ヴァイリー王族
城の中へ入ると、正面から騎士の格好をした人が小走りで近付いてきた。
「ユージェリス様!お久しぶりでございます!!」
「あれ?もしかしてブルーノ?」
「はい!陛下付きの騎士隊に配属となりました!私が案内致しますので、サルバト陛下のいらっしゃる執務室までお越し下さいますでしょうか?」
「王座の間じゃなくて?」
「国としての正式な訪問でないのなら、自室辺りの方がユージェリス様の気が楽だろうと陛下が」
あらま、わかってらっしゃる。
堅苦しいのは苦手だからねぇ。
ブルーノにジーンを紹介しつつ、執務室とやらへ向かう。
なんか前に来た時よりも煌びやかさが減ったな。
いや、良い意味でね?
前はこう、ちょっと成金というか下品な煌びやかさだったんだけど、今は品が良いと言うか。
所々に飾ってある四季の花が綺麗だよね。
そんな事を考えていたら、どうやら執務室に着いたようだ。
ブルーノがノックして入室を確認する。
「騎士隊第4班、ブルーノです!ユージェリス様他お連れ様1名、お連れ致しました!」
「ご苦労、入室を許可する」
お、サルバト様の声だ。
ブルーノが扉を開けて中へ入れてくれた。
そこにいたのは…
「久しいな、ユージェリス殿。変わらず息災か?」
まさかのサルバト様以下王族4名!!
勢揃いじゃん。
あ、あと第2王子の恋人もいる。
サルバト様が近付いてきてくれて右手を差し出してきたので、そのまま握手を交わす。
どうやら一国の王と他国の侯爵子息と言うよりは、再従兄弟との対面としているらしい。
そして問題なく歩けてるから、随分回復されたんだな、良かった。
「ご無沙汰しております、サルバト様。この度はご継承おめでとうございました。お体も問題なさそうで何よりです」
「ありがとう、それもこれも貴殿のおかげだ。そうそう、改めて私の家族を紹介させてくれないか?」
「はい、よろしくお願いします」
「あの時は会話らしい会話をしなかったと思うが、私の弟で現在は王弟となったガルデンだ」
「ガルデン=バル=ヴァイリーだ。命を助けてくれてありがとうな、再従兄弟殿」
軽く着崩した服と碧眼の流し目に、無造作に遊ばせているサルバト様と同じ銀髪を見て、一瞬で『チャラい』と感じてしまった。
女性受けするだろうなぁ、だからあんな噂が流れるのか。
ちなみに回復されたサルバト様は結構がたいのいい感じで、ガルテン様は細マッチョな感じ。
硬派と軟派で対極な2人だなぁ。
そしてその横にいるのは、あの時泣きながらガルデン様に抱きついていた侍女さんだ。
今日はあの時みたいにボサボサの髪ではなく、緩やかに巻いた髪を片側で流して薄く化粧をし、品の良いドレスを纏っている。
「こちらはペネロペ、俺の妻になる人だ。式は来年を予定しているが、陛下が結婚してないのに王弟が先とは如何なものかと彼女から待ったをかけられているんだ。ちょうどいい、再従兄弟殿、なんとか説得してくれないか?」
「そ、そんな!!私は至極真っ当な事を言ったまでで…!!あっ、その、も、申し訳ありませんでした!!ペネロペ=サル=クワントリと申します!!先日はアイゼンファルド侯爵子息様には多大なるご迷惑をおかけ致しまして…それで、あの、ガルデン様の命をお救いいただき、誠にありがとうございました…あの時はお礼の1つも言えずに申し訳ありません…」
真っ赤にしていた顔を今度は白くさせて、僕に向けて謝罪してくるペネロペさん。
ん?王弟妃になるなら様付けか?
