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秘密がいっぱいヴァイリー王国

「さて、話を戻すか。とりあえずこれで王族は全員だ」

「え?あの、王妃様とかは…?」

「あぁ、私達の母は既に他界している。先日まで王妃と呼ばれていた者は、元々は平民だった血の繋がりもない私よりも年下の女だ」


え、初耳。

でも確かに王妃様の話って全く聞かなかったもんな。

年下ってどういう事?


「これも他国には説明していない事だが、あの男はずっと同じ女1人と暮らすのは嫌だとかほざいたらしく、見初めた女をすぐに王妃、または側妃として城に軟禁し、子を孕むまでは自分の側に置き、産んだら殺すか死ぬギリギリの状態に追いやってから王妃の座を交換していたそうだ」

「は?」

「うち、あんまり外に王族が出たりしてなかったから、王妃の顔が変わってもバレなかったんだよなぁ…どうしても出る時はベールかけてたし」

「この数十年で王妃になられた方は何十人もいらっしゃいますし、第何代とか数えてませんものね」


何それ、最低過ぎる。

女性冒涜も甚だしいわ。

…ん?という事は…?


「そう、我が王国の秘密その1。実は我々全員異母兄妹。国民は知っているが他国に話せない実情だ」

「他国には俺達2歳差って言ってるけど、実は俺と陛下は同い年。同時期に手を出してたらしいからな。これが秘密その2」

「私と兄達に年齢差があるのは、その間に寵愛を受けた女性が子を授かる前に自殺されたりして子がいなかったからですわ。秘密その3ですの」

「先日まで王妃をやらされていた方は最初は贅沢出来ると喜んでらっしゃいましたけど、途中から心が壊れてしまっていたようでした…」

「今回の事件でお兄様…陛下が、えっと、地位剥奪して、元の領地へと帰りました」

「久々にあの方が微笑む姿を見た気がするわ」

「私は初めてでした!」

「というわけで他国には『責任を取らせて王妃の地位を剥奪、平民落ちした哀れな元王妃様』って説明してある。つまり事実は秘密その4だ」

「あの男は精霊様の怒りを買い、その事で気を病み亡くなった事になっている。実際は毒杯を無理矢理飲ませてさっさと死んでもらったんだがな」

「これが秘密その5です」


…なんか、すっげぇ秘密を聞いちゃった気がする。

意外とみんな笑ってんのが逆に怖い!!

つーか秘密多過ぎね?!

まさかまだあるんじゃなかろうか!!

あ、ジーンも一緒に入室してたから、『俺聞いちゃって良かったの?』みたいな顔してる。

大丈夫、僕も同じ事思ってたから。


「…ヴァイリー王族、怖い…」

「失礼な、あの男がやった事で被害が甚大だったんだ。寧ろ殺さずに死ぬよりも辛い地獄を見せた方がいいと言う貴族の方が多かったんだぞ。特に我々の母だった人達も元は貴族、その親や兄弟は存命されているんだ。その人達の怒りたるや、我々では想像もつかんよ」

「サルバト様達は怒ってらっしゃらないので?」

「俺達は怒り…もあるけど、もうここまで来たらさっさといなくなって清算したい気持ちだったんだよ。もうあの男の事を考えたくなかったんだ」

「亡くなられた方達を思えば勿論複雑ではありますが…まず、『お母様』という存在を知らないのです。それが当たり前でしたから」


…うーん、結構闇が深いな。

この方達にとって、家族ってこの5人だけなんだ。

そこに辛うじてペネロペさんが入れたって感じか。


「好きの反対は嫌いではなく、無関心…まさにそれですね」

「あぁ、成る程、無関心か。それが1番しっくりくるな」

「そうだな、勿論嫌いではあるけど、今となっては無関心だ。いなくなってくれればどうでもいい。それもよりもこれからの未来が大事だからな」

「さすがはユージェリス様、博識でいらっしゃいますね」

「私達ももっと学ばなくてはいけませんね」

「勉強頑張ります!」


えっと、そんなあっさり完結しちゃっていいのか?

まぁいいならいいけど…


そこからは僕がジーンを軽く紹介した後、王女様方に案内してもらって城内を見て回った。

どうやら僕の事は先触れを出していたみたいで、どこでも好意的な目で挨拶をしてくれた。

…なんか、他国で愛し子が関係ないからか、対応が気安い感じがある。

ちょっと居心地いいなぁ。

ちなみに宰相様はお仕事中で忙しそうだったけど、僕が現れると態々手を止めてお礼を言ってくれた。


「ユージェリス様のおかげで、毎日気持ち良く仕事が出来て心身共に楽しくて仕方ありませんよ」


…心なしか、毛量が増えたように見える。

気のせいじゃないのかな…?

実は魔法で毛を生やす事は出来ない。

『グロウ』で伸びるのは元の髪があってこそなんだよね。

毛根が死滅してれば無理らしい。

なのに増えたって事は…ストレス性の脱毛症だったんじゃ…?

なんか悲しくなって、僕が趣味で作ってたポーションシリーズから育毛ポーションを1本渡しておいた。

これは飲むのではなくシャンプーに混ぜて使うものだ。

使い道はないかもしれないけど、そういう変なポーションを作ってた時期があったんだよね…

髪が元気になるものだと伝えたら、またお礼言われた。

効果が出たら連絡くれるかな…

使った事ないから、謎ポーションシリーズはお蔵入りしてるのいっぱいあるんだよね。

あと、宰相様の長男さんにも会った。

ふっさふさのおじ様だった。

次男さんもふっさふさだといいね、と心の中でテリューシャ様に伝えておきました。


その後は王族の皆さんと別れて、王都へと足を運んだ。

例の庶子制度があったからか、貴族と平民の差があまりないようで、結構気軽にお店の勧誘とか受けた。


「お貴族様、うちでお昼なんてどうだい?」

「いやいや、うちのが美味いっすよー?」

「というか、あんま見ない顔っすね!もしかして他国のお貴族様かい?」


…なんか、すっげぇ囲まれた。

貴族と平民に差があんまりないのは良い事だけど、これ僕以外の他国の高位貴族とかにやったら処罰される可能性もあるんじゃないか?

身分主義の人とか、絶対嫌がるよね。

お国柄といえばそうなんだけど…後でサルバト様に懸念事項として伝えておくか。


「リリエンハイド王国から参りました。最近のヴァイリー王国が色々と様変わりしたとお聞きしましたので、観光がてら寄らせていただいたんですよ」

「リリエンハイドの!それは歓迎しないとねぇ!うちが良い意味で変わったのは、おたくの国の侯爵子息様のおかげなんだよ!」

「へ、へぇ…」

「陛下達が色々とおら達に説明してくれてなぁ、名前は教えていただけなかったけんど、そっちのお坊ちゃんが前陛下を精霊様の代わりにしょっ引いてくれたらしくてなぁ」

「全く、侯爵子息様々だよ!お貴族様はその人知ってるかい?!」

「え、えーと、誰の事カナー…?」


こんな状態で『はいはぁーい、ぼっくでぇーす!!』なんて言えるかっ!!!

そしてジーン、そんな尊敬した目で僕を見ないの!!

違う意味で居心地悪くなったわ!!

全体的に大らかな人が大きいヴァイリー王国。

言い方を変えると細かい事を気にしない適当タイプが多いとも言える。

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