平和な日常と変化の休日
ベネッタさんに挨拶に行った日から、随分穏やかでいつも通りの日常を過ごせた。
翌日の放課後に追試を受けて簡単に合格し、晴れて第2学年として再スタートを切る事が出来た。
久々にデイジー達にも会って心配かけた事を謝罪したり、学院でアリス嬢やマーロ先輩にも会った。
どうやらアリス嬢は例のアイカット嬢の義弟に今でも言い寄られてるらしいんだけど、父親が騎士団長を辞めて姉が爵位と一緒に継いだという事が相当堪えているらしく、あまり強く言わなくなったそうだ。
このままだと彼、爵位なしの平民になるしね。
そしたらどこかの貴族長男に嫁げば貴族のままでいれるアリス嬢よりも格下になるわけだし。
比較的落ち着いた日々を送れてるようで何よりだった。
そんなこんなで、今日は6雷14日。
そう、明日は僕の誕生日なんです!
去年は誕生日前に精霊界行っちゃったからね…
明日でちゃんと14歳になります!
成人もしてないし、僕は愛し子とは言え次男だから、大々的なパーティーをやる必要はない。
なので家族と友人達を呼んで、夕方から身内だけでお祝いする事になった。
勿論友人達とはいつもの4人と令嬢3人とダティスさんだ。
メグ様とエドワーズ様もお呼びしようか迷ったけど、お2人とも公務で忙しいらしい。
ただ手が空いたら顔を出してくれると言っていたので、ちょっと楽しみにしてる。
あ、ちなみに家族にはルーナ義姉様も含まれます。
義姉様はこの前の漆黒期から侯爵領の屋敷に住んでいる。
1〜2年の期間に領地や経営の事など色々学んで、夫人教育が終わり次第、ロイ兄様と結婚するのだ。
そして20歳になったら兄様は父様から爵位を継ぐ。
暫くは宮廷魔術師長補佐として兄様は魔法師団で頑張り、認められればそっちも譲る事になるそうだ。
…多分だけど、父様と陛下と一緒に旅をしそうだよね、お祖父様達みたいに。
そうそう、実はお祖父様&お祖母様ご一行についてなんだけど、エドワーズ様の継承の儀に間に合わなかったんだよね。
なんか、例の前王妃様がちょっとやらかしたんだかなんだかで…
詳しい事は聞けなかった、父様達のあの表情を見たら。
未だに帰ってきてないけど、もう少ししたら1回帰ってくるらしい。
帰ってくる時には理由教えてもらえるのかな?
「ユズキ、なんやご機嫌やん。この後なんかあるん?」
帰りの支度をしてる時に、突然ロジェスに声をかけられた。
僕そんなにニヤニヤしてたかな?
「今日はないけど、ちょっとね」
「面白い事あるなら教えてーな?あと、また勝手にどっか行かんといてな?」
あ、目が笑ってない。
そこまで心配かけちゃったのか、僕は…
「…暫くどっか行く予定はないよ。そうじゃなくて、もうすぐ誕生日なんだよ」
「え?ユズキの?いつ?」
「あし…あ、明後日!」
いかんいかん、ユージェリスの誕生日言ったらバレるかもじゃん!
「ホンマかユズキ!すぐやないかい!しかも学院休みやし!」
「あ、あははははー」
ごめん、本当は明日なんだ。
「せや!ユズキ、明後日暇なん?」
「え?まぁ予定はないけど…」
「ならユズキん家遊びに行くわ!みんなで祝ったる!」
「…わ、わーい、嬉しいなぁ!」
…家?家?!
まずいな、王都にある仮の家、殆ど荷物とかないんだけど。
なんせ朝と夕方に通過するだけだし…
今日、適当に仕入れて運び込んどくか…
「ユズキ、1人暮らしやんなぁ?」
「そうだよ」
「寮に入らんかったの?そしたら俺らとも一緒やったんに」
そう、実は学院には寮がある。
貴族は王都内に大なり小なり屋敷があるからそこから通うけど、平民で遠くから来てる子のために寮が用意されてる。
ロジェスとローグナーは入寮してて、他にも何人かいるんだったかな?
ちなみにジーンは例の裏山の抜け道使って通学してたそうで、寮には入っていなかったらしい。
アイゼンファルド侯爵領の民で今、学院に通っている子はいない。
僕の場合は寮に住まないから必要なかったんだよねぇ…
「あー、えっと、今後も1人で自立していかなきゃいけないから、その為にも練習がてら1人暮らしする事になったんだ。学院生の為なら、めちゃくちゃ格安で借りれるし、領からの援助もあるからね」
「へぇ、アイゼンファルド侯爵領ってそんな制度あったんか。そら1人暮らしするわな」
嘘です、そんな制度ないです。
領ってか侯爵本人からの援助です。
…兄様にそういう制度提案してみようかな。
そしたら学院目指す子も増えるかもだし。
まぁうちの領地からなら一応通えるんだけどね、ジーンみたいに。
「なら、明後日ユズキん家行くな!ハイド大広場の噴水前に集合でええか?」
「うん、いいよ」
「よっしゃ!期待しててなぁ!あ、ローグナー!あのさぁ!」
ロジェスがローグナーのところへ行く。
どうやら誘ってるらしい。
何人くらいになるのやら…
そんな事を思ってると、後ろから制服の裾を引っ張られた。
振り返ると、メイーナが見つめていたので首を傾げる。
「どうかした?」
「…忙しいんじゃないの?」
どうやら、僕が影武者説を信じてるらしい。
そうだね、愛し子様の誕生日は明日なんだし、明後日も忙しいんじゃないかと思うよね。
ところがどっこい、別に用事は何もないんだよなぁ。
「特に予定もないよ。メイーナも来てくれるの?」
「…行く、祝う」
「ありがとう、待ってるね」
笑ってからメイーナの頭をポンポンしておく。
少し嬉しそうに頬を染めてから、キュッと眉間に皺を寄せた。
「…このテクニックも、参考にする」
まだお店でホスト紛いな事してんのかい!!




