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先輩の恋路

それから時間は経ち、漆黒期明け。

学院に行くと、やっぱり女生徒達からキャーキャーコソコソされた。

でもまぁ、ちょっと落ち着いたかな?

いつも以上にもさっとした見た目にしといたし。

そういえば、漆黒期中に会ったルーファスとレオの反応は酷かった。

レオが爆笑して呼吸困難になるのはなんとなく予想付いたけど、まさかルーファスが目を輝かせて僕を尊敬するような目で見てくるとは思わなかった。

なんでも例の絵本が子供の頃大好きで、あの騎士に憧れていたらしい。

髪色は変えられないから、せめて言動は男らしくいようと思ったのが今のルーファスの性格を作る元になったとか。

だから初めてレオに会った時、黒髪で心底羨ましかったそうだ。

なんじゃそりゃ。


まぁそんなこんなでやっと今日、先輩達に会えるわけで。

とりあえず授業が始まる前にマーロ先輩の教室まで行ってみた。

扉をノックしようとしたら…


「ユズキ!」

「マーロ先輩」


後ろから声かけられた。

今登院したのか、意外と遅いな。


「ユズキ、今お前が教室に入るとヤバイ」

「え?」

「平民科の女は貴族と違って、コソコソせずに堂々と寄ってきて揉みくちゃにされるぞ。俺はさっき揉みくちゃにされて1回逃げてたところだ」

「おぅ…」


成る程、休み前に教室に覗きに来てたのは殆ど貴族科だったし、貴族の前で平民科が騒ぐわけないか。

とりあえずマーロ先輩の指示で場所を移動する事になった。

一歩下がって後ろを歩いていると、なんだかヒソヒソがザワザワに変わってった。

…例の王子様と騎士みたいだって事かな?


暫く歩いて、階段の踊り場まで来た。

時間的に殆ど人が通らなくなったもんね。


「ユズキ、この前は助けてくれてありがとうな。俺は魔法が苦手だから、正直かなり助かった。師長様達もかなり強い魔法だったって教えてくれたから、ユズキがいなかったら俺達死んでたかもな…」

「いえいえ、先輩方がご無事で何よりです。殴られたと聞きましたが、お体に支障はありませんでしたか?」

「あぁ、特になんともない。というか、ユズキもあの後王城に呼ばれたのか?殴られたの知ってるなんて…」

「あぁ、えっと、第7師団長様が聞き取りに来られて、その時に…」

「あぁ、第7師団長様か!そう言えばいたなぁ」


危なかった、まさか愛し子として聞きに行ったなんて言えないや。

あ、そう言えば。


「あの、いつからアリス様とお付き合いを?」

「ぶふぅー!!!!」


僕の発言に、噴き出して崩れ落ちるマーロ先輩。

え、なんか聞いちゃいけない事だった?


「…実はな、ユズキ。俺達は付き合ってないんだ」

「はい?」

「…お慕いしてるのは、認める。ただ告白なんてしてないし、あの場面であんな事言ったのは俺に標的を向けたかったからだ」

「マジっすか」

「大マジだ」


そりゃ僕も知らなかったはずだわ。


「…王城に向かう間、かなり気まずかった…」

「でしょうね…」

「んで、俺は先に帰ったんだけどさ、漆黒期の間にアリス様と親御さん…プレッシェン子爵様と子爵夫人が寮に来たんだ」

「マジっすか」

「大マジだ。それでまぁ礼を言われて、帰る直前に『うちの娘をどう思っとるのかね?』って…」

「…なんて答えたんですか」

「…ちゃんと言ったよ、『お慕いしてます』って。そしたら『娘は子爵令嬢だ、簡単には渡せないぞ』って言われて…」

「それで…?」

「…『必ず騎士爵を賜ってお迎えに行きます』って言っちゃった…」

「…騎士団に入って何か手柄を立てないと騎士爵は貰えませんよ?スタンピードでめちゃくちゃ魔物を狩るとか…」

「知ってる、テンパったんだ」

「時間がかかるかもしれませんね…それで、アリス様はなんて?」

「…真っ赤な顔して、『お待ちしてます』って…超可愛かった…」


涙目のマーロ先輩は、その時の事を思い出したのかニヤニヤし始めた。

うーん、しょうがないなぁ…

マーロ先輩が騎士団に無事入れて、スタンピードが起っちゃった場合は騎士爵取れるように手伝ってあげるかねぇ…


「あ、そうだ、子爵様達がユズキにも礼を言いたいってさ。家知らなかったからアリス様経由で暇な日とか教えて欲しいって」


…それはまずいな。

アリス嬢は社交界で会った事ないけど、プレッシェン子爵はもしかしたらどっかでニアミスしてるかも。

そうするとバレる可能性が高い…


「あー、えっと、僕は何もしてないから…マーロ先輩からアリス様へお心だけいただきますって伝えて貰っていいですか?」

「そりゃいいけど…俺はアリス様との交際認めて貰うって事で謝礼金とかなかったけど、ユズキはそうはいかないだろ?それに俺もお礼したいんだけど」

「いいんですよ、仲良しの先輩を助けたってだけなんですから。じゃあマーロ先輩とアリス様個人にお願いがあるんですけど…」

「いいよ、なんだ?」

「これからもずっと仲良くしてくれますか?僕がどこの誰であろうとも(・・・・・・・・・・)


僕の言葉に少し首を傾げてから、マーロ先輩はいつもの人懐っこい笑顔を浮かべた。


「おう、そんくらい当然だろ?いつまでも俺の可愛い後輩だぜ!」

「ふふ、ありがとうございます」

「あ、でも犯罪犯したからダメだからな?犯罪者とは仲良くやれねぇから!」

「しませんよぅ!!」


全く、僕をなんだと思ってるんですか!!

やるわけないでしょうが!!

言っとくけど、フラグじゃないからね?!

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