終結の宣誓
うーん、ヴァイリーの力は一般人にとってかなり強いみたいだなぁ。
みんな床にへたり込んでるじゃまいか。
「ヴァイリー、その力、もう少し抑えられない?みんな辛そうだよ?」
『それは無理なのさ。私の姿を無理矢理この世に映すには、魔力を放出しないと出来ない芸当なのさ。気になるならユージェリスが防御してやるのさ』
「うーん、なら、えっと…《エリア》《ガード》」
母様、王族兄妹、宰相様を指定して、防御魔法をかける。
これで魔力を遮断出来ると思うんだけど…
あ、扉にいる兵士さん達は一旦外しておいた。
万が一、国王の手下だったら困るからねぇ。
…うん、唸ってるの見るのも忍びないけども、致し方ない。
「…すまん、ユージェリス殿、助かる」
『おぉ、其方が私を呼び出したのさ?名を名乗る許可をやるのさ』
サルバト様に気付き、ヴァイリーが笑いながら話しかける。
僕にはヴァイリーが普通に幼女の姿で見えてるんだけど、他の人達からはどう見えてるんだろ?
「…ヴァイリー王国第1王子、サルバト=バル=ヴァイリーと申します。精霊様にお会い出来るとは、恐悦至極にございます」
『ふむ、ユージェリスの血縁者か…私はこの王国の精霊、ヴァイリー。ユージェリスの友でもあるのさ』
え、マジで?
いつの間にか友人ポジションにランクアップしてたわ。
ヴァイリーの言葉に、室内の全員が驚きの表情で僕を見つめる。
やーだぁー、そんなに見つめないでぇ!
…なんちゃって。
あ、そうだ、あの魔法使っとこう。
えーい、みんなに見えないように指パッチンだーい!!
「…精霊ヴァイリー様。早速ですが、問うてもよろしいでしょうか?」
『許可するのさ』
「我が父、グラディウス=バル=ヴァイリーの、これまでの行い。是非とも判定していただきとうございます」
「なっ…!!サルバト、貴様…!!」
床に潰れた状態で叫ぶ国王。
まだこの状況で叫ぶ力が残ってたのか、すげぇな。
『判定を言い渡そう、サルバト=バル=ヴァイリー。其方の父、グラディウス=バル=ヴァイリーは国王としての義務は愚か、父親としての義務も果たせぬ大罪人。よって私はこの者を王とは認めないのさ。すぐに退位させ、厳重な処罰を与えねば…私はこの地から全ての魔力を遮断させてみせるのさ』
ヴァイリーはニヤリと笑い、僕以外の周囲はゴクリと息を飲んだ。
成る程、それはいいかもしれない。
まぁ元々はそのつもりだったしね。
多分僕以外の人達は今の話から、ヴァイリーが直接手を下すと思ってるだろう。
実際に魔法使うのは僕なんだけどね。
「…判定、ありがとうございます。お言葉に従い、本日をもってグラディウス=バル=ヴァイリーは退位。つきましてはこのサルバト=バル=ヴァイリーが王太子として立ち、漆黒期が終了次第王位につくという事でよろしいでしょうか?」
『あぁ、それで構わないのさ。というかその歳で王太子ですらなかったとはどういう事さ…もう少しちゃんと見ておけば良かったさ』
ヴァイリーが頭を抱える。
仕方ないよ、精霊界とこの世界の流れは違うし、ちょっと目を離せば数ヶ月も経っちゃうんだからさ。
僕は慰めるようにヴァイリーの肩を叩いておいた。
「ま、待つであろー!!そんな事、民が許すはずが…!!」
「あ、ちなみに今の判定は現在進行形でこの王国全土に生放送してますので、よろしくお願いしますね」
「んなっ…?!」
そう、判定を始める前に僕がかけた魔法は『エリア』と『エコー』。
うちの魔法師団と陛下が王国放送する時に使うやつだ。
出来る限りMPは残しておいたので、なんとかなった。
「ユージェリス殿、いつの間に…」
「打てる手は打つのが私のやり方ですよ」
『なんだ、私の判定に不服でもあるのさ?グラディウス=バル=ヴァイリー』
ヴァイリーが威圧を強めて国王…いや、元国王?を言葉だけで制する。
威圧に当てられた元国王は、泡を吹きながらその場で気絶した。
うわぁ、呆気ないねぇ…
「うーんと…とりあえず、キチンとした宣誓をしていただいてもよろしいですか?」
「あ、あぁ、そうだな…ヴァイリー王国の諸君。私はサルバト=バル=ヴァイリー第1王子である。聞いての通り、本日を持ってグラディウス=バル=ヴァイリーは王位を退く。かの者の沙汰は追って連絡する。皆には迷惑をかける事になるだろうが、是非ともこの国のために、私達王族に力を貸して欲しい。悪しき風習は無くし、皆が辛い思いをしない新たな王国を築いていこうではないか!」
「我々兄妹も、新たなる王太子、そして新たなる王の力となれるよう、勉学に励み、より一層の繁栄を支えていく事をここに誓います!」
サルバト様に続いて、第1王女様が宣誓を告げる。
どうやら第2王子も気を持ち直したようだけど、声が出ないみたいだな。
で、代わりにあの王女様が。
サルバト様や宰相様に聞いた通り、まともな女性のようで安心したよ。
後で僕が回復したら第2王子を治癒してあげなきゃな。
…そして外から聞こえる、大きな歓声と拍手。
こっちが『エコー』してる側なのに、逆にされているかのようによく聞こえる。
それだけ大勢の人数がこの決定を望み、受け入れたって事かな。
『…精霊ヴァイリーの名において、其方らを真の王族と認めるのさ。末永くその志を持って王国を栄えさせてみせるのさ。其方らに幸多からん事を…』
そう言って、ヴァイリーは姿を消した。
最後に僕に向かってウィンクしてたけど、意味合いとしては『後はよろしく』ってところだろうか。
…いやいや、これ以上僕やる事なくね?!
さっさと片付けてお家に帰るんだからね!!