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隣国の事情

場所は変わって応接室。

流石に婚約者じゃない、というより未婚の女性の部屋に2人きりという訳にもいかないので、こちらへ移動。

ソファに座ると、すぐさまセバスチャンが紅茶を用意してくれた。


「ありがとう、セバスチャン」

「いいえ、ユージェリス様。こちらこそお嬢様の為にありがとうございました。実はあの方、お嬢様にはお話致しませんでしたが、屋敷のメイド複数人に言い寄るような言動を取っていまして…そちらにも困っていたのです。やめて下さい、とは言いづらいお立場の方でしたので…」


なんだそれ、本当にクズ野郎だな。

そんな奴とナタリーが婚約する事にならなくて本当に良かった。


「本当にありがとう、ユージェ君。助かりました」

「大事なナタリーの為だからね、お安い御用だよ」

「…ユージェ君、貴方、少し発言には気をつけた方がよろしいですよ?はたから聞いたら、口説いてくるもしくは恋人同士のセリフのようですから」


…ナタリーの苦言が心に刺さる。

そんなんだよね、なんで僕ってこう言う事なす事がちょっとクサイんだろう。

父様と母様に似て顔がいいからセーフなだけであって、見た目が伴ってなければ痛い人だよねぇ…

でもそんな見た目のせいで、勘違いする人も多くなっちゃうんだから、気をつけないとだし…


「…ハイ、発言ニハ気ヲツケマス」

「あまり自信はなさそうですね、まぁ私も無理なんじゃないかな、と思ってはいますが」


ナタリーさん、厳しい。


「別に今はそのままでも問題ないとは思いますけど、後々好きな人が出来た時が困ると思いますわ。同じ調子で口説いたんじゃ、絶対信用されませんもの」


ナタリーさん、超厳しい。

でも的確過ぎて何も言えない、グスン。


「さて、助けていただいたのだし、お説教はここまでにしておきましょうね」

「ハイ、アリガトウゴザイマス」

「それにしても、ユージェ君はヴァイリー王国でも王族関係者でしたのね。初耳でした」

「それは僕もだよ、ちょっと確認しないといけないなぁ」

「お家に戻られます?」

「そうだね、今日は元々予定もなかったし、母様に確認してくる。じゃあね、ナタリー。あの花束はあげるよ、ファーマの渾身の出来だから」

「まぁ、ありがとうございます。とても綺麗でしたから、お部屋に飾りますね。またお会いしましょう、ご機嫌よう」


僕はナタリーとセバスチャンに手を振ってから、『ワープ』で屋敷に戻った。

ちなみに戻ったらシャーリーとレリックに詰め寄られた。

シャーリーにはこの格好で大丈夫だったかを聞かれ、レリックには何をやらかしてきたのかを問い詰められた。

失礼な、人助けだし!

とりあえず説明すると、シャーリーにはサムズアップされた。

やっぱり女の敵だと思われたらしい、あの侯爵子息。

そしてレリックには…


「…抗議しておきますか?ヴァイリー王国に。我が王国の伯爵と伯爵令嬢と侯爵子息の手を煩わせたとして」


と冷ややかな目で言われた。

程々にね、とだけ言って、僕はその場を離れる。

やらなくていいよ、とは言わない。

そこまで僕はいい子じゃない。

そして所変わって、母様の部屋にやってきた。

今日は午後から予定があるらしく、午前中は部屋にいてくれたからラッキーだったな。


「あらあら、大変だったわねぇ。お疲れ様、ユージェちゃん」

「僕はいいんだけどね。それで、ヴァイリー王国側の王位継承権ってどうなってるの?」

「あぁ、すっかり忘れてたわ。何せ向こうは他国に嫁いだ王族の子孫は王位継承権なんてあってないような扱いだからね。出来るだけ自国の血のみで王族は構成されているの。裏切り者が出ないように、だったかしら?身内で固めて繋がりを強くしたいんですって」

「ふぅん、実力主義なら他国から力のある人間を入れるかと思った」

「それは配下間でやる事らしいわ。力不足だと感じる貴族の家があれば、力のある人を他国から迎え入れて存続させていくのだそうよ。それにうちの国ほど女性の地位も高くないわね。実力主義って言うんだから、女性にも仕事させればいいのに」

「へぇ、変なの」


別に気にしないで結婚だのすればいいのに。

ヴァイリー王国は政略結婚ばっかりなんだろうな。

うわぁ、お祖母様がこっちに嫁いでくれて良かった。

それにリアル男尊女卑って感じなのか…


「ちなみにお母様…アマーリアお祖母様はそういう風潮が嫌でうちの国に来る事にしたらしいわ。いくらお父様…ガルフィー先代陛下が先代王妃様を溺愛していても、優しくしてくれるし、頼りにしてくれるし、色々な仕事も出来るって事で、なんだかんだ楽しく嫁いできたそうなの」

「え?でも前にアマーリアお祖母様は心労で亡くなったって…」

「あぁ…それも間違ってはいないわ。実はね、私とお祖母様だけの秘密なんだけど、お祖母様は元々体が強くなかったの。それが世間に広まると、結婚相手どころかお荷物扱いされてしまうかもしれないでしょう?だから、亡くなる直前まで私にも黙っていたのよ」

「体が…?治さなかったの?聖魔法とかで」

「元々長生きするつもりじゃなかったらしいわ。ヴァイリー王国が好きじゃなかったそうだから…ここへ嫁ぐ頃にはもう手遅れだったそうなの。だから、寧ろよくここまで生きれたものだわ、なんて最期に言ってたのよ?」

「じゃあお祖母様は…この国に来て、楽しくて、余命よりも生きられたんだね」

「そうね、きっとそうだわ」


母様が微笑んで僕の頭を撫でてくれる。

なんとなく、お会いした事がないけど、母様と重なってアマーリアお祖母様が見えた気がした。

側で見守っててくれてるのかな?

それだったら、嬉しいな。


「さて、ヴァイリー王国には改めて書面を送っておきましょうか。うちの息子2人は王位継承権の放棄しますって」

「え?フローネは?」

「あの国は女性が王位につく事はないのよ」


どんだけ古くて時代錯誤な男尊女卑だ。

とりあえずそのまま母様に手配をお願いをしておいた。

よしよし、これでもうヴァイリー王国とは関わらなくていいな。


そんな僕の安心を他所に、数日後届いた返信には衝撃的な事が書いてある事を、この時の僕はまだ知らない。

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