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パレード終了

ビー…ビー…ビー…


周りの喧騒なんて気にならないくらい、頭の中で響く音。

そしてこの感覚…うーん、危機察知スキルさんが過剰反応してらっしゃる。

こりゃ今までで1番ヤバいのかな?


「ジーン、手綱パス」

「え?ユージェ様?」


僕は握っていた手綱をジーンに放り投げて、御者台に立つ。

少し息を吸って、精神統一。


「…《サーチ》」


何を、とは指定しない。

何か、がわからないから。

でも、僕の言葉は僕の気持ちを汲んで検索を始める。

そして…見つけた。


「…ふざっけるなよ、《エリア》《イレイザー》」


僕の白く輝く魔力が王都を包み込む。

観客達は何が起こったのかわからず、ただのパフォーマンスの一環だと思ったのか歓声が沸き起こった。

怪訝な顔をしているのは、『イレイザー』の効力を知るエドワーズ様とジーンのみ。


「…何を消したんだ?ユージェリス」

「勿論、貴方の輝かしい未来を汚そうとする不穏分子ですよ。まぁまだ残ってるんで、少しこの場を離れさせていただきますね。ジーン、防御付与してるから大丈夫だとは思うけど、ちゃんとお2人をお守りするように。真っ直ぐ速度を変えず、兄様達のところへ向かって」

