化粧水の威力
昨日は更新出来なかったので、今日は臨時更新です!
すみませんでした!
そしてサレスの薔薇が満開の時期に、アイカット様はご結婚なされた。
いくら親しいとはいえ、結婚式は出席できなかった。
この世界の結婚式って、意外と質素に簡単にやるんだよね。
教会の小さな専用の部屋で神父さんを精霊に見立てて愛を誓い、両親や兄弟にのみ見守られて夫婦となる。
これは平民も貴族も同じで、精霊の前で誓った愛は平等だよって事らしい。
でも貴族はその後の披露宴代わりのパーティーがやべぇの。
この前の王家主催の舞踏会ほどじゃないけど、規模がデカい。
そっちにはお呼ばれしたので、とりあえず仮面ありの正装で参戦しにきました。
まぁわかってたけど、知り合いは少ない。
父様やアレックス様達は仕事関係で呼ばれてるけど、挨拶回りで忙しいしね。
父親が追放になったから、うちの父様が父親代わりのような役割を担ってるらしい。
というわけで、挨拶回りも必要ない僕はとっても暇人。
お祖母様の言い付けを守って誰かしら数人と踊ろうかと思ってたけど、知ってる人がなぁ…
という事で、今回は社交パスする事にしました。
ちなみに本日の主役2人はかなり忙しく動き回ってる。
前世では座席ごとに回る以外、ずっと座りっぱなしでいいのにねぇ…
挨拶は帰る前でいいや。
「ユージェ」
「ベティ様、ご機嫌よう」
声をかけられたので振り向くと、優雅に微笑むベティ様が近付いてくるところだった。
あれ?陛下がいない?
どこ行ってるのやら…
「ねぇ、あれ、ユージェが何かしたんでしょう?」
「…あれ、とは?」
「しらばっくれないでちょうだい」
ベティ様に両肩を掴まれる。
ちょ、笑ってんのに目がマジで怖い!!
つーか心なしが段々肩への力強まってません?!
そんな気迫に押されたのか、僕達の周りは少しずつ人が離れていった。
「騎士団長の肌、ユージェが何かしたんでしょう?」
「…ベティ様、目敏すぎません…?」
「女を何年やってると思ってるのよ。貴方だってあれは気付くでしょう?」
「…まぁ、確かに…」
そう、今日のアイカット様は周囲が騒つくくらいの美人だった。
元々綺麗な顔立ちだけど、あれは多分、僕のお肌メンテナンスセットで素肌が綺麗になったからというのも大きいと思う。
というか、もしかして軽く粉叩いてるだけで塗り込んだりはしてないのでは…?
「ねぇ、何をしたの?私にはなんで何も言わないわけ?さっきあの子に聞いたら、貴方に聞けって言われたのよ?」
アイカット様め…
「別に、結婚祝いに化粧水と美顔器みたいなやつあげただけですよ」
「私には?!」
「ないですけど」
「なんでよ!!そろそろ私だってメイクでサバ読むの限界なんだからね?!」
…確かにベティ様は40歳近くてもかなりお若く見える。
まさかの化粧で誤魔化してたのか。
「というか、ご自分でお作りになればいいじゃないですか」
「貴方みたいにホイホイ魔法使える立場じゃないのよ、一応これでも王妃なんだし。大体の事は使用人達に任せてるから、ほぼ魔法使わない弊害でそんなもん作れないわ!!私、製薬スキルも調薬スキルもないのよ!!」
「マジっすか、意外です」
「考えてもみなさい、王妃が部屋に篭って何か魔法で作る…目立って仕方がないわ。説明出来ないものは作れないのよ」
それもそうか。
無詠唱擬きも広めてないから、なんの魔法を使ったか聞かれると困る時もあるんだよね。
「あと、単純にそういう知識も記憶もなくて作り方わからないわ」
「それですか。ぶっちゃけ僕らなら『綺麗になーれ』で作ればなんとでもなりますよ?」
「そりゃそうだけど、あんなに綺麗でもちもちの肌、しかも近くに寄ったら匂いも良いし…女なら欲しくなっちゃうわ。結構な人数の女性が騎士団長をギラギラした目で見てるの、わかるでしょ?」
「…見て見ぬフリしてました」
「さっきからあの子遠回しに質問攻めよ?『私のような者と結婚してくれた夫のために頑張ったんです』としか言わないけどね」
アイカット様…!!
すみません、まさかここまでとは…
女性の美に対する追求心って凄いよね。
気持ちはわかるけども。
「とりあえず、今度ご用意しますよ。匂いはどうします?」
「薔薇がいいわね。実物は用意した方がいいの?」
「抽出しますから、出来れば」
「次の週末に送るわ」
「僕が作ったって黙っててくれません?聞かれたら新進気鋭の作家の作品とか言っといて下さい」
「いいけど、どうして?」
「可愛い従者と未来の侍女を養っていくためのお金を稼ごうかなって。あそこまで反応いいならいけそうなので。大量に作る気はありませんが」
「あらあら、もう卒業後の進路について考えてるの?」
「ジャルネに行った後はこの国にいるつもりですしね。やる事考えとかないとプー太郎ですよ」
「ま、普段は働く義務のない愛し子だものねぇ。私は王妃だし、ローレンス様も当主だったから働いてたけど、その前の愛し子とかは暇でずっと研究したりしてたみたいだしね」
「なんの?」
「花よ、お花。貴方が好きなサレスの薔薇も、王城に咲き誇ってる沢山の薔薇も、殆どがその人の品種改良で出来た花なのよ」
「へぇ、知らなかった」
「一般には別の名前で発表したから。じゃないとその花を愛し子の恩恵、恩寵とか言って崇拝されたくないって事らしいわ。王家の人と愛し子しか知らない事だから、覚えておいてね」
「はーい」
「じゃあ、謎の他国から来た性別不明の調合師って事にでもしておきましょうか。名前は?」
「んー…ユズノキ」
「柚の木?」
「イントネーションが違うけど、意味はそれですね。僕のお忍びモードの名前がユズだから、最悪それを代役にすればいいかと思って」
「なるほど、愛称はユズだと。なら陛下には私から話しておきます。騎士団長にもね」
「よろしくお願いします」
なんか第4のキャラが出来ちゃったな。
ユージェリス以外に、ユズ、ユズキ、ジェリス、ユズノキ…名前はほぼ変わんないけどさ。
ユズとユズノキはいずれ統合だな。
ユズノキに至っては性別不明だし、なんなら暫くは女の子って事にしとこうか。
とりあえず売る方向なのは化粧水だけにしよう。
美顔器は『イレイザー』付与だし、まだ広めるものでもないでしょ。
…実験で、美顔器使えば魔法印消せちゃう事がわかってるから、まだ世には広められません…