みんなお揃い
「じゃあ2人とも、ちょっと離れててね?いくよー…《アルケミー:リフレクション》かーらーの《グラント:バリア》!!」
机の上に並べた物に向かって、魔法を放つ。
強い光を発しながら、それらは形を変えていく。
光が収束すると、机の上にはいくつかの装飾品が並んでいた。
「「うわぁー!!」」
「うん、成功かな?」
汚れたうさぎのぬいぐるみは綺麗になり、破れたドレスをリメイクして着させた。
イメージは某魔法少女がOPで着ていたような感じに仕上げてみたつもり。
うさぎのぬいぐるみが、あの作者の作品にあるやつと似てたからかもしれない。
羽が付いてたイメージもあるから、ちゃんと付けてます。
ついでに肩ベルトを2つ付けて、ぬいぐるみは背負えるようにしてみた。
ドレスをめくると背中の部分が袋状になってるから、ちょっとくらいなら小物もしまえます。
そんなうさぎの耳には、月のモチーフのイヤリング。
デザインは僕のと同じにした、お揃いって感じでいいよね。
ちなみに机の上には同じイヤリングがもう1セット。
これはセリスの分。
「か、か、か、可愛いですわぁ〜!!見た事ないデザインですけど、とっても可愛いドレスを着てますのね!」
「背負えるし、ドレスの下には小物もしまえる袋を作ったから、お出かけする時にちょっとした鞄として使えるよ。後はこのイヤリングだね。うさぎ持ってる時はこの子に付けといてもいいけど、基本的には外して自分に付けておいて?これが魔導具だからね」
「はいっ!ありがとうございます兄様!!」
うんうん、そんなに喜んでもらえるなら、こっちも嬉しくなっちゃうね。
いつも通り、フローネの頭を撫でておいた。
そして兄様の方。
僕と色違いの、全く同じデザインのイヤーカフにしてみた。
ちなみにあのエセ中国語みたいな日本語の魔法印は、バラバラに解体されて模様のように散りばめられていた。
…これ、なんかそれっぽくなったな。
「凄い、ユージェとお揃いだね!うわぁ、綺麗だなぁ…」
「男物だし、イヤリングじゃ変でしょ?これなら手軽に付けられるから」
「うん、嬉しいよ。ありがとう、ユージェ」
今度は僕が兄様に頭を撫でられる。
…ちょっと気恥ずかしい、けど嬉しい。
うーん、ロイ兄様もいい男になりそうだなぁ。
無自覚タラシになりそう、怖い。
2人がはしゃぎながら作ったものを手にとっていると、扉からノック音が聞こえた。
「ユージェリス様、先程大きな声が聞こえましたが、何かありましたでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だよ。そうだ、3人も入ってきて?」
「「「失礼します」」」
扉が開き、3人が入ってきた。
僕は机の上のイヤリングとイヤーカフを手に取り、ミーナとセリスに近付く。
「2人共、手出して?」
「「はい?」」
不思議そうにしながらも、2人は素直に両手を差し出した。
その手の上に、1つずつ装飾品を置く。
それを見た2人は、驚いたように顔を上げた。
「ロイ兄様とフローネとお揃いだから、必ず付けてね。出来るだけ外さないように」
「ユージェリス様、これは…」
「こんな高価そうなもの、受け取れません!」
ミーナは息を飲み、セリスはアワアワと恐縮しながら受け取りを拒否した。
「いいの、壊れた装飾品使って作ったんだから。それにこれは魔導具、2人はロイ兄様とフローネの側にいつもいるでしょ?だから、それを付けなきゃダメ。…なぁに?愛し子の言う事が聞けないとでも?」
なーんてね、ちょっと脅してみた。
僕はニヤリと、悪そうな顔をする。
途端にセリスが真っ青な顔をして、首を横に振った。
「いえそんな、そんなつもりは!!お許し下さい!!」
「えぇー…そんな、冗談で言ったのにぃ…」
「ユージェリス様、その発言はあまり冗談で使わない方がよろしいかと…」
「リリーまで…」
セリスはそこまで怖いか、愛し子が。
リリーは少し呆れたように僕を諌めていた。
ミーナは少し考えたような素振りをし、そして頭を下げた。
「私にはもったいないものでございますが、頂戴致します。これからも身を呈してロイヴィス様をお守り致しますので、どうかご安心下さい」
おぉ、ミーナはわかってくれたみたい。
そう、これはミーナとセリスの安全のためだけではない。
あくまでロイ兄様とフローネのためだ。
基本的にこの2人は離れる事がない。
片方の魔導具が壊れても、もう1つあれば時間が稼げる。
『盾』としての役割を、ミーナは理解したようだった。
…もちろん、2人に傷付いてほしくもないけどさ。
でもなんと言われようとも、やっぱり僕はロイ兄様とフローネの方が大切だ。
2人には守ってもらわなければいけない。
…リリーについては、僕が守らないと危ない気がして、渡した感が否めない。
「え、あ…そういう…申し訳ありません、私も頂戴致します。ご無礼をお許し下さい」
「いいよ、別に。気にしないで」
ちょっとフローネが心配になるな、専属がセリスだと。
もうちょい言葉の裏を察する技術を身につけてほしい。
まぁリリーより年下っぽいし、まだ難しいかな…
「さて、次は父様と母様、そのお揃いをレリックとシャーリーにも作らないとな。レリックが王城から戻ってきたら同じような箱出してもらおっと」
「レリックさんなら先程戻られましたので、聞いて参りましょうか?」
「じゃあリリー、よろしく」
一礼し、部屋か退室するリリー。
それに続いて、ミーナとセリスも頭を下げた。
「ユージェリス様、我々もまた廊下で待機してますので、何かありましたらお呼び下さい」
「ん、わかった」
退室する2人の耳には、それぞれ渡した魔導具が付けられていた。
うん、中々みんな似合うな。
我ながらよく出来た。
あぁ、でも…
「…ちょっと疲れたな、魔力使い過ぎたか…」
「ユージェ、大丈夫?少し寝たらどうかな?」
「お兄様、顔色があまりよくありません。横になって下さいな。私達なら本でも読んで待ってますから」
「うーん、じゃあしばらく寝ようかな。リリーが戻ってきたら、そこの箱と入れ替えておくように言ってくれる?」
「うん、わかった。ほら、早くお休み?」
兄様とフローネに背中を押されて、ベッドに入る。
横になった瞬間、急激な眠気に襲われた。
あぁ、やっぱ魔法使い過ぎたか…
そうだよな、あの魔法、消費魔力が伝説級だもんな…
父様達の分、起きたら作れるだけの魔力が回復してるといいなぁ…
そんな事を考えつつ、僕の意識は落ちていった。