使えない精霊玉《side ヴァイリー王国第1王女》
昨日は更新出来なくてすみませんでした!
代わりに今日から3日間1話ずつ更新頑張ります!
そしたらまた月水金更新です!
「断罪…とな?笑わせてくれる、余を断罪?寝言は寝て言うものであろー!」
顔を真っ赤にさせて、玉座の手摺を叩きながら叫ぶ陛下。
まぁ、なんて愚かしい。
今までの行い、断罪されても致し方ないでしょうに…
チラリ、とヴァジルを扇子に隠れながら横目で確認すると、後ろ手でそちらへ行くようにと動いているように見えました。
私は2人をそっと押しやり、陛下からジリジリと離れていく。
「《暴れないでもらっていいですか?》」
「うぐぅっ…?!」
ユージェリス様のお言葉に、体の周りに漂っていた真っ赤な魔力の塊が陛下へ飛んでいき、まるで拘束するかのように纏わり付きました。
詠唱もなかったはずなのに、どういう原理なんでしょう?
私も属性は持っていますが、魔法の使い方は学んでおりませんのでよくわかりませんわ。
やはり学なしはよろしくありません。
「き、貴様…!余に逆らっていいと思っておるのか?!余には“精霊玉”があるのだぞ?!」
ジタバタと拘束から逃れようと体を動かしながら叫ぶ陛下。
あぁ、そうです、アレがあっては…!!
「だから?」
「「「「は?」」」」
陛下、そして私達姉妹がつい零した言葉は、静かな謁見の間に響き渡ります。
あら、何故ヴァジルは驚いてないのかしら?
「貴方の言う“精霊玉”って、その後ろにある真っ赤な水晶でしょう?さっき鑑定させていただきましたけど…別に貴方が使える代物ではありませんでしたね」
「な、なんだと?!」
「鑑定結果、正式名称“精霊判定玉”、精霊が裁きを言い渡すためだけの召喚媒体。使用方法は精霊が認めた王族の血を1滴垂らし、魔力を注ぐ事…そして、今現在の契約者は…」
チラリ、と私達を見るユージェリス様。
あぁ、その流し目も素敵です…
「そちらの王女3名と、第1王子、第2王子のみですね」
「なっ?!余は認められていないだと?!」
「嘘だと思うのなら、お試しになってみては?」
ユージェリス様がそう仰られると、突然陛下を拘束していた赤い魔力が消えていきました。
その瞬間、玉座から転がり落ちるように離れて“精霊玉”を両手で鷲掴む陛下。
あれが父親だと思うと…遣る瀬無いですね…
「くっ…血、血を…!!」
どうやら転げ落ちた時に腕を切ったらしく、そこから出てきた血を“精霊玉”に塗り付けて…
なんでしょう、ちょっと見苦しいですわね…
そしてさっさと3人でヴァジルの背に回り、体を隠しながら覗き見る私達。
…あら、あんな後ろに椅子が2つも…片付け忘れかしら?
いつもはあんなところに椅子なんてないのに…
不思議に思いつつ視線を戻すと、どうやらユージェリス様がこちらを見ながら苦笑していたようでした。
ちょっと恥ずかしいです…
「早よ、早よ精霊よ、現れるであろー!!」
シーン。
「精霊、精霊様!!何をしておるのだ!!」
シーン。
「な、何故だ、何故…!!」
シーン。
まぁ、まさかの本当に無反応ですこと。
これが陛下の最大の防御でしたのにねぇ…
つい、口元が歪んでしまいます。
きっと側から見たら、私はかなり悪い笑みを浮かべている事でしょう。
例えユージェリス様に見られようとも、体裁を整えるつもりはありません。
これで、やっと、この男を本当の意味で玉座から引きずり降ろせる…!!
あぁ、でも、サルバトお兄様がいなければ何も意味がありませんわ…
私達では国は動かせません。
やはりお兄様のように民から慕われる王でなければ…
せめてガルデンお兄様がいらっしゃれば…まだ…
サルバトお兄様…一体どこにいるのですか?
ガルデンお兄様も、どうして突然いなくなったのです。
陛下は複数の女性との問題行動で廃嫡したと仰っていましたけど、そんなはずはないのに…
…無事でいて下さいまし、お兄様方。
台風が酷いですね。
ダムが放流されたので、寝てる間に浸水しないか少し不安です。
皆様もお顔つけ下さい。