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未来予知

『さて、話を戻すのら。精霊ガルデリバルサがユージェリスを欲しているのではなく、あくまで皇帝や一部貴族が望んでいるだけなのら。なのであの子を責めないでやってほしいのさ』

「それは勿論責めないよ。精霊が指示してやる事なんてないでしょ?」

『出来なくはないけど、やらないのら。精霊が指示すれば従うのが鉄則になるのら。それじゃただの独裁政治の始まりなのら。精霊はそんな事、誰も望まないのら』


いやぁ、うちの世界の精霊は良識あるタイプで良かったわぁ。

まぁそれ故に関わらないからこういう内乱は起こるんだろうけどね。


「どうしたらいいと思う?」

『ユージェリスが皇帝ぶっ飛ばせばいいら?』

「なんでだよ」


なんでそんなに当たり前でしょ?みたいなノリで言われなきゃいけないのさ。

コラそこ、頷かないの、ベティ様!


「もうちょっと穏便にいこうよ」

『…じゃあ、あと1ヶ月待つのら』

「1ヶ月?」

『先読みの確率の高い未来でガルデリバルサは侵略されて崩壊するのら』

「「「「「「は?」」」」」」


全員、ぽかーん。

まさかの情報なんだけど?


『あまり先読み結果を人間に教えるのは良くないけど…其方ら、他言無用なのら?』

「「「「は、ははっ!!」」」」


頭を下げる陛下達。


『本当は予言やお告げなんかはやらない事にしてるのら。この世界の精霊の決まりなのら。人間を我々の言葉で混乱させるべからずって事ら。神官なんかが精霊の言葉だと言ってしまえばなんでも通せるようになるのら。そういうのは良くないのら。だから今回は特別なのら』

「侵略されて崩壊って…大丈夫なの?」

『この国には全く影響ないのら。元々交流もないら?移民は来るかもしれないけど、それは他の国でも同じなのら。まぁ未来は変わるかもしれないから、あまり気にしない事ら』

「その未来ではどうなるかお聞きしてもよろしくて?」

『この1ヶ月で隣国が同盟を結び、一気に畳み掛けるのら。魔導具の技術が進んだ国が奴隷解放し、武力にたけた国が土地を制圧し、傷ついた帝国民を聖属性や光属性の多い国が介抱する。残りの国々などで城を攻め、呆気なく陥落…ってところなのら。ガルデリバルサ帝国はきっちり等分されて各国の領地となるのら』


うわぉ。

それが本当に実現したら、確かに僕達は手出ししなくても問題ないな。


「ねぇ、その後にその周りの国々がユージェリスを狙う事ってないのかしら?」

『周りの国々はガルデリバルサに愛し子が存在している事を知らないのら。其方らはこの前ユージェリスから聞いてるら?愛し子と言えばこのリリエンハイド王国、知識人と言えばスラース公国…この2つは有名だけど、ガルデリバルサについては知らなかったら?』

「…確かに、ユージェリスから報告は受けております。愛し子様と同等の存在が他に2国も、と…確かに知識人については存じ上げておりましたが、愛し子様と同じ存在だとは知りませんでした。ガルデリバルサについては…我々は知り得ない情報でございました。現在はここにいる人間のみ知っている内容になります。今後もユージェリスから齎された内容につきましては、国王、王太子、宰相のみに代々伝えていく所存にございます」


陛下が神妙な面持ちで答える。

それに対してリリエンハイドが頷く。


『それだけ軟禁して囲っていたと言う事ら。過去のガルデリバルサ帝国に存在した愛し子は、大体が若くしてこの世を去ってるのら。しかも墓も用意されず、その名を残す事なく』

「…その方々の親は…?」


父様が泣きそうな顔で尋ねる。

…自分を重ねてるのかな…


『…冤罪をかけられて、殺されるのら。そして愛し子のみ城へ回収されるのら。あの国では皇帝が正義なのら。誰も逆らう事はしないし、生まれてすぐに隷属の印を刻まれるから亡命も出来ないのら』

