パレード開始前
翌日、改めて書面による内容の発表があった。
学院内の掲示板や街の中の至る所に貼られたソレには、以下の内容が記載されていた。
・パレードは王都内のみとする
・エドワーズ様はヴァイリー王国国境までルーシャン様に付き添う
・パレード時のみ愛し子である僕が護衛として参加(なんとジーンも参加)
・王都を出てからヴァイリー王国までの道のりは騎士団と魔法師団が護衛を受け持つ
ちなみにここに書かれていないが、エドワーズ様達を国境まで迎えに行くのも僕の仕事になった。
到着前日に『レター』を送ってもらい、『ワープ』でお迎えです。
エドワーズ様は公務が詰まってるんだってさ。
ちなみにパレードはオープンタイプの馬車に乗って行われる。
なんて言うんだっけ、キャリッジ?だっけ?
あの前世で皇族のご成婚時に乗ったりしてるやつ。
1度乗ってみたいと思ってたけど、まさか本当に乗るとは思わなかった。
今回は僕とジーンが御者になる。
まぁ何か襲撃でもされたらジーンに運転任せて僕は動くけどね。
あ、学院内はその週ずっとその話題で盛り上がってました。
まだあのルーシーさんの事だとはバレていない模様。
ローグナー達にみんなで見に行かないかって誘われたけど、別の人と約束してると伝えて断った。
…メイーナが疑いの眼差しでこちらを見ていたのはスルーしといた、うん。
そしてパレード当日。
きっちりかっちり愛し子正装バージョンで用意しましたとも。
エドワーズ様が白を基調とした服装にするって聞いてたから、僕は黒基調にした。
銀や青をいつも通り使った、黒なのに華やかなタイプのやつ。
それにいつものマントと仮面ね。
ジーンは執事の燕尾服だけど、いつもは纏めてない髪もセットする事でイケメン度が増した。
ヤンチャ系イケメンがクール系イケメンに変わるとは驚きだ。
今回は僕に合わせて眼鏡をかけてみるそう。
…インテリ眼鏡に見えなくもない。
ちなみに僕は帯剣してるけど、ジーンは御者として帯剣してない。
まぁレリック直伝のナイフは懐に忍ばせてるけどね。
「…あぁ、吐きそう…なんで俺、こんな大役を仰せ使ってんだ…?」
顔色は最悪だな。
「まぁまぁ、なんなら認識阻害効果のあるブレスレットでも使う?」
「…いえ、大丈夫です。どうせユージェ様とずっと一緒にいるなら、こういうのにも慣れないと…」
あら、いい子。
まぁ顔色は最悪だけどな。
「そんな気負わないで、前だけ見てればいいよ。周りの警戒は僕がするからさ」
「…従者としてはそれ拙いんじゃ?」
「主人が許可してんだから問題ない。ジーンも僕とお揃いのイヤーカフス付けてるんだから、何かあっても大丈夫だしね」
「何もないと信じてます…」
少し顔色の戻ったジーンと一緒に、今日は父様と登城します。
登城の最中、王都を出てからは騎士団から右翼の副団長と3つの部隊、それと魔法師団から兄様とランドール様、ロイド様、イザベル様の師団が付き添う事を聞いた。
道理で兄様がここにいないはずだわ。
ちなみに残った魔法師団はパレードの音楽や花を降らせる演出なんかを担当するらしい。
王城では宰相様から今日の流れを聞き、エドワーズ様達と合流。
いやぁ、結婚式かと思うくらいのキラキラ王子様感たっぷりだった。
白地に金の刺繍が映えるねぇ。
ルーシャン様は白地に色々な種類の赤色で刺繍が施されていた。
ヴァイリー王国は赤が国の色だからねぇ。
そして気になったのは大きさの違う2人お揃いの白いハット。
巻かれているリボンが…2人の瞳の色ですね!
いやぁ、ラブラブだなぁ、爆発してほしいくらいだよ!
…なんか、僕も彼女欲しくなってきたな…
「どうした?ユージェリス。羨ましいのか?」
ニヤニヤして聞いてくるエドワーズ様。
くっそぅ、わかってて言ってるな?
「エドワーズ様、もう少し僕に対する言葉は選んだ方がいいですよ?今からでもサルバト陛下に伝えて婚約やめてもらってもいいんですからね?僕が新たな婚約者に立候補しましょうか?」
「ぐっ…」
「ゆ、ユージェリス様?!」
「…冗談ですよ、冗談。そんな権限ありませんって。折角人が紹介して婚約出来たってのに揶揄うような態度取るから、ついイラッとして。申し訳ありませんでした」
「…まぁ、揶揄った私が悪かったからな、その謝罪は不要だ。すまなかったな」
全く、浮かれちゃってんだから。
「そんなに浮かれてルーシャン様しか見えてないような態度を取ると、ガルフィ様の二の舞ですからね?ちょっとは気をつけて下さい」
「う…確かに…気をつける…」
痛いところを突かれたのか、渋い表情で謝罪するエドワーズ様。
まぁちゃんとわかって下さる方でよかったよ。
その後、例の馬車に乗り込む僕達。
僕とジーンは御者台で、主役は後ろ。
最初から防御関係の魔法印が彫られてたけど、改めて僕も魔法を上掛けしておいた。
さて、出発はお昼ちょうどだから、そろそろだね。
「ユージェリス、今日も仮面付けるのか?」
「まだ顔バレしたくありませんからね。外すのは成人してからにします。それに今日外したら、お2人よりも目立つ自信がありますよ」
「それもそうか、今まで付けてたんだからな」
「まぁ、それで仮面をお付けになっていたのですね」
「学院の人や王都の馴染みの店の人達にまだバレたくないんですよ」
「納得です」
「全員、準備は万端か?」
お、陛下とベティ様、それに宰相様もお見送りか。
「はい、問題ありません」
「ユージェリスの従者も大丈夫か?顔が固まっているが…」
「は、はい!問題ありません!!」
「確かジーン君だったかしら?大変ねぇ、ユージェに気に入られちゃって、平穏な生活からこんな高等貴族に囲まれるような状態になっちゃって」
「ベティ様、随分な言いようですね」
「まぁ事実ではないか、ユージェリス殿。それでは2人とも、馬車を頼むぞ」
「はい、ジェイク様」「は、はい!!」
あららぁ、ジーンってば。
何回か会っててもこうやって声をかけられると未だに緊張するんだねぇ。
頑張って免疫つけてくれ。
「では、またな、ルーシャン姫。義娘になる事を楽しみにしているぞ」
「またね、ルーシャンちゃん」
「はい、陛下、王妃様。日々精進を重ね、エドワーズ様の隣に立つに相応しい知識や経験を積んで戻って参ります」
「エドワーズ、気をつけて行けよ?」
「何かあったら緊急用ブレスレットを使いなさいねー?」
「はい、父上、母上、行って参ります」
「それでは、開門致します!」
宰相様の言葉に、気を引き締める。
さてさてさーて、華のパレード、真面目にやりますかぁ!