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精霊ヴァイリーの憂い

中々ご立腹な感じのヴァイリー。

真っ赤な髪が余計にそう感じさせる。


「えっと…ヴァイリー、さん?どうしてそんなに協力的なの?」

『呼び捨てで構わないさ。私は今の国を恥じているのさ。なんだあの体たらく、そして他国にまで迷惑をかけてまで何をしてるのさ!!』


お、おう、国の精霊まで呆れさせて怒らせてるとは…


『元々はこんな国じゃなかったさ。ある時の国王からこういう方針になって、王族の血を純血と定めるとかほざき始めたんさ。それまでバカスカいろんな血を混ぜてたんだから、今更自国出身で身内固めたってなんの意味もないのさ!!』

『確か100年前くらいの話なのら』

「結構最近じゃん」


つまりそれってここ2、3代くらいじゃないのか?

全然尊さがないな。


『いっそ国が滅べばいいのさ…』

「いやいやいや!そんな事になったらヴァイリー統合されて存在なくなるんでしょ?!」

『別に構わないのさ。例えばリリエンハイドと統合したら、リリエンハイドだって今の姿じゃなくなるのさ。別に死ぬわけではないから、人間の感覚とは違うのさ』


…そうか、フュージョンと一緒だって言ってたもんな。

記憶も2人分で、姿形も変わるのか。

別に悲観する内容ではないわけね…


『とりあえず天罰でも下すのら?』

『私はあまり力が残ってないから難しいさ…単純にサガラユヅキが私に願えばいいのだと思うさ』

「僕が?」

『私達自身、あまりこの世界に対して力を使えないのさ。基本は住んでる者達でなんとかしてもらう方針だから、災害とかが起こっても見てるだけなのさ。唯一、この世界に力を使えるとすれば、それは願いを聞き届けて応える事なのさ』

「願い?」

『よくある教会でのお祈り、とかなのら。ちなみに詠唱も願いの1つなのら。あれは精霊に対して願ってるのら』


…そういえばそうか。

詠唱の中に『精霊よ』って言ってるもんな。

成る程、願いの度合いや緊急性によっては精霊が直接力を貸してくれる、と。

それなら…


「…例えば、だけど。僕が『ヴァイリー王国なんて魔法が使えなくなればいい』とかって言ったら、どうなる?」

『ほう、中々面白そうなのさ!そしたら私は王国の空気中に漂っている魔力を全て断ち、結界を張って他国からも魔力を取ってこれないようにするのさ』

「あれ?でも個人のMPで魔法使えるんじゃないの?」

『そんなもん一時的なのら。MPは空気中に漂っている魔力を吸収して回復するのら。なければ消費するだけなのら。後は魔導具が使えなくなるのら。あれも空気中の魔力を多少なりとも使ってるのら』

「へぇ、魔力とMPってそういう違いがあったのか」

『多分あの世界の人々は空気中に魔力が漂ってる事を知らないのさ。個人のMPがイコール魔力だと思ってるのさ。それだけじゃ魔法は成り立たないってのに、全く無知は困るさ』


ははは、耳が痛いです。

でもそうか、やるならそこから説明しないといけないよね。

MPがなくなれば魔力欠乏症になるかもしれないし。

いや、なるのか、確実に。

ポーション飲むしか回復しないのか。


…あ、そういえばまだ聞きたい事があったんだった。


「じゃあ向こうに戻ったらその方法で懲らしめよう。その時はヴァイリー、よろしくね」

『うむ、こちらこそなのさ。うちの者がすまなかったのさ』

「しょうがないよ、ヴァイリーのせいじゃないんだし。それより、2人に聞いていいかな?なんで愛し子…というか、転生者はリリエンハイド王国にしかいないの?」


僕の問いに、2人が顔を見合わせる。

そしてお互いに少し首を傾げてから、僕を見た。


『別にうちだけではないのら』

『他の国にもいるのさ。うちにはいないけど…』


マジで?!


「え、でも愛し子制度はうちだけだよね?」

『うむ、転生者とは知られていないけど、愛し子として敬ったり讃えたりしてるのはうちだけなのら。うち以外で転生者を連れてきている国は、スラース公国、ジャルネ自治国、ガルデリバルサ帝国の3国もあるのら』

「え、ジャルネ?!」


やっぱりジャルネは転生者がいるのか!

だから醤油とかがあるのか…


『ジャルネ自治国は知ってるのさ?スラース公国はジャルネ自治国の隣の国、ガルデリバルサ帝国は海を越えた先にある別大陸にあるのさ。スラース公国で転生者は“知識者”という存在になり、国を挙げて祭り上げられてるのさ。ジャルネ自治国は転生者か転生者の子孫ばかりの国で、他国との外交をほぼ遮断して昔の日本らしい生活をしているのさ。江戸時代ってのに近いさ』


まさかのジャルネがリアル江戸村だとは。

益々行きたくなってきたじゃないか!


『問題はガルデリバルサ帝国ら。あそこは転生者が見つかると、国の奴隷として働かさせられるのら。王城に住まわせて贅沢な生活をさせてくれるけど、実際は軟禁してるようなものなのら』

「え…それは、知識が凄いからとか、そういう理由で?」

『そう、あそこの国はうちよりももっと酷いさ。有益な情報を得る為に恐喝するタイプさ。もっとも今の時代は転生者もいないから、そんな事は行われてないのさ。精霊のガルデリバルサが転生者を憂いてここ数十年は連れてくるのをやめてるのさ。ちなみにスラース公国も今はいないけど、ジャルネ自治国は10人くらいいるさ』


よかった…誰か困ってるなら、助けに行こうかと思ったよ。

って、ジャルネ転生者多いな?!


「なんでうちを含めて4国しかやってないの?」

『そんな頻繁に魔力補充が必要でもないからというのと、連れてこれる精霊がこの4人しかいないからなのら』

「へぇ、そんなに高度な技術が必要なんだ…」

『黒髪はお前達だけさ、私の髪色はあの世界にはないから行けないさぁ』

『目は隠せても、髪は黒髪以外悪目立ちするらー』


ちょっと待て、理由は髪色(それ)だけかよ!

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