!」

「まぁ、ほぼ3年間同じメンバーだしな」

「それよそれ!同じメンバーとしかいないから、そういう目で見たりもしないのよ!」

「失礼やな、俺なんか美形やろ?」

「ソウデスネー」

「うわ、イラつく!」

「メイーナだってデートしたりキャッキャウフフしたいでしょ?!」

「…別に…」

「メイーナが枯れてる!もっと楽しみなさいよ!それともデートした事あるっての?!」

「…ないけど」

「した事ないからそんなんなのよ!したらきっと楽しいわ!」

「そういうメルヒーはした事あるんかい」

「ないわ!」

「ないのかよ」

「でもしたら絶対楽しいわよ!メイーナ、デートして来なさい!」

「…誰と?」

「んー、そうねぇ…あ、ユズキでいいじゃない!」

「僕ぅ?!なんでそんな無茶振り?!ずっと黙ってたのに?!」

「この中で1番女の子の扱いが上手いのはユズキだからよ!」

「失礼な奴やな。まぁ、それは同感やけど」

「それな」

「俺もそう思う」

「ユズキって女の子に優しいしな」

「あれだよな、王子様っぽいのと騎士っぽいのと、両方兼ね備えてるってーの?」

「あー、言いたい事わかるわぁ」

「取っ替え引っ替えの軽い感じじゃなくて、エスコートとか出来そうな感じ?」

「あー、それそれ。わかるー」

〜〜〜〜〜〜〜〜


わっかんねぇわぁ。

どうしてそうなった。

そしていつの間にか周りに決められて、今に至る、と。

まぁメイーナとデートする事が嫌なわけじゃない。

寧ろちょっと楽しみにしながら早めに来て待ってたわけだし。

ちなみに今日デートだと知ってるのは父様とジーンだけだ。

父様には相手がクソ公爵の庶子だって伝えてあるし、ジーンはデートならばと付いてくるのをやめてくれた。

母様に言わなかったのは、服装とか色々ダメだしだったりそういうのに時間かかりそうだったから。

兄様とルーナ義姉様のデートの時もなんかキャーキャーしながら兄様にアレコレ言ってたしね。


「…どこ行くの?」

「んー…メイーナが行きたいところはある?」

「ない、特に」


うふふ、いきなり行き詰まった。

いや、まぁ何も考えてなかったわけじゃないけどさ。

メイーナ次第で決めようと思ってたんだよね。

そんなメイーナの今日の格好は中々デートらしい感じだったわけで。

クリーム色のワンピースには可愛らしい小花柄の刺繍がしてあったり。

今日は瓶底メガネじゃないから、隠されていた整った顔立ちが良くわかる。

でもまぁリボンが綺麗な大きめの帽子で目立たないようにはしてるけどね。

というより、今日ウィッグじゃない?!

帽子の中で編み込まれてるこれ、地毛じゃん!


「メイーナ、今日地毛だよね?いいの?」

「ユズキは、知ってるからいい」

「そっか…うん、いつものおさげもいいけど、今日は一段と可愛いね」

「…ユズキの、そういうところ、見習える」

「褒められてる?」

「うん」


ならいっか。

にしてもさ…メルヒーはあぁ言ってたけど、僕…


女の子とデートした事ないんだよね…


ニコラやナタリーとは2人きりじゃ出かけないし、フローネをエスコートしたくらい…かな?

