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お仕事の依頼(?)

翌日、ルーシャン様改めルーシーさんは花組へ加わった。

そしてその日のお昼にルーファスとナタリーとニコラから『レター』が届いた。

何故教えなかった、と。

レオはどうやら知ってたらしい。

そして3人に教えてあげたそうだ。

僕を責められてもお門違いなんだけどな。

まぁなんか打ち解けてるらしいからいいんじゃない?

意外とチェルシー嬢が仲良くやってるらしい。


貴族科にいる間は全く出会わなかった。

まぁ僕って基本的に平民科側にしかいないしね。

問題なく1週間が終わり、ついに週末。

お昼になって臨時放送が始まった。

僕は国民の反応が見たかったので、久しぶりにティッキーディッキーのお店へと遊びに来ていた。

何年かぶりだと言うのに、ユズを忘れていなかったようで歓迎してくれた。

というか、仕事手伝わされてます。

臨時放送を聞きながら、ワイヤーの部品をひたすらクルクルパッチンしてます。


『…というわけで、ここに隣国ヴァイリー王国との和平条約を結ぶ事となった。また愛し子様のお導きにより、王太子であるエドワーズとヴァイリー王国第3王女ルーシャン姫との婚約が内定した』


おっと、なんか僕の話もしてるし。


「いやぁん!!ついに王太子殿下もご結婚なさるのねぇ!!」

「カッコいい王子様が他の女に盗られるなんてぇー!!」

「でも愛し子様のお導きなんでしょ?それならいい女って事じゃなぁーい?」

「そうよねぇ…うぅ、なら祝福しなきゃダメよね…」

「お2人とも、王太子殿下をお見かけになった事あるんですか?」

「えぇ、実は以前、このお店にいらした事があるのよ!!」

「それもこれも、ユズちゃんのお陰なのよ!!だから忘れてなかったんだから!!」

「僕の?」

「実はね、王太子殿下と王妃様が、お忍びでいらして下さった事があるの」

「なんでも噂の男性用ブローチ…ラペルピンの製作を依頼したいって!」

「あの時は滾ったわねぇ…」

「色んなデザインが思い浮かんで、全て提示したらお2人とも迷っていらしたわ…」

「それで、王太子殿下はご自身のを、王妃様は陛下の分を選ばれて製作させていただいたの」

「まぁ実際に使ってるところは拝見出来てないけどねぇ…」


…そういや、エドワーズ様も陛下も、ラペルピン持ってたな。

あれは男性貴族に流行ってみんな1つは色んな工房で作ったりしてたみたいだけど、まさかの王族はラペルピンを広めた工房で作ってたとは。

まぁ僕が作ったとは言ってないから関係性は知らなかっただろうけど。

…いや?ベティ様は気付いてたかも?

まぁいいか。


『…であるからして、つまりは…』

「あらやだ、陛下のお話まだ途中だったわ」

「つい気持ちが昂っちゃった」


本当だ、すっかり忘れてた。

僕なんて作業しながらだったし、つい陛下を蔑ろにするのは母様の血らしい。


『来週末にルーシャン姫はヴァイリー王国へお戻りになるので、盛大にお見送りをするように。また護衛として、親交の深い愛し子様であるユージェリス=アイゼンファルドがご参加する事も内定している。皆、粗相のないように。以上だ、皆に精霊様のご加護がありますように、《ブレッシング》』


…ちょっと待てぇーい!!!!

いやいやいや、何言ってんの?!?!

聞いてませんけど?!?!

何言っちゃってんの?!?!?!


「あらやだ!愛し子様を至近距離で見られるチャンスなのね!!」

「愛し子様って仮面でお顔を隠されているけど、師長様やマリエール様に似て美形なんでしょう?やぁだ、楽しみなんだけどぉー!!ねっ、ユズちゃん!」

「ん?あ…うん、ソウダネー…」


聞いてない、聞いてないんだが?!

え、ちょっと待ってよ、じゃあ学院どうすりゃいいのさ?!

