新しいクラスメイト
昨日は忙しくて更新出来ませんでした!
すみません!
学年は上がり、新学期。
1つ予想外の事が起きた。
微笑んで平静を装ってるように見えて、実はかなり動揺してる。
「…というわけで、今週は月組、来週は花組で1週間ずつ留学生を迎え入れる事となった。身分は明かされていないが、他国の貴族令嬢ではある。社会勉強という事だそうだから、あまり気負わずに過ごして欲しい」
「ルーシーと申します。貴族としてではなく、一生徒として接して下さると嬉しいです。勿論敬称も不要ですわ。至らぬ点も多々あるかとは思いますが、どうぞよろしくお願い致します」
ぺこり、と頭を下げるルーシーさん。
いや…ルーシャン様。
…エドワーズ様ぁ?!聞いてないんですけどぉ?!
というかベティ様達もなんで黙ってたぁ?!
なんならサルバト様教えて下さいよぉ!!!!
髪色は目立ち難い茶髪にしてますけど、高貴なオーラはあんまり隠せていませんよ…
そしてHR後、授業が始まる前にルーシャン様…いや、ルーシーさんの周りには人集りが出来た。
人当たりもいいので、みんな気負わずに会話が出来ているようだ。
「ルーシーさんはどうしてこの国に?」
「今まで他国に出た事がありませんでしたの。それを相談しましたら、学院に体験入学するのはどうかとお誘いがありましたのよ。受け入れて下さった王国には感謝しかありませんわ」
「ルーシーさんって大人っぽいね!」
「実は皆さんよりも少々年上ですの。ですが敬語などは大丈夫ですので、気にしないで下さいましね」
…意外と馴染んでるのはお国柄かな?
あそこは貴族と平民の差があんまりないからなぁ…
「じゃあルーシーさん、お昼休みに構内案内するわ!」
「えぇ、よろしくお願いします」
なんかメルヒーが請負ってるし。
まぁ近付かなければ問題ないかな?
メイーナも高位貴族の気配を察知したのか僕の側から離れないし、近寄らない人も何人かいた。
意外な事にアッシュ君も近寄ってない。
なんなら無視を決め込んでいる。
多分彼はルーシーさんが女性だから擦り寄らないんだな。
あーあ、エドワーズ様に近付くチャンスでもあるのに。
これならとりあえず僕、悪目立ちはしてない…よね?
「ロジェス、メイーナ、ユズキも一緒に行きましょ!」
…巻き込まれーた。
やられーた。
まさかの遠巻きに近寄らなかった僕らを指名してくるとは…
「かまへんけど…なんで俺らなん?」
「クラスメイトとは仲良くしなきゃダメよ!なんでそんなに離れてるのよ」
苦い顔をするロジェス。
…多分、ロジェスもメイーナ同様気付いてるんだな、高位貴族…なんなら王族レベルなんじゃないかって。
んで、粗相しないように距離取って様子見てるってところか。
さすがは元貴族の家系だ、見る目があるね。
「メイーナとユズキも離れてないで一緒に来なさい!」
「…わかった」
「はーい…」
少し声を下げて返事。
というかメルヒー、アッシュ君は誘わないのね、苦手だもんね。
とりあえずどうしよう、先にルーシーさんに正体を明かしておこうか。
エドワーズ様は僕の仮の姿も名前も知らないから、お忍びしてる事は話してるかもしれないけど、僕だとは気付かないだろう。
そして昼休み。
お昼を食べ終わってから構内案内が始まった。
メルヒーが先頭に付いていくルーシーさん。
その後ろに僕達3人が少しだけ距離を開けて構内を回っていた。
「…なぁ、ユズキ、わかるか?」
「なーにが?」
「惚けんなや、あれは絶対にいいとこのお嬢さんやろ。なんでメルヒーもあんな気楽に接せられるんや」
「メルヒーは対人能力半端ないからねぇ。あと、平民科来るくらいだから、そんなに高くない身分だと思ってるんじゃない?」
「…あの人、少なくとも侯爵令嬢以上」
「せやなぁ、俺もそう思うわぁ。花組だけ行けばええやん、なんで月組来たんやろ」
「社会勉強って言ってたじゃない。それにちゃんと平民と仲良く出来る高位貴族ってさ、良くない?」
「…まぁ、それはな?接するんは気ぃ引けるけど、あの心意気には感服するわ」
「…同意」
「ってか、ユズキ、あの人の肩持つやん?さっきまで様子見てたくせに」
「そりゃ、突然お貴族様が来たら驚くでしょ。というか、なんで僕やメイーナが気付いたと思ったんさ」
「んー、うちの親がそうだったからなのか、ちょこちょこ俺と同じ行動してたのに気付いてたんよ。2人とも、メルヒーやローグナーよりよっぽど字も食べ方も綺麗でなぁ…貴族じゃなくとも、それに近しい立場にいたんじゃないん?」
ぐぅ…鋭いな、ロジェス。
「…まぁ、庶子、だから…」
「あー、成る程な、納得や」
