パレード開始《side another》
☆★☆side ジーン☆★☆
ユージェ様は、めちゃくちゃ美形である。
本人曰く『父様と母様の遺伝子引き継いでれば、そりゃイケメンでしょー』だそうだ。
つまり俺が何を言いたいかと言うと…
「王太子殿下ー!おめでとうございまーす!」
「愛し子様ぁー!素敵ー!」
「ルーシャン様ー!お幸せにー!」
「かっこいいー!愛し子様ぁ!」
…主役のお2人を取って食う勢いで目立ってるという事だ。
王都民達は殆どユージェ様を見る事がないから、かなりテンション上がってる。
こんな人数の中でなら、何を叫んでも問題ないだろうと言う気持ちが感じられた。
まぁユージェ様は元々気さくな方だし、全然不敬とかにもならないと思うけどな。
実際褒め言葉が聞こえればそちらに向かって軽く微笑みながら手を振ったり会釈したりしてるし。
あ、なんか今1人倒れたな。
「…ユージェ様、愛想も程々にしないと、死人が出ますよ」
「んな馬鹿な。それじゃ素顔になったらどうなるってのさ」
「瞬殺ですね」
「いやぁ、ユージェリスがいるからか皆の反応が良くて何よりだ」
「えぇ、ユージェリス様とエド様も皆さんに人気がおありですのね」
ふふふ、と微笑まれたルーシャン様は可愛らしかった。
このお2人も俺なんかとは身分が全く違うのに普通に接して下さる。
最初は緊張でガチガチだったけど、最近では普通に返答が出来る様にもなった。
「どうだ、ユージェリス、2人でルーシーに向かってこの前読んだ本の真似でもしてみるか?」
「本ですか?どれでしたっけ?」
「ほら、メグがお前にやってほしいとごねていたやつだ」
「…あぁ、アレですか。なんでまた」
「目立つだろうし、私達が仲の良いところを見せつけられると思ってな。お茶目な王太子と愛し子なんて、中々見れるものでもなかろう?」
「…まぁ、いいですけどね」
「ジーン、お前もやるか?」
「私もですか?!え、何を?!」
「いいじゃないですか、王太子と愛し子と、まぁ一応平民であるジーンが同じ仕草をする…うわ、すっげぇ図だな、ウケるー」
「だから何をっ…!!」
すると突然、ユージェ様が俺の耳元でポツリと呟いた。
…一瞬思考が停止し、動き出した時には汗が止まらなかった。
「…そ、それをルーシャン様へ…?お、恐れ多過ぎるんですけど…?」
「大丈夫、ルーシャン様も喜ぶから」
「何か良くわかりませんが、きっと大丈夫ですわよ?」
いいのかよ!!
内容聞いてからそう言ってくれ!!
「よーし、じゃあやるぞ?2人ともこちらを向け。ルーシーはそこに座ったままでいてくれ」
「はい、エド様」
「さぁジーン、覚悟を決めろ」
「…誰かに刺されそう…」
「そしたら僕が全力でやり返すから大丈夫!」
そう言う事じゃないっす…
「では、3、2、1、せーのっ」
ええい、ままよ!!!!
「「「「キャー!!!!?!!!!?!」」」」
何をしたかと言うと…
男3人で、ルーシャン様に向かっての、投げキッスだった。
ユージェ様は片目を瞑りながら。
エドワーズ様は愛しそうに目を細めて。
そして俺は…恥ずかし過ぎて、目を瞑ったまま。
破れんばかりの黄色い悲鳴が響き渡った。
「どうだ?王太子に愛され、愛し子に認められ、平民からも慕われる妃殿下の出来上がりだな」
「とっっってもトキメキましたわ!!まるで物語のようでした!!皆様、ありがとうございます!!」
「喜んでいただけてよかったですよ、なぁジーン?」
「…ソウデスネ…」
もうやだ、恥ずかし過ぎて顔が熱い。
早く帰りたいなぁ…
★☆★side メルヒー★☆★
今日は妹のヒナリーとメイーナと一緒に、王太子殿下の婚約パレードを見に来てるの。
結構いい位置が確保出来たわ!
