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チキンステーキの破壊力

あけましておめでとうございます!

すみません、元日投稿出来ませんでした…

こんな私ですが、ユージェリス共々今年もよろしくお願いします!

僕が考えていると、後ろから料理人さんが顔を出して慌てたようにアイスリーさんへ告げる。


「あ、あのっ、私が説明します!この方は助けて下さっただけで、詳しい事を知っているわけではなくて…!」

「あぁ、そうなんですね。ではそちらの方はご同行は結構です。ですが後日お話を聞くかもしれませんので、お名前とお住まいはお聞きしても?」


逆に困るパターンやないかーい。

しゃあない、なんとか誤魔化すか。


「では紙をお借りしても?」

「こちらにどうぞ」


アイスリーさんから紙とペンを受け取る。

とりあえず『只今お忍び中なので、何かあれば義姉様経由でもなんでもご連絡下さい』と書いて、その下に『ユズ』と追記した。

それを渡すと少し眉を寄せてから、アイスリーさんが固まる。

ギギギギ、と油の足りないロボットの如くこちらに顔を向けたアイスリーさんの顔色は、お世辞にもあまりいいものとは言えなかった。


「…まさ、か…?」

「では、何かありましたらご連絡下さい」

「あ、ハイ…」


少し不思議そうな顔をする料理人さんとおばちゃんとアイスリーさんの部下。

僕はそのまま笑顔でお店を出る。

とりあえずアイスリーさん達がいるなら料理人さんは大丈夫でしょ。

にしても…まさかナタリーの予言が当たるとは思わなかった。

いや、僕に向けてのナイフではなかったんだけどさ。

寧ろ割り込んで刺されに行く方向だったけども。

にしても…僕が原因だったら、やるせないな。

どうしたらいいのやら…

領地にある店舗とかは行く度に見て回ってるから、行ってない店はない。

王都でも同じ事しないと、正体明かせないかな…

うぅーん…


後日、アイスリーさんから父様経由で報告がきた。

どうやらやはり、あの男の一方的な嫉妬のせいだったらしい。

料理人さんの周りが愛し子様に料理をお出ししたという事で囃し立て過ぎて、ジェラったと。

料理人さんは天狗になる事もなく、いつも謙遜していたのが余計に感に触ったんだと。

そんなんでキレてナイフ持ち出すんじゃねぇ!

僕がいなかったら知らないところで女の子を怪我させてたじゃないか!

どうやら事情聴取にはアイスリーさんとロイド様が当たったらしく、ロイド様が静かにキレたらしい。

ロイド様って実は短気だよね。


とりあえず、申し訳なさ過ぎた。

あの時はお弁当持ってって食べた後だからデザートにしたんだよね…

同僚の中で同じ事が起こっても困るので、学院長に連絡して協力してもらう事にした。

そしてある日の光の11刻過ぎ。


「…いっ、愛し子様?!」

「こんにちは、料理長さん。今日は皆さんの料理をいただきにきました」


愛し子、in、貴族科学食。

影分身に2限目は任せました。

学院長室で入れ替わったんだけど、学院長はすっごい驚いていた。

授業は教養だし、セリウス先生は手をあげなければ指名される事もないから喋らなくてOK。

ちなみに学院長は付き添ってくれてるので、僕の斜め後ろにいる。


「先日の事件、愛し子様にも伝わってしまったようですよ。それで心を痛められた愛し子様は、貴方達の料理をいただく事で不平等にならないようにと」

「そ、そんな…恐れ多いです…元はと言えば我々がシェアンを囃し立てすぎてアイツの不満を募らせたのが原因なんですから…」

「それでも、私の配慮が欠けていました。私自身、自分の身分について忘れてしまう事があるので、その影響を考えるべきだったんです。まぁあの時はお弁当を食べた後のデザート感覚だったので、今日は日替わりランチでもいただけたらな、と。私と学院長の2食お願い出来ますか?」

「よ、喜んで!!」


料理人達が笑顔で支度を始める。

ちなみにこの時間に来たのは、授業中で生徒がいないから。

騒ぎにしたいわけじゃないんだよねぇ。

だからルーファス達にも言ってない。

この前の事件については話したけど。

以下、その時の4人の反応。


『魔法で攻撃を阻止しなかったのは賢明だな』

『もう少しユージェの周りの影響について探っておくようにするねぇ』

『ユージェって本当にトラブルメーカーだね!次は女の人に刺されるんじゃない?』

『まぁ、本当に刺されそうに…次()お気をつけ下さいましね?』


待て、ニコラ。

なんで女の人に刺されるんだよ。

女性への対応でクレーム入った事ないぞ?

そしてナタリー。

なんで2回目がある前提なんだ。

君は本当に予言当たりそうで怖いんだから。

ルーファスは褒めてくれたし、レオは情報集めてくれるって言ってんのに、なんで2人はそんな事言うの?

僕、何かした…?


