決着《side ヴァイリー王国宰相》
すみません、昨日上げるの忘れてました…
えへへ…
気絶した陛下を牢屋へ連れて行くように兵に言い渡し、その後ろ姿を見る。
本当にあっという間の出来事だったな…
まさか長年の憂いがこんな一瞬で片がつくとは思わなんだ。
ユージェリス様には頭が上がらないな。
応接室での会話の後、ユージェリス様は変な気配がすると言って、例の離宮の方向を指差した。
私が説明をすると、少し真剣な面持ちになってから突然消えたユージェリス様。
驚く私に、サルバト様は『何か気になる事があるのだろう、好きにさせておけ』とおっしゃりながら苦笑していた。
マリエール様も口では謝罪の言葉を発していたが、顔は笑っていた。
だがそんな雰囲気も、ユージェリス様が戻られると一瞬で変わる。
なんと、ユージェリス様の背にガルデン様がグッタリとして乗っていたのだ!
あれには本当に慌てた。
ユージェリス様のご指示でマリエール様が聖属性で回復を試みて下さった。
なんでもユージェリス様は魔力を出来るだけ温存したいらしい。
この後何があるかわからないから、と…
多少回復したようで、ガルデン様は目を開けられた。
やつれ方はサルバト様と同じだった事から、同じ期間放置されていた事が窺えた。
ユージェリス様曰く、例の離宮の中に横たわっていたらしい。
「第1王子の代わりに第2王子を離宮に押し込めて、いるものとする…うーん、胸糞悪いなぁ」
そう言って口角を上げたユージェリス様の、なんと怖いお顔だった事か。
あれは本当に敵に回してはいけない。
というか、普通はするはずないんだがな?
そうしてあの断罪となった、と。
…思い返しても一瞬だったな。
今現在、ユージェリス様が残りの魔力でガルデン様を回復して下さっている。
サルバト様や王女様方は心配そうに周りで見守っていた。
マリエール様はそのサルバト様を癒して下さっている。
やはりまだ長時間立ち続ける事は負荷になるようだ。
「…さて、と。とりあえずこんなもんかな?第2王子様は五体満足だし、後は栄養あるもの食べて寝ればすぐに良くなりますよ」
「ありがとう、ユージェリス殿。マリエール殿も礼を言う」
「当然の事をしたまでですわ、サルバト様」
「あ、あの!兄を助けていただいて、本当にありがとうございました!」
「「あ、ありがとうございました!」」
テリューシャ様の言葉に、シャーナル様とルーシャン様も続けて頭を下げる。
…正しくはカテーシーにて謝罪、感謝する事だと思うが、まぁ今回突っ込む事はやめておこう。
「いえいえ、自分のためでもありましたから、お気になさらず。それに王女様方、王族の方々が簡単に頭を下げてはなりませんよ」
にっこりと、ユージェリス様が返答する。
流石だ、ご指摘までされるとは。
本当に、こんな事がなければ歳の近いルーシャン様を婚約者候補として推薦出来たものを…
今更国としてそんな事をしたら、恩を仇で返す事になりそうだな。
…まぁ、ルーシャン様達は皆、ユージェリス様にそれなりの好意を持ってしまわれたようだが…
そこは我儘を言い出さなければ問題はあるまい。
「さて、じゃあ母様、帰りましょうか」
「「「「「え?!」」」」」
まさかの発言に、ガルデン様以外の全員で驚きの声を上げてしまった。
「ゆ、ユージェリス殿?!まだ何も礼が出来ていないんだ、もう少しゆっくりしていってもいいのではないか?!」
「そ、そうですわ!それに私、リリエンハイド王国についてもお話をお聞きたい事がありまして…!!」
「いえ、そろそろ失礼させていただきます。元々我々はこの国へ継承権の破棄をしに来ただけです。あまり長居をするつもりではなかったのですよ」
「でも…」
「よろしければ是非、我が王国へ遊びに来て下さい。歓迎致しますよ」
「…あぁ、是非とも伺わせてくれ。此度の件、王位継承についても改めてそちらへ説明しなくてはならないしな。確か貴国の第1王子も近々立太子するとか。祝いを持って伺うよ」
固く握手を交わすお2人と、残念そうに微笑む王女様方。
そんな中、突然扉が開いた。
「ガルデン様!!」
「…ペネロペ…?」
侍女姿の女性が走り込んできて、そのまま椅子に座っていたガルデン様に抱きつく。
そのまま後ろに倒れかかったガルデン様を、ユージェリス様が慌てて支えて下さった。
あぁもう、重ね重ねご迷惑を…!!
「ガルデン様…ガルデン様…!!」
「…なんだペネロペ、また美人になったなぁ…」
「…あの…?」
困惑した表情で椅子を戻して下さったユージェリス様は、答えを求めて周りを見渡す。
「あー、すまんな、ユージェリス殿。彼女はシャーナル付きの侍女、ペネロペと言う。見てわかるかもしれないが…ガルデンと恋仲でもある」
「はぁ…」
「ユージェリス殿はガルデンが女好きで、女性問題を起こして廃嫡されたと聞いたんだったな。それは陛下…あの男から発せられたデマだ」
「お兄様は確かに軽いところはありますけれど、実際にはペネロペ一筋だったのです。そんなペネロペは身分違いという理由と、陛下からの圧力などで避け続けていたのですが…まぁ、今回の事がありまして」
「あぁ…覚悟を決めた感じですか。にしても、アレもデマ、コレもデマ、とは…1回全て正しい情報を各国に伝えた方がいいですね」
「だな…ガルデンの廃嫡も撤回し、改めて王族として働いてもらわねば。ペネロペとの仲は認めるし、王弟妃として彼女にも頑張ってもらうか…」
肩を落とされるサルバト様。
それを見て複雑そうな表情を浮かべるユージェリス様。
周りを気にせずに無自覚にイチャつくガルデン様とペネロペ。
そんな2人を見て苦笑する王女様方とマリエール様。
なんというかまぁ…平和、ですな。
今まではこんななんでもない、しょうもない状況の日々すら過ごせなかった。
殺伐とした日々は今日で終わる。
そう思うだけで、心が軽くなるような気がしてきた。
さぁ、私の最後の仕事をしよう。
サルバト様方をお支えするために、正式に息子へ引き継ぎもしなくては。
忙しくなるこれからを思い、私は大きく深呼吸をするのだった。