不穏な空気
校外学習も無事(?)終わり、ローグナーとの賭けの結果は勿論僕の圧勝。
ただローグナーは小さめの猪を狩ってきてたのでちょっとびっくりした。
ベテラン狩人達もロジェスを褒めていた。
それでもスピードで僕に負けて、悔しそうにしてたけどね。
その後、ハーパーさんって狩人が僕とローグナーを自分のチームに誘ってくれた。
筋がいいからってさ。
残念だけど、僕は丁重にお断りした。
ローグナーは少し考えるってさ。
あ、ちなみにアッシュ君は断トツのびりっけつ。
制限時間ギリギリでネズミ1匹って…ねぇ?
恨めしそうに睨まれたけど、気にしませーん!
そして週末、今日は王家主催の舞踏会。
なんとなんと!!
遂に昨日!!
お祖父様達が帰って来られたそうなんです!!
それをお祝いするパーティーなんだとか。
まぁ1週間くらい滞在したら、また出ちゃうらしいんだけどね。
全員昨日から王城に泊まってて、まだ会えてないんだ。
楽しみに思いつつ、今日は仮面なしの愛し子正装で臨みます。
いや、本当はしたいんだけど、父様と母様に折角だからと止められたんだよね。
アリス嬢とか、ユズキを知ってる人がいる場所だと隠したいんだけどなぁ…
「お兄様、どうかされましたの?」
「ううん、なんでもないよ、フローネ」
いかんいかん、考え事してたらフローネに心配させちゃった。
今日の僕の王城入場時の同伴相手はフローネだ。
兄様は義姉様がいるからね。
僕とフローネには特定の人がいないからなぁ。
…え、フローネ、本当にいないよね?
もしかしてお兄ちゃんに気を使ってる?
「「ユージェ!」」
「やぁ、ルーファス、ニコラ」
「ご機嫌よう、ルーファス様、ニコラ様」
「久しぶりだな、フローネ嬢」
「ご機嫌よう!」
会場に着くと、ニコラを伴ったルーファスと遭遇した。
ちなみにレオはナタリーと一緒らしい、どこかにいるかな?
「というか、ニコラで良かったの?同伴者」
「え、それどういう意味?」
「妹よりかはマシに決まってるだろう、意外と公式の場だとまともなんだぞ?ニコラは」
「え、ルーファス、バカにしてる?」
「噂の妹さんは?」
「父上が外出禁止令出して部屋に軟禁してる」
「なんだそりゃ」
「お前の家に先触れなしに勝手に行こうとして父上の怒りを買ったんだ」
「まさかの原因僕かよ」
「ねぇ、まさかの全無視?」
はい、ニコラは全無視です。
にしても妹さんは相変わらずだな。
いっそ直接僕が言った方がいいのか?
いや、ピンク令嬢と同じく勘違いタイプだから、言っても無駄かぁ…
「ねぇってばぁ!!」
「悪い悪い、だけどな、ニコラ。意外と父上はニコラを気に入ってるんだぞ?じゃなきゃ悪いが男爵令嬢と同伴なんて許しては貰えないからな」
「うー…まぁそっか、それもそうだよね」
そう、公爵子息と男爵令嬢の組み合わせなんて、ナタリーご愛読の乙女ゲー擬き小説みたいだよね。
まぁうちの場合は両家公認(?)だし、陛下達も別に何も言わない。
というか、もしこれがちゃんとした恋愛感情だとしても全然許可してくれそう。
まぁ恋愛感情じゃないんだけどさ、多分。
頭撫でてるところなんて、側から見たらただイチャついてるようにしか見えないけども。
「ご、ご機嫌よう、ユージェリス様!」
呼ばれたので振り返ると、そこにいたのはチェルシー嬢だった。
そしてその後ろにいるのは…恰幅の良いおじ様。
色合いからして、チェルシー嬢の父親…カルデラ公爵だろうか。
これがメイーナの父親…ねぇ?
まぁ確かに若い頃はイケメンそうな雰囲気はあるけど…
「…ご機嫌よう、チェルシー嬢」
「本日はユージェリス様もいらっしゃってましたのね!よ、よろしければこの後1曲お願い出来ますでしょうか…?!」
「あー、そうですね…タイミングが合えば、でよろしければ」
「も、勿論ですわ!」
「良かったなぁ、チェルシー。まさかお前が愛し子様と関係を持ってるとは思わなんだ!」
おい、言い方考えろし。
関係を持ってるって人聞きの悪い。
「チェルシー、良ければ紹介してくれないか?」
「あ、えっと…」
驚いた表情をしてから、少し困ったように僕を見るチェルシー嬢。
どうやら父親とここに来たくはなかったらしいな。
撒いてきたのに尾けられていた、って感じか。
僕と初対面で話すには仲介が必要になる。
父様を介してでないとすると…あんまりいい立場の人とは言い難いかもな。
あ、ちなみに父様と母様は王城に着いて早々にお祖父様達のところへ向かった。
兄様と義姉様はダンスホールで軽く踊ってるところ。
寧ろそれを観に行きたい。
さてさて、どう切り返すもんかなー…