「お、お待たせ致しました!」


回想に耽っていると、料理長とこの前の料理人さんがトレーを運んできてくれた。


「ありがとうございます。先日は本当にすみませんでした」

「い、いいいいえ!!愛し子様が謝られる事など何1つありませんです!!」


吃りすぎでしょ。

愛し子ってそんなに遠い存在に思われてるのかなぁ…

舐められるのも嫌だけど、雲の上以上の人に思われるのも好ましくない。

どうしたらいいかねぇ…


出てきた日替わりランチはチキンステーキとサラダとコーンスープ、それに杏仁豆腐みたいな白い固形物だった。

チキンステーキは皮目から焼いてるみたいだけど、ちょっと焼きが足りないのかパリパリはしてない。

肉自体の味はいいけど、パンチが足りないなぁ。

サラダはコールスロー的なのだけど、酸味弱め。

コーンスープはまぁまぁ。

杏仁豆腐かと思ったら、牛乳寒天だった模様。

美味しいけど、みかんとか入れた方が僕好みだな。

というか甘さがちょっと足りない。

最近ではセイルもドリーも料理の腕が上がったから、屋敷ではこういう気持ちにはならなかったけど、平民科の学食で食べたりするとこういう気持ちになるんだよねぇ。

いや、悪くないよ?

どちらかと言えば美味しいんだよ?

ただねぇ…舌の肥えた元日本人にはちょっと物足りない…というか…


「ユージェリス様、いかがですか?」

「…そうですね、中々レベルが高いです。うちの屋敷の料理長も数年前はこんな感じでした」

「あら、ならまだ鍛錬の余地ありですわね。アイゼンファルド侯爵家の料理長と言えば、ここ数年で飛躍的に料理の腕が上がった事で有名ですもの」

「え、そうなんですか?」

「料理大会などに参加されてるそうですから」


知らなかったわ!!

えー…僕が作った料理、勝手に世間にお披露目してんのかな…?

でもレリックやシャーリーが止めてないって事は、同じものそのまま出して『領域の料理だ!』って言い触らしてないって事だよね?

流石にそれは僕に許可得てないから愛し子の名を語る詐称罪になるし、セイルだってやらないだろう。

多分創作料理で、僕の名前は出してないな。

帰ったら聞いてみるか。


「…私がアドバイスしてますからね」

「あら、ユージェリス様は料理を嗜まれるので?」

「えぇ。例えばこのチキンステーキ…若干の臭みは肉から出る水分が原因です。塩胡椒した後に数分置いてからペーパーで拭き取るといいですね。塩にはハーブを混ぜてもいい。あとは重石も欲しいし、ニンニクがあれば匂いも際立って…」


はた、と気付いて喋るのをやめる。

何故なら料理人の皆様が僕をガン見しながら固まってるから。


「…あの?」

「…愛し子様は、お料理されるので…?」

「えぇ、まぁ、嗜む程度には…」

「そ、それで、ニンニクがなんですか?」

「塩にハーブ?ど、どんなものがいいですか?」

「重石?料理に重石ですか?」


…さっきと違ってグイグイくるな。

料理の事となると目の色が変わってくるのね。


「えーっと…厨房お借りしても?」

「「「「どうぞ!!」」」」


即答かい。

まぁ許可を貰ったので見えないようにアイテムボックスからそっとエプロンを取り出して、何食わぬ顔で纏ってから厨房に足を踏み入れる。

ささっと肉と塩と胡椒が用意されたので、無言で包丁を握り下処理を始めた。

筋切りをして、表面積を平らくする。

両面に多めの塩胡椒を振りかけて揉み込み、トレーの中へ一旦放置。

待つ間にいつの間にか用意されていたニンニクを一欠片剥いてスライスしておく。

フライパンを油を投入してニンニクを入れる。

僕は焦げ付くの嫌だから火をつける前に入れるタイプです。


「《イグニッション》」


火をつけてじっくりとニンニクの香りを引き立たせる。

美味しそうな匂いが立ち込めてきたなぁ。

そろそろ肉もいい頃合いだから、一旦火を止めてニンニクだけ取り出す。

そして肉から出た余分な水分をペーパータオルで拭き取る。

ここで拭き取るから多めの塩胡椒だったんだよね。

もう1回『イグニッション』したら、今度は強火。

温まったところで皮目から焼いていくと、匂いが厨房全体に広まっていった。


「「「「おぉ…」」」」


そこかしらから感嘆の声。

ここでこのまま放置でもいいけど、僕は出来るだけカリッカリにしたいのだ。

フライ返しで押し付けてもいいんだけど、それだと疲れるから重石を使う。

ちょうどいいものが見当たらないから、ここは魔法を駆使!


「《エリア》《ウエイト》」


肉を範囲指定して、重さをかける。

さっきよりも大きな焼ける音が響いた。

僕好みのカリカリに仕上がったところで解除し、ひっくり返して中火。

あー、めっちゃいい焼き色。

じっくり中まで火が通ったら完成です。


「はい、出来上がり」


一口サイズに切って、ニンニクチップをちらしたチキンステーキの出来上がり。

今日は美味しくなーれのおまじないはしないでおきます。


「「「「…ごくり」」」」


皆さん、目がチキンステーキから離れません。

とりあえず楊枝を刺してから1人ずつに回していく。

なんか学院長も欲しそうな目をしてたからあげた。

全員が目を合わせてから、口を開けてチキンステーキを含む。


その後の光景は…なんかうちの屋敷でも見た事あるな。

全員が撃沈していた。

学院長まで崩れ落ちなくても…

チキンステーキ食べたい。

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