えぇー…それならそうとこの前言っといてよ、エドワーズ様…


項垂れていると、誰かが走り込んでくる足音が聞こえた。

勢いよく扉を開けたのは、なんとジーンだった。

ジーンには近くで待ちつつ、王都民の反応を見て貰っていたんだよね。


「ゆー…!!ず!!」


ギリギリ持ち直したな、危なかったぞ。


「ジーン、どうしたの?」

「いや、どうしたもこうしたも…!!」


あぁ、聞いてないんだけど?!って事ね。


「安心してよ、僕も初耳だ」

「…マジかよ…」


膝から崩れ落ちるジーン。

僕も崩れ落ちたい。


「あら、ユズちゃんのお友達?」

「えぇ、後で合流して遊びに行く予定だったんです。どうやら迎えに来てくれたようなんで、今日は失礼しますね」

「そうなのね、今日は手伝ってくれてありがとう。何かお礼しなくちゃいけないわね?」

「んー、じゃあ、今度1つラペルピン作って下さいよ、僕のイメージで」

「お安い御用よ、楽しみにしててね!」

「またね、ユズちゃん!」


ジーンを引きずりつつ明るい姉妹()と別れて、近くの建物の影に移動する。

そこでやっと改めて僕も頭を抱えていた。


「…聞いて、ないけど…?」

「…愛し子様に相談なしで決めていいもんですか…?」

「ベティ様なんかは勝手に決めてくる事もある」

「…王妃様も愛し子様ですからね…位置付けとしてはユージェ様よりも高位な存在ですか…」

「…城に行って話を聞こうか。ジーン、先触れの『レター』送っといて」

「承知しました」


とりあえず王都の仮住まいに戻って、『ワープ』で帰宅。

身なりを整えてから、王城へと向かった。

そして中に通されて、陛下の執務室へ行くと…


「…なんだこりゃ」


中に入って見えたのは、仁王立ちしてるベティ様と父様の後ろ姿と、その前で土下座したまま頭が上げられなくなってる陛下と、呆れた様子で陛下を見つめる宰相様とエドワーズ様と、オロオロしたルーシャン様だった。

ジーンはその光景を見て、青ざめたままそっと扉を閉めて僕だけを執務室に残していった。

この野郎、逃げたな?


「…おぉ、ユージェリス殿」

「来たか、ユージェリス」

「あ、ご、ご機嫌よう、ユージェリス様」


僕に気付いた外野3人が挨拶してくれる。


「お邪魔してます。それで…これは?」

「…あぁ、ユージェリス、いらっしゃい」

「…あら、ユージェ、もう来たのね?」

「ベティ様、父様、これはどういう事ですかね?」

「さっきの放送の事よね?あれは口が滑ったこのバカのせいよ」

「バカって、そんな、ベティ…!!」

「ちょっとお黙りなさい」

「はい…」


顔を上げた陛下は泣いてたけど、ベティ様に切り捨てられてまた土下座の体勢に戻った。


「今日の午前中にな、このメンバーだけで話をしていたんだ」

「そこで私が『王都の中だけでもユージェリスを護衛に置いて、国民へヴァイリー王国とうちの親密さをアピールしたらどうか』と進言したんだが…」

「それでルートが『良い考えだから、屋敷に帰ったら本人に確認してみる』って言ってくれたんだけど…」

「…陛下が先走ってな、エドワーズ様の結婚が余程嬉しかったようだ」

「申し訳ありません、私がつい同意してしまったばかりに…」

「ルーシーちゃんのせいじゃないのよ!悪いのは確認する前に口を滑らせたこの男なんだから!」


…しみじみと思うのはさぁ。


「…うちの国って、よく正常に動いてますよね。不敬かもしれませんが、陛下がこんな感じでも」

「あらやだ、当たり前じゃない」

「え?」

「これだけ優秀な王妃と宰相と師長がいるのよ?フォローはバッチリに決まってるわ。あぁ、今は騎士団長も優秀よね」

「…こういう問題を起こすところは、多分前王妃様に似たんだろうな、陛下は」

「…返す言葉もございません…」


さっきよりも力なく土下座をする陛下。

なんならほぼ倒れ込んでるんじゃないか?これ。


「…私はこうはならないように気をつけよう」

「頼みますよ?ちゃんとご指示下さればやりますから」

「あぁ、必ず報連相はしっかりする」

「へぇ、ご存知ですか」

「母上から教わったんだ。社会人?として必要な事だとな。社会人というのは成人と同じだろう?」

「まぁそうですね、そんな認識でいいかと。でも仕事をしていなくても伝える事は大事ですよ」

「あぁ、とても大切な事だと教わったからな。父上はどうか知らんが」

「でもこの前教えてくれなかったじゃないですか」

「国家機密を簡単に言えるもんでもないだろう」

「そりゃそうでした」

「あ、あの、エド様、私にもホウレンソウ?というものについて教えて下さいませね?」

「あぁ、勿論だ」


あらあら、こっちはいい感じです事。

陛下、しっかりして下さいよー?

とりあえず王都の中はルーシャン様とご一緒しますかねぇ。

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