あら、カミングアウトしたよ、メイーナ。
さすがにどこの家のとは言えないか。
「僕は…まぁ、見つかった例の親族が貴族だったね。それに元々アイゼンファルド領の孤児院で受けられる読み書きの練習なんかは、結構レベル高いんだよ?」
昔見せてもらったけど、ちょっとした寺子屋みたいな感じでちゃんとしていた。
孤児院の子だけじゃなく、領地の子供なら誰でも参加出来るやつ。
院長が元貴族令嬢だからこそのレベルの高さだろうね。
だからジーンみたいにこの学院に受かる子が出るんだな、うちの領地は。
まぁ僕がその教えを受けたわけじゃないけどね。
嘘は何も言ってない、うん。
サルバト様やルーシャン様は王族です。
「成る程なぁ、師長様んとこって色々待遇良さそうやな。さてと、メルヒーが睨んでるから、そろそろ会話に加わるかぁ」
あ、本当だ、こっえぇ。
「あー、えっと、何か気になられる場所などはありましたか?」
うわ、なんかロジェスの標準語って違和感ヤバい。
ってか喋れたのか。
「えぇ、中庭などはとても居心地の良い環境で素敵ですね。今度は中庭でお昼などいただきたいものです」
「左様ですか、それは良いですね。中庭でお茶をいただく事も出来ますので、よろしければ学生食堂へご連絡下さい」
「まぁ、そうなんですか?それは楽しみです」
「実は以前、愛し子様がご訪問なされた際にあの場所でお茶を飲まれて以来、凄い人気の場所なの」
「あら…愛し子様、が。そうですの」
「ルーシーさんは愛し子様をご存知なの?他国からいらしたのに?」
「えぇ、存じ上げております。とても優しくて強い、王子様みたいな方…ですよね?」
「えぇ、我が国の誇りなのよ!他国の方も知ってるなんて嬉しいわ!」
…なんだろう、居た堪れない。
というか微妙に恥ずかしくて仕方がない。
おいメイーナ、そんな目で見るな。
未だに従者or影武者だと信じているメイーナは、僕が喜んでいる顔を見られないように下を向いたと思ったらしい。
一瞬、いつもの無表情が少し微笑ましそうに口角を上げたような気がした。
「ええっと、ユズキさんとメイーナさん…でしたかしら。お2人も愛し子様をお見かけされたんですか?」
「…私がメイーナ、です。学院に視察にいらした愛し子様をお見かけしました。仮面で拝顔は叶いませんでしたが、とても整った顔立ちの優しげな方でした」
メイーナが長文喋ってるぅー!!!!!
ナル君モードじゃないのに普通に会話してるし、カテーシーも結構綺麗だ!!!
あ、メルヒーもロジェスも驚愕の面持ちだわ。
さて…僕も乗らないといけないか…
騎士の礼をして、頭を軽く下げながらルーシーさんと向かい合う。
「…私も友人達と遠くから拝見致しました。ご友人方と会話されていて、とても楽しそうにされていました」
「まぁ、そうだったんですね。それは素晴らしい事です」
「やだ、久々のユズキの騎士モードカッコいい!ってかなんでみんなそんなに固いの?ルーシーさん、敬語とかいいって言ってたじゃない!」
「アホ、そうもいくかい。ちったぁ考え」
「…後悔するのはメルヒー」
「なんですってぇ?!」
ワーワーキャーキャー言い合う3人。
ルーシーさんは少しオロオロしながらその様子を見ていた。
とりあえずそっと横に近付き、出来るだけ小声で表情を変えずに呟く。
「…彼らにはバレてるんですよ、貴女がただの貴族令嬢じゃないってね。高貴なオーラがダダ漏れですよ?ルーシャン様?」
「…っ?!」
僕の言葉に驚いてこちらを見るルーシーさん。
パチパチと瞬きをした後、安心したかのように小さく微笑んだ。
「…まさか、貴方様でしたのね」
「エドワーズ様からお聞きでは?」
「いるらしい、とは仰ってましたけど、まさかこんなすぐにお会い出来るだなんて」
「僕は逆に聞いてませんよ、本当に驚きました」
「…王太子妃、王妃教育の一環ですの。私には圧倒的に知識や経験が足りませんから、こうやって貴国の常識や人々と触れ合いたい、と申し出まして…」
「成る程、それほどまでにエドワーズ様と添い遂げる覚悟がおありなんですね」
「あ…その…」
顔を真っ赤にして俯くルーシーさん。
あらあら、いつの間にこんなにラブラブになったんだか。
「王城にお泊まりですか?」
「えぇ」
「では週末に遊びに行きますね。詳しい話はその時に、ルーシーさん」
「承知致しましたわ、ユズキさん」
にっこりと微笑み合う僕達。
ちょうど3人はその瞬間からこちらを見ていたようだ。
「なんや、ユズキ、仲良くなったんか?」
「うん、まぁね」
「えー?ユズキずるーい!」
「…まぁ、ユズキだから」
メイーナ、どういう事?