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卒院式にて《side ロイヴィス》

長々としたどこかの大臣様のお言葉は、只々眠気を誘うだけのものだった。

卒院式が始まって半刻弱、この人1人で話続けてる。

この後に学院長のお言葉と、卒院生代表挨拶、陛下からのお言葉など、まだまだ控えているというのに…

というか、陛下も欠伸しちゃってるし。

あ、王妃様は少しお怒り気味だな、笑顔だけど目が冷え切ってる。

あれに気付かないほど熱弁してるとか、残念な大臣様だ。

確かあの人のご子息は誰に似たのか無口で寡黙な方だったなぁ。

早く代替わりしてくれないと、ユージェの卒院式の時にも同じ事が起きちゃうじゃないか。


…ユージェ、僕の大事な弟。

一体いつまで精霊界に行ってるんだい?

すぐに帰ってくると言って、もう10ヶ月も経ったじゃないか。

フローネなんてここ数ヶ月、毎日朝起きてユージェの部屋を見て、寝る前にも同じ行動をしてるんだぞ?

まぁ僕もだけど。

今日だって、本当はここに来て祝って欲しかった。

愛し子様とはいえ、今日くらいは僕の弟としてあの家族席で見てて欲しかった。


精霊様、早く、ユージェを返して下さい。


「…で、あるからして、つまりは…」

「つまり、学院生の未来に栄光あれ、という事ですね?長々と祝辞をありがとう、グラディウス公。さぁ、皆さんも拍手でお見送りを」


あ、王妃様がぶった切った。

そして会場の全員から惜しみない拍手が送られる。

勿論、僕もね。


すごすごと退散していく大臣様は、どこか不満気だった。


そしてそのまま学院長のお言葉だったけど、なんというか一瞬で終わった。

巻いたのだろうか。

でも素晴らしい祝辞だった。

そして登壇するのは、学年首位のエドワーズ殿下。

殿下は漆黒期明けの4雷1日に王太子に即位される。

卒院式の最後に陛下から祝福を頂く事で僕達は晴れて成人として扱われる事になるけど、殿下は違う。

今回の漆黒期中に儀式や近隣国への挨拶回りをして、やっと王太子(成人)になれる。


つくづく僕は王族じゃなくて良かったなぁ、と思う。

いや、一応これでも王位継承権持ってるけどさ。

でもめんどくさいだろうなぁと思うわけで。

実は家族にも黙ってるけど、僕って意外とめんどくさがり屋です。

多分ユージェも気付いてない。

だってユージェやフローネの前ではいいお兄ちゃんでいたからね!

失望はされたくないんです、家族には。

まぁルーナには早々にバレたけど。

だからちょっと、成人になるのが少し憂鬱でもある。

跡取りとしての重責や、宮廷魔術師長への果てしない階段を登り始める…


あぁ、全部投げ出したいな。

でも、そうすると困るのは父様…というより、ユージェだろう。

愛し子様で、全属性持ちで、魔力も豊富。

本当なら僕よりも高い地位が相応しいはずなんだ。

でも、愛し子様という肩書きがユージェの輝かしい未来を遮る。

いや…ユージェに至っては例外かな?

きっと好きなように生きられるという解釈になるんだろう。

あの子は縛られるのが嫌いだから。


「それでは、次に卒院生代表挨拶に移ります」


おっと、エドワーズ様が既にご登壇されてるじゃないか。

少しだけ背筋を伸ばし、気持ちを切り替える。


「我々卒院生47名は、本日を持ちましてこのリリエンハイド王立学院を卒院します。我々はこの3年間で様々な事を学び、交流し、有意義な時間を過ごす事が出来ました。私は王太子になるにあたり、信頼の置ける友や臣下にも出会う事が出来ました。この場に出席出来なかった友もいますが、私は()がすぐに戻ると確信しています」


…ユージェの事かな。

いつの間にそんなに信頼したのやら。

エドワーズ様は他人を駒として扱うとよく言われてるけど、実際には少し違う。

本当に信頼されていれば、実はとても大切にされる。

飲み物とかも殿下が取ってきてくれたりするくらい。

なのでまぁ、殿下に付きまとってる数人の子息は駒扱いなんだろう。

彼らはよくパシられてる。

ちなみに僕は…まぁ、最近は随分信頼されてるっぽいよね。

この前ユージェリスの事を聞かれた時も食堂でお茶奢ってくれたし。


…なんて事を考えていたら、会場の空気が少し変わった。

というか、周囲の結界がブレてる?

あ、父様少し慌ててるな。

でも、僕は至って冷静だった。

なんとなくだけど、これは…


「…ユージェリス!」


上からエドワーズ様が叫ぶ。

おぉ、嬉しそうだ。

そして僕はそっと後ろを振り返る。


「お話の途中に、御前失礼致します。遅れてしまい申し訳ありませんでした」


最後に会った時よりも少し声が低くなった、とてもカッコいい僕の大好きな弟が、母様とフローネの間の空席に現れていた。

貴族の礼をして、バッチリ決めたユージェは…


「ユージェ!仮面忘れてるよ?!」


…うっかり素顔のままだった。

つい叫んじゃったよね、あはは。

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