初めての錬成
土日の方が出かけたりしてて更新が滞り気味です…
さて、ゴミ箱(仮)から取り出したるは、傷付いたペンダントトップと千切れたペンダントチェーン。
結構大きめで、ペンダントトップには宝石が付いていた。
…なんだろ、空色って感じ。
あ、僕の瞳の色と同じだ、なんて名前の宝石だろ。
こういうのって鑑定スキルってやつでわかるのかな?
とりあえず、宝石をじーっと凝視してみる。
【パライバトルマリン】
ほう、そんな名前なのか。
知らなかったけど、覚えておこう。
何作ろうかな…またペンダントにするのも芸がないし…
ピアスとか?いや、穴空いてないわ。
…あ、イヤーカフにしよう!
この世界にあるのか?
イヤリングはありそうだな、母様付けてたっぽいし。
付与する魔法はどうしよう。
自分用だし、とりあえず身を守るものが良いよね。
「…さて、読んだ事ある人なら1度は真似た事のあるアレをやってみるか…フフフフフ…」
行くぜ!!
意気込んで、両手をパーンと叩いて、素材を置いた机を叩く。
…あれ?何も起こらない。
なんで?!
…そりゃそうだ、なんも考えてなかった。
そうだよ、ベティ様言ってたじゃん。
意味のある『音』が起動条件だって。
思いっきりハ○レンの事しか考えてなかった。
…この方法だと毎回そっちに意識が引っ張られそうだな。
…辞めよう、この方法。
指パッチンがやりやすそうだわ。
でもあの作品内で指パッチンのやり方もあった…
いかんいかん、もう忘れるんだ。
「…とりあえず普通にやろう、まずはね」
出来上がる形をイメージして…よし!
「《アルケミー:リフレクション》!」
ズバリ、反射魔法!
魔法攻撃だろうが物理攻撃だろうが、なんでも反射して相手に食らわせる伝説級の魔法らしい。
ちなみに魔法による精神攻撃とかにも有効との事。
消費魔力が半端ない(1回につきMP3000)から使える人は極僅か。
でも僕には関係ないね、今でも3回は使える。
これから成長していけば、もっと使えるようになるでしょ。
でも今のうちに魔導具作っておけば、壊れるまでは魔力消費なしで何回か使える!
「いや、何回も使うような機会がある方がおかしいか」
ノリツッコミをしつつ、僕は机の上を確認した。
そこにあったのは、イヤーカフが2つ。
シンプルなシルバーで、耳に挟むタイプにした。
挟む部分にはちょっとしたデザインレリーフをあしらって、そこから付属する短いチェーンの先には、小さな月のモチーフ。
例のパライバトルマリンが縁に散りばめられてて、キラキラ光る感じになっていた。
…結構いい感じに出来たんじゃない?
カッコ可愛い感じで、僕に合いそう!
でも2つも出来ちゃったなぁ、材料がちょっと多かったのか…
そういえば、多重付与って出来るのかな?
さっき見た説明にはなかったけど…
でも付与魔法の言霊の雰囲気を見る感じだと、1つにつき1個ってのが普通なのかな。
または試した人がいなくて、それが定説になっているか。
はたまた錬金スキルも付与スキルもレベルが高くないと出来ないとか。
…せっかくだし、試してみるか。
「えっと…出来るかな。《グラント:バリア》!」
『バリア』とは、これまた伝説級の魔法。
MP消費は3500とえげつないが、悪意のある相手からの如何なる攻撃(口撃)も通す事のない、不可侵の透明な壁を相手と自分の間に出現させる。
ちなみに、セクハラとかそういう時にも反応するそうです。
つまり相手に悪意があるかどうかを判定する事が出来ると言える!
超便利じゃね?
…いつものキラキラした白い光がイヤーカフに吸収されていった。
せ、成功かな?
教えて!鑑定スキルさーん!!
【領域のイヤーカフ×2→『リフレクション』『バリア』付与済み。最初に付けた者にのみ効果を発揮する ※所有者が死亡しない限り譲渡不可】
…あ、本当に国宝級っぽいもの出来ちゃった☆
伝説級が2つも付与とか、やべぇ。
【付与スキルを取得しました】
はい、スキルゲット。
それはいいとして…2つかぁ。
よし、決めた。
「リリー!!」
「お、お呼びですか?!どうかなさいましたか?!」
僕の大声に驚いて、リリーが焦ったように入室してきた。
しまった、驚かせちゃった。
「ごめんごめん、ちょっと声が大き過ぎたね。あのね、ちょっとしゃがんでくれる?」
「はい?」
不思議そうにしながらも、リリーは僕の目の前でしゃがんでくれた。
5歳児にお姉さんの身長は高過ぎるのです。
リリーは髪を後ろにお団子にして纏めてるから、耳が丸見えだった。
その右耳に、出来たばかりのイヤーカフを嵌める。
おぉ、女の子にも似合うね!
「ゆ、ユージェリス様?あの?」
「うん、可愛い!リリー、これ、外しちゃダメだよ?僕とお揃いなんだから!」
これでリリーも食べ物に釣られて変な人に付いていかない!
にぱーっと笑顔で念押しして、僕も自分の左耳に付ける。
確か付ける耳に意味があったはずだからね。
僕の耳に光るイヤーカフを見て、リリーは驚いたように立ち上がり、部屋にある鏡に向かって小走りで近付いた。
「…これ…」
「さっき作ってみたんだぁ、魔導具。綺麗でしょ?あ、もしかしてそういうの付けちゃいけないとか?!それならシャーリーには僕から言っておくから…」
「いえ、ユージェリス様からだと伝えれば大丈夫だと…それより、なんて綺麗なんでしょう…素敵…」
少し頰を赤らめながら、イヤーカフに触れるリリー。
うんうん、喜んでもらえてよかった!
「…ありがとうございます、ユージェリス様。私、絶対外しませんから。ずっとずっと、大切にします」
「うん、もし外さないとダメって誰かに言われたら僕の名前出していいし、それでもダメならとりあえずポケットにしまって持っててね」
「はい、精霊様の名にかけて、必ず」
「聞き届けたよ」
暗記スキルで読み込んだ時に、常識を調べておいてよかった。
その時に知った事だけど、『精霊様の名にかけて・聞き届けた』とはこの世界の指切りげんまん的な意味合いの、約束の際に交わす言葉らしい。
約束する側とされる側の誓いの言葉。
ぶっちゃけただの口約束じゃね?と思ったけど、この世界の定義から言えば重いものだ。
意味のある『音』は魔力を宿す、つまりこの世界の人達は気付かないうちに微弱でも魔法で約束をしてしまっている。
…きっと破れば気付かないうちに大なり小なり罰を受けてるんだろうな。
それを考えると、この世界で指切りげんまんして約束破ったら、本当にやばい事になるわ。
…絶対に口にしないようにしよう。