前世ではデートの経験あったはずだけど、相手は男だし、記憶はないし…

意外と詰んでるんだよな、頑張ろう。


「実はさ、火の門の近くにお洒落なカフェが出来たんだよね。メイーナ、甘いもの好きでしょ?そこでまずはお茶にしない?」

「…わかった」


スッと、メイーナに向けて腕を差し出す。

メイーナはよくわからなかったようで小首を傾げていた。


「ほら、デートなんだから。手を繋ぐのはちょっと恥ずかしいだろうけど、腕ならいいでしょ?」

「…うん」


あ、照れてるみたい、俯いちゃった。

でも恐る恐る僕の左腕に手をかけてくれたメイーナは、控えめに言って可愛かった。

そこからは普段話してるような雑談をしながら歩いた。

まぁメイーナはあんまり喋んないから、大体僕が話してるんだけどね。

そんな感じで無事にカフェまで辿り着きました。

うーん、やっぱり並んでるね。


「…並ぶ?」

「ううん、大丈夫。こっちおいで?」


メイーナの肩を抱いて入口へ向かう事を促す。

中に入ると中々賑わっていた。

女性比率が高いなー。


「いらっしゃいませ!」

「すみません、予約してた者ですが」

「あぁ、どうぞこちらへ!」


店員さんが先導してくれるので、僕達は付いて行くだけ。

通されたのはさっきまでの賑わってた1階ではなく、静かな2階のテラス席。

テラスからは王都の街並みが良く見えた。

席を引いてメイーナを先に座らせてから、僕も向かいの席に座る。


「…凄い」

「ここ、恋人専用席なんだってさ。予約でしか入れないって聞いてたから、一応取っといたの。あんまりガヤガヤしてるのも好きじゃないでしょ?」

「お待たせ致しましたぁ!本日のデザートセット2種類でーす!」


店員さんが運んできてくれたのは、フルーツタルトと紅茶のセットと、ショートケーキと紅茶のセットだった。

この時間帯は2種類のケーキを選べるデザートセットのみの提供なんだよね。

んで、この席予約した時に1つずつ頼んでおいたってわけ。


「メイーナ、どっちがいい?」

「…こっち」


メイーナが選んだのは、ショートケーキだった。

なのでそちらのお皿をメイーナに渡し、僕はフルーツタルトを選ぶ。

僕もメイーナも普段は紅茶に砂糖を入れないので、そのまま。

メイーナの前では『いただきます』とかもしないから、とりあえずメイーナが食べ始めるまで待機。


「…美味しい」

「それはよかった」


わかりにくいだろうけど、これはかなり喜んでるようだ。

表情はあまり変わらないけど、パァっと明るいオーラになったというか。

なので僕もタルトを食べ始める。

…うん、タルト生地は中々硬めだけど、フルーツが美味しい。

中のクリームは甘さ控えめなのも中々いいね。

そういえば、この世界の食材そのものって大体美味しいよなぁ。

1口分フォークで切り取ってから、メイーナの方を向ける。


「…何?」

「ほら、あーん」


僕の言葉に固まるメイーナ。

珍しく狼狽えた後、意を決したように恐る恐る食べてくれた。


「…美味しい、ね」

「もう1口食べる?」

「大丈夫…その、ユズキ」

「ん?」

「…あ、あーん…?」


照れたように目線を逸らしながら自分のケーキを1口差し出すメイーナ。

あー、可愛いわー。

成る程、これが溺愛したくなるって感情か。

メイーナって育ちのせいか感情に不器用なところもあって、つい助けてあげたくなるというか…

…これが恋なのかわからないけど、メイーナには幸せになって欲しいよなぁ…

自分が幸せにしてあげたい、という気持ちが恋や愛なんだろうか。


「うん、美味しい。ありがとう、メイーナ」

「…こちらこそ、ありがとう」


不意に訪れたこんな1日だけど、今日は楽しんでもらえたらいいな。


「…この後、どうする?」

「あぁ、候補は色々考えたんだけど、実は今日、侯爵領にサーカスが来るんだ。良ければ観に行かない?」

「サーカス…!」


お、食い付いてきたな?

この世界におけるサーカスは、中々希少性が高い。

両手で数えられる程度しか存在しないからだ。

そのうちの1つ、ディーデラーオという一座が今日侯爵領の大広場で見世物をしてくれる。

まぁこの世界のサーカスって、どちらかと言えば大道芸人のような感じだけどね。

玉乗りだったり、手品みたいなものだったり…

空中ブランコとかはないね。

あ、動物との曲芸はあるよ。


「…でも、侯爵領は遠い。山の向こう側」

「領民しか通れない道があるんだ。そこを通ればすぐだよ」

「…いいの?」

「あぁ、同伴者が領地の人間なら通っても問題ないよ。出店もあるみたいだし、お昼はそこで食べない?」

「…うん、楽しみ」


小さく微笑むメイーナ。

うん、笑った方が可愛いね。

メイーナの言葉の少なさはクソ公爵のせいらしいから、早くもっと感情を出して話せるようになるといいなぁ。

まぁ入学当初よりは話すようになった気がするけどね。

メルヒーとは結構会話してるらしいし。

ちなみにナル君が饒舌なのは別人になり切って演じてるからだそう。

女優か。


「…デート、楽しい」


そう思ってもらえて何よりですよ、お嬢様?

メルヒーは面白がってますが、実はユズキとメイーナがくっ付いたらいいのになーと思って言ってたりもします。

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[一言] 前の感想にも書いたが、俺はナタリー押しだー。
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