ナタリーからの手紙
ルリエルさんを送って、母様達も屋敷に戻して、リリー達もお家に送ってきた。
フォームさんは最後まで恐縮してたな。
にしても、今日はなんか濃い1日だったなぁ…
やっと自分の部屋に戻れた。
なんか疲れた、このまま寝ちゃおう…
翌朝。
今日は学院もお休みの日だから、ぼーっとゆっくり朝食を食べていた。
というか、ちょっと寝坊してみんな食べ終わった後だった。
1人でご飯って寂しいなー。
「ユージェリス様、本日のご予定は?」
レリックが食堂に入ってきて、僕へ尋ねる。
どうやら父様も仕事へ行った模様。
本当は昨日お休みだったらしいけど、例の実験で潰しちゃったからなぁ。
「んー、特に予定ないんだよね。ラウレアちゃんに会いに行こうかなぁ…いや、今日は近所の人とかいっぱい来るだろうからやめた方がいいか」
「そうですね。ドリーも休暇を取ってリリーのところへ行きましたから、人手も足りていると思います」
「どうしよう、ルーファスのとこに遊びに行こうかな…ん?」
突然、目の前に『レター』が届いた。
とりあえず手にとって、差出人を確認する。
基本的に名前が書いてなければ僕は読まないんだよね。
レリックとかシャーリーに渡して判断してもらうようにしているから。
「…ナタリーからだ、珍しい」
ナタリーのサインと伯爵家の蝋がしてあったので、迷わず開ける。
そのまま中身を確認して…
「レリック、予定出来た。ナタリーのところに行く」
「承知致しました。何かご用意するものなどはありますか?」
「スタンリッジ家へ正式に訪問の連絡を。後はシャーリーに言って、出来るだけ僕がカッコ良く見える服を用意してほしい。ファーマには出来るだけ大きな薔薇の花束用意させて」
「はぁ…ユージェリス様はどのようなお姿でもお素敵ですが…」
「いいから、誰が見ても『あ、敵わないな』って思わせるような服にして!!」
「どうしたんですか?一体…」
レリックが少し慌てたように尋ねる。
僕は黒い笑みを浮かべて、ナタリーからの手紙を握り潰した。
「…ナタリーに纏わりつく、害虫駆除だよ」
『親愛なるユージェ君へ
ご機嫌よう、お仕事お疲れ様でした。
レオ君から少し聞きましたが、大変だったようですね。
そんな時にこんな手紙を出してしまってすみません。
ですが、困っているのでお知恵を拝借させて頂きたいのです。
私の父が外交官であるとお伝えした事があったと思いますが、昨夜仕事を終えて屋敷に帰って参りました。
隣国へ行っていたのですが、何故か見知らぬ男性を連れて帰ってきたのです。
なんでも、私を娶りたい、のだとか…
初対面の方にそんな事を言われても困るので、丁重にお断りしようとしたのですが、聞く耳を持ちません。
男性曰く、占いで私が運命の相手だと出たそうで…
父は押し切られて連れて来ざるを得ない状況になったそうです。
男性は隣国の侯爵家の三男で、我が家よりも地位が高く、押しに弱い父は隣国でお断りが出来なかったそうです。
婚約者もいないのだからとりあえず婚約だけでも、と言い寄られています。
婚約だけならしてもいいかと思ったのですが、なんだか男性の視線が怖くて…
というより、昨夜から部屋にいるのに視線を感じるのです。
怖いのであのブローチは肌身離さず持っているのですが、嫌な感覚はなくなりません。
もし今日お時間がありましたら、ルーファス君やレオ君達と一緒に遊びに来ていただけないでしょうか?
親しい男性がいるとわかれば、少しは諦めて下さるかもしれません。
ニコラちゃんは出来れば連れて来ないでいただければと…
そして皆様には見定めて頂きたいのです。
駄目だと判断されたのであれば、諦めさせる方向に持っていくためにお知恵を拝借したい、と…
面倒くさいお願いで申し訳ありません。
お返事待っています。
貴方の友人、ナタリーより』