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忘れた恋と精霊の怒り

『…わかった、なら話すのら。本来、その体に入る予定だったのはサガラユヅキの職場の先輩君だったのら』

「…先輩…?」

『エリア石を魔石化させそうになった事件の時、サガラユヅキは夢で何を見たか覚えているのら?』


…あの時の、夢…?


ーなんだ、その反抗的な態度は!!

ー“アイツ”は勝手に死んだんだ。

ー俺は楽して帰れたのになぁ。


思い出した途端に、体が急激に重くなった。

さっきまで真っ白だった世界が、突然黒い何かが侵食していく。


『サガラユヅキ!それ以上思い出したらダメなのら!』


リリエンハイドが僕の肩を掴む。

その瞬間、一気に体が軽くなって視界が白く戻ってきた。


「…あぁ、うん、なんだったんだ…?」

『あれが魂の汚れら。今のは強制的に我が取っ払ったのら。ここは精霊界、魂が強く反応する場所なのら、気をつけるのら』

「うん…それで、えっと?」

『心を落ち着かせて聞くのら。名前は言わないけど、その夢に出てきた亡くなった先輩君というのが本当の候補ら。とてもいい魂の奴だったのら。でも、限界が近かったのら。それを知った我は、ある日先輩君が家を出るところから付けていたのら。会社近くの道路まで行ったら、我が飛び出て助けてもらって、魂を連れて行くつもりだったのら。でも…確率の低かった未来が選択されてしまったのら』

「確率の低かった…?」

『…我が手を出す前に、先輩君は自らの命を捨てる事を決めてしまったのら』


…自らの、命を…

…そう、“あの人”は確か電車に…


『…少し思い出したら?そう、電車に飛び込んでしまったのら。我が気付いた時には遅く、手を伸ばしたが届かなかったのら。せめて死の直前に我が触れてさえいれば、汚れていたとしても魂を連れて行く事は出来たのら』

「…先輩の魂は、どうなったの…?」

『安心するのら。流石に愛し子としては持って行けなかったけど、神様と交渉はしたのら。輪廻転生の輪を少し変える事になったのら』

「輪廻転生の輪?」

『壊れた魂、割れた魂は破片を回収されて、輪廻転生の輪に入るのら。まぁ次の人生へ向かう為の順番待ちみたいなやつら。大体が同じ世界の輪に入ってまた人間になるけど、自ら命を絶った人間は同じ世界の動物とかに変わるか、別の世界に転生するかの2択なのら』

「…同じ世界の人間にはなれないの?」

『命を粗末に扱う、と言うら?それの罰のようなものなのら。でも、昨今は先輩君みたいにやるせない自死もあるのら…そこは神が判定して次を決めてるのら。だから、先輩君の事は頼んだのら』

「…人間に生まれ変わるように?」

『彼にまたあの世界で人間をやらせるのは可哀想過ぎるのら。本当なら我が救えるはずだったのに、まただなんて…だから、この世界の輪廻転生の輪に入れておいたのら』

「なら、今、先輩は?」

『それは言えない、本人は覚えてないのら。輪廻転生の輪に入れば、必ず記憶を消されるのら。でも、キチンと転生して、今は楽しそうに過ごしているのら!心配しなくて大丈夫なのら!』


リリエンハイドが少し浮かび、笑顔で僕の頭を撫でる。

段々と気持ちの整理がついてきて、ふいに涙が頬を伝った。

あぁ、“あの人”はやっと幸せになれたのか、良かった、本当に。

もう何をしてもらったかなんて覚えてないけど、それだけは心に感じた。

顔も名前も声も、思い出せない事が少し悲しかった。


『サガラユヅキは先輩君が好きだったのら?』

「さぁね…もう覚えてないから、わからないよ」

『多分、好きだったのら。だから、サガラユヅキの魂は汚れ始めたのら』

「え?」

『先輩君が死んで、新たな候補を探してる時にサガラユヅキを見つけたのら。日に日に汚れていく魂を見て、今度こそ連れて行くと心に決めたのら。先輩君と繋がりがあるのも連れてくきっかけになったのら。視えた未来は…先輩君と同じ、電車に轢かれるシーンだったのら』


…少し、ゾクっとした。

なんとなくだけど、否定が出来なかったからだ。

後を追う、なんて…


『だから、こうして会えて良かったのら。楽しく過ごせているみたいら!でも、困った事があってここに来たら?』


…あ、すっかり忘れてた!

そうだよ、ヴァイリー王国をなんとかしたくてここに来たんじゃん!


「な、なんとかなる?」

『勿論なのら!手を貸してあげるのら!こっちに来るのら!』


リリエンハイドが僕の手を掴んで、どんどん進んでいく。

僕はとりあえずそれに付いていき、進む間に細々とした質問をしたりした。

本当になんでも答えてくれるから、ちょっとびっくりした。

とりあえず、さっきのエリア石の魔石化ってやつについても聞けたのはラッキーだったな。

そうして暫く移動すると、前方にまた1人の幼女が立っている事に気付いた。


『おーい、ヴァイリー!』

『リリエンハイド、来たのさ』


…あれが、ヴァイリー王国の精霊、ヴァイリー。

長い真っ赤な髪をポニーテールにした、翡翠色の切れ長な瞳。

幼女だけど、中々大人っぽくも見える。

というか…怒ってないか?あれ。


『ヴァイリー、これが例のサガラユヅキなのら!』

「は、初めまして。相楽柚月改めユージェリス=アイゼンファルドです」

『ヴァイリーなのさ。よく来たのさ』

『ヴァイリー、サガラユヅキに力を貸して欲しいのら!』

『勿論なのさ。あのバカども、さっさと始末するのさ』


おっと、まさかの物騒な発言なんですけど?!

一体何があったのさ…?!

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