「…御意」


ジーンの返答を聞いてから、僕は認識阻害のブレスレットを取り出して付ける。

民衆は僕が急にブレて見えるだろう。

少し騒ついた隙に、馬車の縁に足をかけて一気に踏み込む。

沢山の民衆の壁を軽々越えて、辿り着いた建物の影にいたのは…


「…何か用ですか?おじさん達」


にっこり笑って、牽制。

フードから見える口元や体格から言って、男なのは丸わかりの5人組だった。

僕はそっと背後の王都民やエドワーズ様達を守るため、指を鳴らして僕達6人を囲むようにドーム型の『バリア』を張る。

突然現れた僕と透明な壁に驚いたようで、2人ほど逃げ出そうとしてたけど、無理でーす。

認識阻害は話しかけた相手には関係ないので、5人にはキチンと僕が見えているようだ。


「…で?ご用件はなんですかね?まだパレードの途中なので、御退場いただきたいのですが」

「…何故、我々に気付いた」

「あんな殺気放っといて、気付くなと?」

「なっ…!!一瞬睨んだだけだぞ…?!」

「やだなぁ、僕のスキルがめちゃくちゃ反応したじゃないですか。しかもなぁんか変なものまで仕込んでましたし?」

「まさか、お前、アレを…?!」

「うふふ、ぜぇーんぶ、消しちゃった♡」


そう、僕がさっき消したのは、大量の爆発物だった。

魔法付与したわけでもない、前世で使われていたような火薬の詰まった爆弾だね。

馬車の進行方向にどでかいのが2つ、王城の周りに10個、王都の中に5個…

ぶっちゃけ、王城は結界があるから爆破を食らっても問題はないだろう。

でも周りの民家は違う。

この大観衆の中で1つでも爆発してたら…


「…君達さぁ、なんの恨みがあるわけ?あんなもん爆発したら、怪我人どころの話じゃないよ?」

「お前…アレがなんだかわかるのかっ…?!」

「は?爆弾でしょ?それが?」


僕の言葉に、言葉を失う男達。

…そうか、この世界に『爆発』や『爆破』って言葉は存在しても、『爆弾』なんて存在しないじゃないか。

だって『拳銃』もないんだもの、代わりに魔法で攻撃するから。

『火薬』なんて…そんなもの、ない。

つまり…普通なら、アレが危ないものだなんて、わからないんだ。

『危ないもの』という認識が一般的じゃないから、父様達魔法師団の人だと危機察知スキルは反応しないだろう。

僕は知っている(・・・・・)から反応したんだ。

つまり、同じく知っている(・・・・・)という事は…


「…予定変更、色々聞いてから兵士に引き渡して終わりにしようと思ってたけど、先に捕まえて吐かせる事にした」

「「「「「なっ…?!」」」」


驚きつつも攻撃態勢を取った5人に、僕は素早く鞘から剣を抜かずに構える。

そして身体強化スキルで踏み込み、一瞬で懐に入り込む。

まず1人目、剣の柄頭を鳩尾に決めて終わり。

2人目はそのまま流れるように背後に回って、頭をガツンと。

向かってくる3人目と4人目をしゃがんで躱し、足払いで倒れ込ませる。

いい感じに僕の方に倒れ込んでくれたので、剣でバランスを取りながら回し蹴りで沈める。

はい、残るはあと1人です。


「貴方が首謀者かな?さっきからちょっと偉そうに小声で指示出したりしてたし。さて、終わりにしようか」

「…く、クソっ…!!こんな強いなんて聞いてないぞ…?!アイツら(・・・・)にこんな力があったなんて…!!」

「…うるせぇ、黙れ」


威圧スキルで睨み付ける。

それだけでガクガクと震え出した足は、かなり無様だった。

さっさと近付き、胴体を剣で打ち付ける。

低い呻き声を上げながら、崩れていく男にダメ押しの一撃で…


「はぅん!!!?!?!!」


振りかぶった足で、相手の足の間を狙った。

クリーンヒット、撃沈です。

…今ならこの攻撃の恐ろしさがよくわかるよ、あはは。


というわけでさっさと『アレスト』と『バン』で拘束。

顔を拝んどきますかー。


「…おや、まさかの見知った顔もあった。てっきり知らない顔だけだと思ったのに」


1人目に倒した相手は、まさかのジャンジャック=バークレーだった。

あ、今は平民落ちしたから、ただのジャンジャックか。

5人の中で1番ヒョロそうだと思って最初に倒したんだけど、コイツだったとは…

他の4人は勿論知らない。

だって…


「コイツら…ガルデリバルサの奴らだろうなぁ…」


そう、『火薬』や『爆弾』を知っているという事は、転生者と関係がある人だという事だった。

そしてそんな情報を得ているという事は…


「…過去の遺産、か…胸糞悪い」


確かガルデリバルサの王城はこの前の侵略で大破したと聞く。

だから残ってる書物なんかもなくなったとばかり思ってたけど…どこかに残ってたのか?


「…ま、コイツらを締め上げればわかるか、《レター》」


拘束したジャンジャックの顔に陛下と父様宛の手紙と、ベティ様宛の手紙の2枚を貼り付ける。

パレード終わったら会いに行こう。


「んじゃ、後でね。《キャリー》」


王城前の騎士さん達の所まで送る。

流石に王城の中に直接は送れませんとも。

父様からもし不審者がいたらそこまで送ってくれればいいって言われてるしね。

『バリア』を解除して振り返ると…結構な人数がこちらを見ていた。

あー…さっきの男達の声でバレたか。

僕の姿だけ消しても意味なかったな。


「…なぁ、今の…」

「すげぇ…愛し子様強ぇ…」

「こんな至近距離で…カッコいい…」


とりあえず一旦有耶無耶にするか!

気付いた人達に近付き…食らえ!王子様スマイル!!


キャァー!!!!!


…黄色い歓声、至近距離だと耳にくるな…

というか、王子様スマイルが強過ぎる。


「皆さん、どうかエドワーズ様とルーシャン様に祝福を!」


僕の言葉でくるりと2人の方を向き、大歓声を上げる人達。

その隙を狙って馬車に『ワープ』した。


「お帰りなさいませ、ユージェ様!」

「ただいま、ジーン。操縦ありがと」

「なんだったんだ?ユージェリス」

「ここじゃ話しにくいので…《レター》。これ、王都を出てから兄様達と一緒に見て下さい。続報は分かり次第送りますので」

「わかった、よろしく頼む」


まぁどうせ逆恨みだろうけどね。

その後は特に大きな問題もなく、そのまま兄様達へ引き渡す事が出来た。

僕と兄様が笑顔で抱き合うと、すんごい悲鳴が響き渡る。

…イケメン2人の抱擁って破壊力凄いんだねぇ。


「じゃあ兄様、行ってらっしゃい。気をつけてね?何かあったら渡した魔導具で連絡してね?」

「うん、行ってきます。ちゃんと持ったから大丈夫だよ、心配しないで」

「…気のせいか?私に貸してくれた魔導具よりも高性能なんじゃないか?」

「…ふふふ。では、行ってらっしゃいませ!」

「おい」


やだなぁ、そこまで大差ないですよぉ。

ただちょぉー…っと、ね?

同時に連絡が来たとしても、兄様の方が最優先になってるだけです、はい。


「ルーシャン様もお気をつけて。また遊びに行きますとサルバト様達にお伝え下さい」

「えぇ、お待ちしておりますわ」


こうして兄様達はヴァイリー王国へと旅立っていった。

ちなみに目立ちまくった僕とジーンは早々に『ワープ』で王城まで戻りましたとさ。

まさに瞬殺。

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― 新着の感想 ―
[一言] 逆恨みって怖いよねー。ざまぁ。………元騎士団長は居なかったか。しかし、雑魚キャラがどうやって知りあったんだろう。雑魚キャラのくせに、こんなだいそれた事をするなんてナマイキだな。ユージェの一人…
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