制限なしの弊害
遅くなりました!
「それで、ユージェリス様。まずは何をなさるおつもりで?とりあえず王城に向かわれますか?」
レリックがそれはもういい笑顔で僕に尋ねる。
結構怒ってたんだな、レリック。
止めるどころか協力まで申し出るなんて。
「そのサルバト王子って方を探そうかな。体が不自由になったなら、魔法で治せるし」
「で、ですがすでに魔法で治癒しても完治しなかった怪我だそうですよ?!ユージェリス様が治せるという保証は…」
ジョルンが涙目で叫ぶ。
おぉ、さっきまで首しか振ってなかったけど、僕相手でも喋れるじゃないか。
「兎に角怪我の具合を見なきゃ始まらないさ。というより、本当に魔法で治癒されたのかね?」
「「「え?」」」
「例の陛下とか、周りの王族とかが治癒もせずにどっかに放置してたりしない?」
「「「あ…」」」
僕の言葉に顔面蒼白になる3人。
そうなんだよねぇ、いくら臣下達に慕われてたとしても、王族から疎まれてたらその可能性はあり得るんだから。
治癒した人って本当にいるのだろうか?
「時間が経てば経つほど、魔法の難易度は高くなる。1年以上経ってるんだから、僕に治せなければもう無理だろうね。死亡した、とは言われてないんでしょ?」
「…はい、そのような報告は入っておりません。その場合は各周辺諸国にもご連絡が行くはずですので…」
「僕も聞いてないから、怪我を治さずにどこかに隔離、放置してるって気がするな。さっさと見つけようか」
僕は少し歩いてからマントを翻し、少し広い広場の方へと足を進めた。
幸い、僕達以外に人はいないようなのでさっさと事を進めよう。
「先に聞くけど、君達は僕達の陣営に加わるって事でいい?」
「陣営…ですか?」
「まぁヴァイリー王国につくかリリエンハイド王国につくかって事かな。サルバト王子がまともな人格者なら、構図はヴァイリー王族vsヴァイリー王国&リリエンハイド王国ってところかな?」
「…それならば、ヴァイリー王族につく事はありません」
「我々はあくまで、サルバト様につきます」
「サルバト様救出まではユージェリス様派って事っすね!」
…ブルーノって結構軽いよね。
まぁそういう人って僕は好きだよ。
「じゃあまぁ、さっさとケリつけようか!《エリア:ヴァイリー王国》《サーチ:ヴァイリー王国第1王子サルバト》!」
足元が白く光り輝く。
ヴァイリー王国はリリエンハイド王国よりも大きいので、中々MP使うなぁ…
いくら制限なしのMPとはいえ、ごっそり抜ける感覚は体に負担がかかる。
「こ、これは…?!」
「王国全体を1人で『エリア』だって?!そんな事が…!!」
「…愛し子様とは、それほどまでに…!!」
「ユージェリス様、あまりご無理をなさらないで下さい!」
3人は驚き、レリックは少し焦る。
まぁ中々『エリア』が終わらなくて、MPを消費し続けてるからかな。
この後の『サーチ』でもごっそり持っていかれそうだ。
…ここまでしてちょっと不安になったんだけど、本当にサルバト王子はこの国にいるんだろうか?
ってか『サーチ』ってどの程度まで探れるの?
偽名使ってても引っかかるのか否か…
今度ちゃんと調べてみよう。
…お、やっと『エリア』が終わって『サーチ』に入ったな。
うっわ…めっちゃMP使う…体重い…
「…捉えた」
呟いて、魔法を解く。
そのまま地面に座り込むと、レリックが慌てたように走り寄ってきた。
「ユージェリス様!」
「大丈夫…ちょっと疲れただけ…」
「あれでちょっとなわけがありますか!早くポーションをお飲み下さい!あぁ、鼻血まで出てるじゃないですか!」
「いやぁ、僕にポーション効かないんだよねぇ…それより、冷たい飲み物お願い」
「わ、私が!」
ジョルンが慌てて走り出す。
休憩所に水でもあるのかなー?
にしても、MPは制限なしでもHPを消費するみたいだねぇ。
まさか鼻血が出るとは。
とりあえず袖で拭ったらレリックに睨まれた、怖い。
あー、ここまで大掛かりな魔法使った事なかったから、初めての感覚だったなぁ…
「ユージェリスちゃん?!何をしたの?!」
「ユージェリス様?!」
流石に母様にはバレてしまったらしい。
遮断しとけばよかった…
母様は思ったよりも軽やかに走ってこちらへ向かってくる。
ナタリーや学院長とは全然違う、どちらかと言えばニコラっぽいところを見ると…母様も昔はお転婆してたのかな?
シャーリーは普通に速い。
母様にぴったり並走してる。
「あ、アマーリア様?!」
「兵士長、あの方はアマーリア様の御息女にてユージェリス様の母君であるマリエール様です。瞳の色合いが異なるでしょう?」
驚愕の表情だった兵士長は、レリックの言葉を聞いてから大きなため息をついた。
どうやらお祖母様の顔を知っているらしい。
僕ですら見た事ないのになぁ。
今度写真とかないか聞いてみよう。