王位継承権
「…今なんて言いました?」
ナタリー婚約騒動(仮)から数日後、僕は学院から帰ってすぐに母様に呼び出された。
しかも父様もいた、お仕事は?
そんな風に疑問に思ってると、母様から突然爆弾を落とされた。
でも突然過ぎて今がわからなかったよね。
えーと、なんだって?
「…ヴァイリー王国における、ロイヴィスちゃんの王位継承権は放棄出来たけど、ユージェリスちゃんは放棄出来なかったわ」
「いやいやいや、なんでです?兄様は放棄出来たんだったら、僕だって…」
「…実はな、この1年で、ある問題が起こっていたそうなんだ」
父様がため息をつきながら頭を抱える。
えー、父様にそんな顔させるなんて何があったんですか…
そこから聞いたのは、纏めるとこんな感じだった。
・僕のヴァイリー王国での王位継承権の順位は14位だったらしい(兄様が13位)
・現在のヴァイリー王国国王には息子が2人、国王の兄弟が3人(ここまでが継承権1〜5位)
・国王の兄弟には全部で息子が4人(継承権6〜9位)
・先代国王の兄弟関係などから当て嵌まるのが5人(継承権10〜14位、つまり僕達がここに含まれる)
・国王の長男が1年前に大怪我をして中々良くならないらしく、この度王太子を辞する事になった
・国王の次男が女性関係が酷くて問題を起こし、近々廃嫡が決まっている
・国王の兄弟は歳が歳だし、王位継承権を辞退する方向性らしい(ここまでで1〜5位が全滅)
・国王の兄弟の息子4人中3人は結婚を機に放棄済(6〜8位全滅)
・10位〜13位も既に放棄済(兄様は今回受理)
・つまり残るは9位と14位の僕のみ
何それ、問題起こりすぎでしょ。
1年前までは王太子が問題なかったから発覚しなかったけど、改めて酷いな。
ちなみに王女様は3人いるので、女性が王位につける法律だったらこんな事にはならなかったとの事。
そりゃそうだ。
「それでね、今回放棄したい旨を伝えたところ…返ってきた答えっていうのがねぇ…」
「…『長男の方は次期宮廷魔術師長なのでやむ終えず受理するが、次男は認められない。調べたところ、随分優秀な人材だという結論に至ったため、我が国の血は薄いが、王女を全員娶らせて濃い血を混ぜる事にした。なのですぐに我が国へ参られるように』だそうだ」
「行くわけねぇだろうが」
「ユージェリスちゃん、心の声が出てますよ。お口が悪いわ、もう少し言葉遣いに気をつけなさい?」
「すみません、つい…」
いけね、ポロっと言っちゃったわ。
何その上から目線。
王女?いらんわ!!
っていうか僕が何歳だと思ってるんだ!!
種馬扱いするんじゃねぇ!!
「…ちなみにこの件について、うちの陛下と王妃様にも伝えてきた」
「え、陛下とベティ様に?」
「まぁ、お2人はなんて?」
「陛下は『うちの愛し子様と知っての発言ならば、外交問題にしても良さそうだな。今のヴァイリーなら簡単に潰せそうだな、ははは』。王妃様は『よろしい、ならば戦争だ、うふふ』と。ちなみにどちらも微笑んではいたが、目は全く笑っていなかった」
アカーン!!!!
2人とも殺る気だ!!!!
別に戦争までしなくてもいいから!!!!
腐ってるのは貴族だけかもだし、戦争だと国民全体に被害が及ぶから!!!!
「あらあら、お兄様とお義姉様ったら本気ね、ふふふふ」
「マリエール、笑い事ではないんだがな?」
「あら、そんな事存じ上げておりますわ。私だって彼の国の血が流れる者として、当事者でもありますから」
「それはそうだが…」
「さぁて、ユージェリスちゃん、どうしたい?お母様に話してごらんなさい?望む結果が得られるように、皆様と一緒に頑張っちゃうわよ!」
やーだー、母様、絶対零度の微笑みぃ!
ブリザード使えたの、父様だけじゃなかったんですね!
うーん、でも望む結果って言われちゃうと…
「…とりあえず、ヴァイリー王国のやり方は好まないから、さっさと王位継承権は破棄したいかな。というか9位の人は?」
「まぁ、それは前提条件よねぇ。9位の人はまだ産まれたばかりだそうなの、ちょっと生後数ヶ月の赤ちゃんを王太子にするのはまだちょっとねぇ…」
「…あぁ、そうだ。王妃様から手紙を預かってるぞ。是非読んで検討してほしいとおっしゃっていた」
ん?なんだろ。
父様から手紙を受け取り、中身を確認する。
…ふむふむ、ふーむふむ。
成る程、それもいいね!
「よし、決めた!父様、学院に暫くユズキはお休みするって伝えといて!後で補習でもなんでも受けるからって!」
「あ、あぁ、それは構わないが…どうしたんだ?」
「僕、ちょっと精霊界行ってくるね!」
「「はい?!」」
父様と母様が悲鳴のような叫び声を上げる。
まぁ、それも仕方ない内容だよねぇ。
僕は1からキチンと説明する事にしたのだった。