まぁとりあえずいっか。
「顔をお上げ下さい。あんな状態の恋人を見たら動揺するのも無理ないですよ」
「こいっ…!!」
あ、また真っ赤になった。
ガルデン様もニヤニヤしてるし。
『あー、コイツ本当に可愛いわぁ』とか思ってそう。
呆れた表情をしたサルバト様が次を促してくれた。
「こっちが私達の妹で、上からテリューシャ、シャーナル、ルーシャンだ。ユージェリス殿に歳の近いのはルーシャンだな、16歳だ」
「「「ご機嫌よう、ユージェリス様。先日はありがとうございました」」」
綺麗なカテーシーで頭を下げるしりとり王族3姉妹。
またお礼言われちゃったなぁ。
というか、本当に教育を受けていなかったとは思えないくらいしっかりしてらっしゃる。
「サルバト様からは皆様意欲的に学ばれているとお聞きしました。お勉強は楽しいですか?」
「えぇ、とても!知りたい事が山ほどありますの!…お恥ずかしい話、我が国には女性の通える学院は侍女養成所しかありませんでしたの。今は家庭教師を付けてやっておりますが、ゆくゆくは女性も通える学院を作る事が、私の夢ですわ」
テリューシャ様は目を輝かせて夢を語ってくれた。
それに同意するように妹君達も頷く。
「素敵な夢ですね。何かお力になれる事があったら教えて下さい。微力なりともお手伝い致します」
「ありがとうございます!」
「ただまぁ、テリューシャはこれから暫く忙しくなるだろうからなぁ。女性のための学院作りは当分先だろう。とりあえず男性のみの学院に女性の居場所を作る所からだな」
「忙しくなる?」
「宰相の所の次男と結婚する事になってな。歳も近いし、爵位を新しく与えて学術関係を受け持ってもらう事にしたんだ」
「成る程、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
うん、幸せそうで何より。
後で教えてもらったけど、どうやら幼馴染みらしく、相手は元々結婚願望がなかったらしい。
というのもこの国の女性が法律のせいとは言え賢くないのが不満らしく、他国に婿入りでもしない限りは結婚しないと言っていたそうだ。
それが今回の件で勉学OKになり、率先して学んでいたテリューシャ様を見直し、惚れてしまったそう。
テリューシャ様も自分に理解のある夫になるであろう幼馴染みさんなら、一緒に仕事が出来そうだと結婚を了承。
ラブラブというよりは、より良き仕事のパートナーって感じらしい。
「シャーナルとルーシャンはまだ相手探し中だ。あの男が娘を嫁にやる気がなさ過ぎて今更過ぎるがな…」
「失礼ですが、シャーナル様のお年は?」
「今年20歳になりましたの。行き遅れというわけではないですが、ちょうどいい相手もいなくて…」
「ルーシャンは先日貴国の王妃様から王太子殿の婚約者候補として会ってみないかと軽く誘われているんだがな」
「え、エドワーズ様の?」
「あ、あの、ユージェリス様…エドワーズ様とは、どのようなお方ですか…?」
おずおずと尋ねるルーシャン様。
そうか、エドワーズ様って婚約者いないって言ってたもんな。
僕は『ピクチャー』の魔法でエドワーズ様の写真を作り出してルーシャン様に渡す。
ちなみにこれは僕が作ったオリジナル魔法です。
「これがエドワーズ様です、エドワーズ=リリエンハイド王太子様。頭も運動神経もいいし、意外と女性には優しいタイプ。部下には厳しくても、仲良くなれば結構気やすい関係として接してくれます。私とは希薄な従兄弟というより親密な友人関係ですね」
「…エドワーズ様…これが…」
写真をじっくり見ながら、段々と頬を染めていくルーシャン様。
おやおや、中々いい感じですかな?
後でエドワーズ様にもルーシャン様の写真とか送りつけてみよっと。
ルーシャン様って雰囲気が義姉様に似てるところあるし、義姉様を褒めたりしてたエドワーズ様の好みに合うかもしれないよね。
ふふふ、面白い事になったなぁ。
ベティ様、良い話題出しましたね!




