まさかの組み合わせ
「あ、あの、ルーファス様、宜しければ1曲お願い出来ませんでしょうか?」
おずおずと、僕の後ろから声をかけるフローネ。
はい、可愛い。
「ん?あぁ、ユージェと踊るんじゃないのか?」
「お兄様は目立ち過ぎるので…」
「「あー…」」
なんとも言えない目で僕を見るルーファスとニコラ。
なんだよ、しょうがないじゃん。
「そうだな、折角来て踊らないのも勿体ない。フローネ嬢、俺で良ければ是非」
「は、はい!」
意外と優しい目付きで軽く微笑むルーファス。
フローネはパァっと花が咲いたように微笑んで、そんなルーファスの手を取った。
「ルーファス…」
「ん?」
ルーファスの肩を掴む。
これだけは言わせてくれ…!!
「…フローネが欲しければ、僕を倒していけ」
「無理に決まってるだろ、馬鹿にしてるのか?」
ですよね、知ってた。
「冗談だよ…とりあえず、そっちの妹からは守ってやってくれ」
「それは命に変えてでも必ず」
めっちゃ真剣な眼差しで頷くルーファス。
いや、命はかけなくてもいいんだけど…
「ルーファス様…カッコいい…」
あぁ、ダメだ、フローネは完璧にルーファスにお熱だわ…
そして取り残されるニコラと僕。
「どうする?踊る?」
「やだよ、目立つもん」
「酷いな、1回踊ったじゃん」
「あの時より人が多いんだから、嫌!それに今はユージェがどれだけ目立つかって、よーっくわかってるからね!」
「あ、そう…」
ぐすん、ちょっと寂しい。
「お、坊ちゃん、ご機嫌よう!」
「あ、アレックス様」
「アレックス様!」
声をかけられたので振り返ると、アレックス様がフォーマルな格好にいつものローブを羽織った姿で立っていた。
今日の魔法師団は護衛や警備も兼ねて参加してるんだよね。
にしてもそうか、アレックス様はロイド様と仲がいいから、ニコラとよく会ってるのか?
結構親しそうだ。
「ご機嫌よう、アレックス様!」
「ロイドんとこの娘ちゃんじゃん、ご機嫌よう。2人は一緒に来たんですか?」
「ぶっぶー、違いまーす」
「僕は妹とですよ。今はニコラの同伴者の宰相子息と一緒に踊りに行ってます」
「あぁ、成る程。そういえば坊ちゃん、知ってました?この舞踏会の裏の目的」
「裏の目的?名目上はお祖父様達の帰還歓迎パーティーでしょう?」
「それは勿論です。実はね、裏の目的は騎士団長の婿探しなんすよ」
…あぁ、アイカット嬢の。
成る程、いつまでも未婚で公爵の地位には置けないって事か。
この舞踏会には殆どの貴族が集まってるし、相手を探すにはもってこいってか。
「今日の騎士団長は王妃様の命で、ドレスで着飾って舞踏会に参加するそうです。陛下達の護衛は左翼の副団長と新しい右翼の副団長が受け持つんだとか」
「新しい右翼の副団長様ってどんな方ですか?僕、まだご挨拶してなくて。あ、いや、左翼の方も挨拶したかと言われれば微妙ですけど…」
うん、会釈した程度なんだよね、左翼の副団長。
結構ゴツい人で…アイカット嬢は全く好みじゃないらしい。
イケメンってか、漢らしいって感じだしね。
「んー、新しい右翼は元々現騎士団長の補佐をしてた女性なんすよ。結構柔らかい印象の人で、騎士団所属には見えないタイプっすね。右翼ってのは基本女性が継ぐものですから、そのまま引き継いだそうです」
「へぇ、そうなんだ」
「ねぇねぇ、折角だから騎士団長様にご挨拶に行ってみようよ!あたしもお話してみたい!」
「そうだね、行こうか。アレックス様は?」
「それじゃ、ご一緒させていただきます。坊ちゃんの盾も兼ねてね」
アレックス様がわざとらしくウィンクする。
成る程、さっきの公爵とのやり取りを見てたな?
心配して来てくれたのか、本当に優しい人だな。
…そう言えば、アレックス様も独身だよね。
確かもう40歳になるってのに。
見た目は30代前半って感じの童顔で若々しいし、いつもの無造作な茶髪も今日はキチンとしていて、結構イケメンな部類。
系統としてはレオに近いけど、紺色の瞳が涼しげで目を引く。
地位も相まって引く手数多な気がするけど、結婚しないのだろうか?
「アレックス様は結婚しないんですか?」
「ぅえ?えっと…まぁ話がないわけじゃないんですけど、自分は一応平民なんで、色々と気苦労とかありましてね」
「じゃあアレックス様、あたしが結婚してあげますよ!男爵令嬢なら気後れしないでしょう?」
まさかのニコラの発言に、目を丸くする僕達。
ややあって噴き出すようにアレックス様が笑い出した。
結構アレックス様って笑い上戸だよね。
「そりゃ光栄だ!あーっはっはっは!」
「もー、笑い過ぎですよぉ!!」
「うひゃひゃひゃひゃ!!」
ポカスカ殴るニコラと、それを受け止めつつ笑いが止まらないアレックス様。
…あれ?意外と本当にお似合い?
いやでも、中々な歳の差だけど…
ニコラも見た目だけなら美少女タイプで大人っぽく見えるから、案外釣り合ってる…?
えぇ、まさかの展開ですかー?!