「お姉ちゃん、もうすぐかなぁ?」
「えぇ、声が聞こえてきたから、そろそろよ!」
「…凄い歓声」
メイーナは無表情に見えるけど、結構ワクワクしてるわね。
それくらいあたしだってわかるんだから!
「あ、見えたわよ!」
「本当だ!あ、愛し子様もいたぁ!」
「…従者…違う…?」
ん?メイーナがなんか言ってるけど、まぁいっか!
はぁん、それにしても皆様お顔が整ってるわぁ!
愛し子様は仮面してるけど、滲み出るオーラでもうカッコいいってわかるわね。
…って、あ、れ…?
「…メイーナ、あたしの目の錯覚かしら…?馬車に、ルーシーさん、乗ってなぁい…?」
「…あぁ、やっぱり、お姫様か」
「ちょ、どう言う事?!メイーナ?!」
聞いてないわよ?!
「…ロジェスも、ユズキも、気付いてた。だから、距離を取ってた」
「…え、じゃあ何?あたし、次期王妃様にタメ口きいてたって事…?」
メイーナがコクリと頷く。
…目眩がするんだけど…?
「かっこいいー!愛し子様ぁ!」
ヒナリーが叫ぶ。
ちょ、それって不敬じゃないの?!
…なぁーんて思ってたら、よ?!
なんと愛し子様、こっちに向かって微笑みながら軽く手を振って下さったの!!
さっきの目眩も相まって、そのまま崩れ落ちちゃったわ…
「…メルヒー、大丈夫?」
「お姉ちゃん?!」
「…大丈夫、大丈夫よ…」
「愛し子様、あたしに手振ってくれた!覚えててくれたのかなぁ?また会いたいなぁ!」
…何も知らないって幸せね…
そんな風に感傷に浸ってたら、衝撃的な光景を目の当たりにした。
な、なんと…愛し子様達が、ルーシーさん…じゃなくって、ルーシャン様に投げキッスしたのよ?!
ついヒナリーと一緒に叫んじゃったわ。
何アレ何アレ、超羨ましいんですけどぉ?!?!
よく見たらあの従者の人もかなりカッコいいじゃない!!
美形3人に投げキッスされて…うはぁ!!!!!
「…本っ当に、眼福…!!」
「いいなぁ、いいなぁ、あたしもしてほしーい」
「…アレは、ズルイ」
あ、メイーナも耳が赤い。
はぁぁぁ…凄いわねぇ、ルーシャン様。
もうお会いする事もないかもしれないけど、会えたならちゃんとおめでとうと言いたいわ。
その時は『ルーシーさん』って呼んでも怒られないかしら?
例え一瞬でもお友達だと思って貰えてるなら、大丈夫…?
きっとあの方なら怒らないで笑顔で『ありがとう』って言ってくれるわね。
その日が来る事を祈っておこう。
☆★☆side ???☆★☆
目の前を通過していく、王族の馬車。
それを人混みの後ろから見つめる俺達。
その目はお世辞にも祝福しているものではない事はわかっていた。
憎悪の目…それが1番近いだろう。
だが、それも今日晴らされる。
「手筈はどうだ?」
「王都を出る手前で爆破予定です」
「今のところ、勘付かれた様子はないです」
「当たり前だ、気付かれないように慎重に細工したんだからな。愛し子とかいうあの銀髪の男だって爆破するまで気付かないだろう。爆破すればこちらのもんだ」
「さすがに王城には無理でした」
「ですが周りに被害が出るように手配は整えてます」
「あぁ…俺達のこの怒り、全てをぶつけてやろうじゃないか…」
あの男達のせいで、俺達はこんな目に遭ったんだ。
俺達は悪くない。
悪いのは…
「悪いのは…お前らだ、リリエンハイド王国」
さぁ、死のパレードの始まりだ。
ネタバレとなりますが、次の更新でパレード編終わります←