「隷属の印?」

『魔法印の事ら。帝国民には祝福の印だと言って刻んでいるが、あれは隷属の印なのら。皇帝に不利益な事をしようとすると、体が燃えて消える…そういう呪いなのら』


リリエンハイドが空中に文字を描く。

書いた文字は…《隷》。


「奴隷や隷属…従わせるって事ね…」

「胸糞悪いわね…確かあの字、神様に生贄を捧げるって意味じゃなかったかしら?ふん、皇帝が神様気取りなのね」


顔を顰めたベティ様が吐き捨てるように呟く。

まったくもって同感だよ。


『皇帝が死ねば隷属の印も消えるのら。帝国民は出来なくても、他国の人間が首を跳ねればいいのら。これで好転してくれればいいのら』

「そうだね、まさかそこまで腐った国だとは…」

『精霊ガルデリバルサは毎日のように泣いてたのら。でも我々精霊が出来る事なんてあまりないのら。この世界で生きる者がこの世界を統治する…それが正しい流れなのら』


少し重たい空気が流れる。

そう、精霊は何もしてくれない。

それを精霊(本人)から言われたのだ。

この国で生まれ育った陛下達からすれば、複雑な気持ちだろう。

まぁ僕的には前世の言葉にある『困った時の神頼み』って程度の感覚で、神様が直接何かしてくれるわけじゃないってわかってるから『あぁ、だろうな』って感じなんだけどさ。

精霊の力で物事が成り立ってるって思想が強いからなぁ、この世界って。

まぁガルデリバルサみたいに例外はあるけど。


『おっと、そろそろ時間なのら。我は帰るが、もう平気か?』

「うえ、もう?!えーと、えーと、また呼んでもいい?」

『頻繁は困るのら。精霊界に精霊がいなければ世界の均衡が崩れて、災害が起こる可能性があるのら。せめて半年から1年に1回にして欲しいのら』

「マジかよ、それは先に言って欲しかった」

『向こうと時間の流れが違うのはわかってるら?仕方ないのら』

「私達以外でも呼べるのかしら?」

『MPの消費が常人には足りないのら。多分2人以外は無理ら』

「り、リリエンハイド様!」


焦ったような声で、エドワーズ様が叫ぶ。

全員がエドワーズ様の方を向いた。


『どうしたのら?』

「…愛し子様とは何か、それを問う事は許されるのでしょうか?」

「「?!」」


エドワーズ様の言葉に、動揺してしまう僕とベティ様。

…そうだった、エドワーズ様は昔からそれを気にしていたんだった。

リリエンハイドは腕を組みながら迷ったように唸る。

暫くしてから顔を上げて、僕とベティ様を見た。


『…我から話す事は出来ないのら。だが…まぁ、2人が我らを許すのなら、聞けばいいのら。答えは胸の内に秘める必要があるけど、その覚悟があるのら?』

「…元より、覚悟の上です」

『なら我からは何も言わぬのら。真実は時として残酷に思えるだろうが、責めるなら我らを責めるのら。すまないのら、ユージェリス、ベアトリス』


眉を下げつつ、謝るリリエンハイド。


「…別に、怒ってないよ。あれは仕方のない事だったんだ」

「そうねぇ…今となっては、これで良かったとも思えるわ。あまり気に病まないで頂戴」

『そう言って貰えると嬉しいのら。其方らに幸多からん事を祈っているのら』


そう言って姿を消していくリリエンハイド。

威圧感が消えたと同時に、4人が崩れ落ちるように床に座り込んだ。


「だ、大丈夫ですか?」

「…ユージェリスの『ガード』があってアレか…よく2人は話してられるなぁ…」

「…私なぞ、殆ど声を発する事が出来なかった…」

「いやぁ…神々しいというか、凄い魔力だったな」

「ん?みんなにはどう見えてたんですか?」

「どうって…少女のようなシルエットではあったが、口元の動きがわかるだけで顔などなかったではないか。まさかユージェリスや母上には見えていたのか?」

「そりゃ…ゴスロリ幼女よね?」

「まぁ僕も最初はそう思ったけどさ」

「ごす…?」

「なんでもないわ、気にしないで」


ふむ…じゃあサルバト様達もヴァイリーが見えてたわけじゃないんだな。

見えるのは愛し子の特権か。


「…で、ユージェリス、愛し子様とはなんだ?」


…しまった、その質問残ってた!!

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