王太子継承の儀
メイーナと分かれて、急いで仮の家に帰宅。
そこから『ワープ』して、シャーリーが用意してくれていた服に着替える。
今日は白を基調とした軍服のようなデザインで、愛し子として学院に行った時の服と似ていた。
それにいつものマントと仮面。
髪型は愛し子仕様。
ジーンには真っ赤な顔してカッコいいと褒めちぎられました。
あ、ちなみにジーンは今回お留守番です。
まだ従者としての教育が始まってないからねぇ。
そういえば、ジーンはお母さんであるベネッタさんには僕の事を言ってないらしい。
とりあえず合格したから、王都の侯爵邸に住み込むとだけ伝えたそうだ。
めちゃくちゃ喜んだらしいよ、大出世だって。
今度挨拶に行こうかなぁって言ったら、卒倒するかもしれないって言われた、解せぬ。
そんなこんなで、支度が終わったので王城に向かった。
約束なので、『ワープ』は使いません。
父様と母様は先に行ってるとの事なので、シャーリーと馬車で追いかける。
御者はファーマ、いつもすまないねぇ。
王城についたら、ルリエルさんが出迎えてくれて陛下の執務室横の談話室?に通された。
前に僕が休んだソファに座って、淹れてもらった紅茶を飲みつつ誰か来るのを待つ。
みんな今日は忙しいから、呼びに来るまでは待機です。
シャーリーも母様のところへ向かったので、マジで1人だわ。
そんな事をボーッと考えていたら、扉がノックされた。
「すまん、待たせたな、ユージェリス殿!」
「ジェイク様、ご無沙汰しております。大丈夫ですよ、今日はお忙しいでしょうし」
少し髪が乱れた宰相様が飛び込んできた、ちょっとびっくり。
あまりにも忙しいんだねぇ…
「あぁ、久しぶりだな。息災か?」
「えぇ、気分は数日ぶりなんですけどね。ジェイク様もお元気そうで何よりです」
「報告は受けている。なんともまぁ、不思議な世界なのだな、精霊界というものは…それで、今日の段取りについてなのだが…」
ソファに座り、段取りの話をする宰相様。
うーん、めんどくさい。
しかも僕の出番があるとか。
どうやらベティ様と2人で『愛し子の祝福』ってやつをエドワーズ様にするらしい。
まぁ、ラウレアちゃんにしたやつだよね、平たく言えば。
クラスメイト達に声でバレなきゃいいけどなぁ…
そんな不安を抱えつつ、ついに本番です。
会場は玉座の間、王城で1番広い広間になる。
2段ほど高い位置にある玉座に陛下が座り、アイカット嬢は新たな騎士団長として陛下の右側、父様は宮廷魔術師長として左側に立ち並ぶ。
アイカット嬢の右横にベティ様やメグ様達が並んで座っている。
僕の居場所はなんとベティ様と対になるように、父様の左横だ。
いやぁ、目立つねぇ…隣が父様で少しほっとしてるけど。
そして玉座に続くレッドカーペットの両側には、王国の貴族当主達とその伴侶達が立ち並ぶ。
玉座に近い順から高位の爵位持ちだ。
宰相様は貴族達より1段高い位置にいた。
母様は…うん、元王女だし、公爵家とほぼ同じ位置にいるね。
シャーリーとレリックは他家の従者達と同様に、壁際で待機してる。
…なんかドキドキしてきた。
ちなみにこの様子は王国の各地に設置された特殊なスクリーンに配信されている。
そういう魔導具があるんだってさ。
王国民の殆どが見てるらしい。
「静粛に!これより、第1王子エドワーズ様の王太子継承の儀を執り行う!皆のもの、敬意を!」
宰相様の言葉に、貴族達が全員頭を下げる。
女性はカテーシーのまま待機、足が辛そうだね…
僕や王族の方々はしなくていいと聞いたけど、なんかしなきゃいけない気がして不安になるわ…
ファンファーレとともに、音楽が鳴り響く。
そうして開かれた扉から、エドワーズ様が胸を張ってレッドカーペットを進んでくるのが見えた。
おぉ、全く緊張してない風に見える!
堂々としていて、なんか王太子に相応しい風格があるんだよねぇ、エドワーズ様って。
なんか弱点とかないのかな?
レッドカーペットを進み終え、段を上がらずにその場で跪く。
「皆のもの、面を上げよ」
陛下の声が響く。
全員が元の体勢に戻った。
「今日は我が息子エドワーズの王太子継承の儀への参列、誠に感謝する。本日をもって王太子となるエドワーズのため、今後とも良き理解者となり、また国の為に尽力してくれる事を願う」
「「「「精霊様の名にかけまして、必ず」」」」
「うむ、聞き届けた」
おぉ、全員が声を揃えると圧巻だな!
「それではセテラート陛下より、エドワーズ王子様へ継承契約を始めます」
継承契約とは王族が使える特殊魔法で、『貴方は王太子ですよー』と認めて、手の甲に契約印を刻む事を言うそうだ。
んで、王位を継ぐ事になったらその手の甲の印が背中に移動するらしい。
陛下の背中見た事ないから知らんけど。
陛下が王座から立ち上がって1段降り、エドワーズ様が立ち上がって1段上る。
陛下の右手にエドワーズ様の右手が重ねられて、貴族達の方へ差し出された。
「…《ーーーーーーーー》!」
…聞き取れない、謎の音。
あれは、リリエンハイドが発した真の精霊語と同じだと感じた。
陛下はあれが発声出来るのか。
今度意味について聞いてみようかな…
そんな事を考えていたら、会場が眩い光に包まれた。
目が慣れて周りを見回すと、他の貴族達もキョロキョロしてた。
そうだよね、びっくりしたよね。
挙動不審になってない人達は、陛下の王太子継承時代を知ってる人かな?
「…継承はなされた。今この瞬間をもって、エドワーズ=リリエンハイドを王太子と認める!!」
「「「「おめでとうございます、エドワーズ王太子殿下」」」」
おぉ、またもや圧巻。
みんな器用に揃えるなぁ。
あ、陛下が王座に戻って、エドワーズ様も1段下がってから跪いた。
「続いて、精霊の愛し子様方の祝福!」
おぉ、僕の出番か。
宰相様の言葉を聞いて、スッと席を立つ。
反対側のベティ様も立ち上がり、アイカット嬢から僕とお揃いのマントを受け取った。
そのまま1段下がり、ベティ様が左手、僕が右手をエドワーズ様に翳す。
うぅ、間違えずに言えるかな…