暇潰し方法
「おやおや、これはいい匂いですね。何を作られたのですか?」
レリックがリリーに引っ張られるようにして厨房に現れた。
リリー…いくらなんでも…
「ベティ様が好きだって言ってたものなんだ。気に入ってくれるといいんだけど。先に味見しよう、レリックもいる?」
「もちろんです、楽しみにしていたんですよ」
にこにこと微笑むレリック。
その横にはよだれを垂らして待つリリー。
ちなみに僕の横には目を輝かせてこちらを見るセイルがいる。
小さなハンバーガーもどきを4等分にして、お皿に乗せる。
ちょうど大きめの一口サイズになった。
ポテトも少しだけ乗せておく。
「いい匂いですぅ〜」
「これは手掴みで食べるのですね」
「時間がない時でも食べやすいな。サンドイッチにも似ているが…」
「はい、どーぞ」
僕の声に、3人が一斉にハンバーガーに齧り付く。
「「「…美味しい…」」」
3人とも、頰を紅潮させて呟く。
いい反応だ、嬉しいな。
僕も食べてみよう。
…うん、中々美味い!
いいなぁ、このジャンクな感じ。
また今度作るか、セイルに頑張ってもらおう。
あ、ポテトもいいね、サクサクだぁ。
…あ、3人ともポテト食べて固まってる。
と思ったらめっちゃ食ってる!!
「…これは、いけませんね…手が止まりません…」
「やみつきですぅ…」
「あんなに簡単な作り方だったのに…」
ちょっとの量だったから、すぐになくなった。
地味にレリックが1番寂しそうにお皿を見てる。
「…これは、お届けする前に私が食べてしまいそうです」
「ダメだよ、ベティ様のなんだから。ちゃんと届けてね?」
「努力します…」
少し残念そうに、渡したケースを持ちながら厨房を後にするレリックだった。
大丈夫かな、本当に。
「セイル、残りの3つは母様とロイ兄様とフローネに届けておいて」
「お任せ下さい、食べないように頑張ります」
「セイル、お前もか」
でもまぁ、リリーに預けるよりかは大丈夫かな。
リリーなんて残りのハンバーガーもどき達を物欲しそうに見てたし。
ついでにセイルが後片付けもしてくれるというので、僕とリリーは厨房を後にする事にした。
「リリー、本当に食いしん坊だよね」
「うぅっ…申し訳ありません…」
「食べ物くれるからって、知らない人についてっちゃダメだよ?」
「私そんな歳じゃありませんよ?!」
「いやぁ、アレを見る限りだとホイホイついていきそう」
「アレはユージェリス様の作られたものだからです!いつもはあんなに反応しませんから!!」
「どうだかねぇ…」
怪しいもんだ。
さて、ぶっちゃけた話、僕にはやる事がない。
何故なら勉強は暗記スキルのおかげで必要ないし、マナー講座とかの家庭教師を必要とする授業は受けられない。
愛し子だからって、家庭教師が必要以上に擦り寄って来る可能性もあるからね。
つまり、本当に暇になる。
本を読んでもいいけど、この屋敷にある小説とかも読み込んじゃってオチも知ってるし…
だからこそ、料理がちょうどいい暇潰しになっていた。
それが一旦終わると、またやる事がなくなる。
…無詠唱の練習も、リリーがいたんじゃやりにくいしな。
「何しようかなぁ…暇になっちゃったし、今日は出かけちゃダメだって父様からお達しがあったし…」
「そうですねぇ、もしユージェリス様がお嬢様なら、刺繍や裁縫なんかをオススメしますが…」
「別に今やりたいとは思わないんだよなぁ…」
でも裁縫スキルとか持ってないんだよね。
前世で裁縫苦手だったから。
今なら1回何かを縫えば取得出来そうな気がする。
でも、気分じゃない。
「…でも、とりあえず何か作ろうかな。裁縫ってわけじゃないけど、なんか小物とか」
「ユージェリス様なら、すごい魔道具とか作れそうですよね。国宝級のとか」
「魔道具?」
そんなのがあるのか。
教えて!暗記スキルー!
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【魔道具について】
魔道具とは、主に防御系魔法を纏わせた装飾品の事を言います。
稀に攻撃系や反射系の魔法を纏わせたものもありますが、スキルレベルが高くなければ作成が成功しません。
必要なスキルは『錬金スキル』または『付与スキル』となります。
各スキルによって作成方法が異なります。
・錬金スキル→素材を集め、『アルケミー:※※※※』で一気に作成します。唱える際にはどの魔法を纏わせるか指定する必要があり、またどのような装粧品にするかは製作者次第です。
・付与スキル→すでに出来上がった装飾品に、『グラント:※※※※』で後付け付与を行います。唱える際にはどの魔法を纏わせるか指定する必要があります。
(装飾品自体を一から作成したい場合には『作成スキル』があると便利です)
〜参考文献〜
著・フレール=ジャックフルト、"初めての魔道具"、P1
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おぉ、ならさっき取得した錬金スキルで出来るじゃん!
でも今度付与スキルの方も試してみたいな、取得出来れば儲けもんだし。
「リリー、一旦部屋に戻ろう」
「はい、ユージェリス様」
部屋になんか材料あるかなー?
クローゼットの中とか、使ってないアクセサリーあればそれをバラして使ってもいいよね。
ってか男の子じゃアクセサリーなんてないか?
部屋に戻って、リリーも連れたままクローゼットに入る。
「リリー、僕の装飾品ってある?」
「こちらの箱に入っているものがユージェリス様のものになります」
「使ってないものは?」
「使ってないものですか?ええっと、確かこちらの箱の中身がそうなりますね。小さくて着れなくなったお洋服ですとか、留め具が壊れて使えなくなったベルトですとか、チェーンが切れてしまったペンダントですとか…」
リリーが出してきた大きめの箱を開けると、確かに色んなものが入っていた。
ある意味ゴミ箱みたいな感じか。
でもちょうどいいな、これで遊んでみよう。
「わかった、ありがとう。これ使ってもいい?」
「はい、大丈夫です。元々年末に片付ける予定の物ばかりですので」
「よし、じゃあ早速やろう。リリーはちょっと部屋から出て待っててね。呼んだら入ってきて?」
「承知致しました」
リリーがクローゼットからゴミ箱(仮)を出してくれてから、部屋を退室する。
さーて、何作ろっかなー♪
次回、唐突に始まるハ○レン回(嘘)