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パーティー後《side Another》

◆◇◆side ルリエル◆◇◆


気が付くと、目の前には見慣れた王城の門がそびえ立っていた。

…本当に、ユージェリス様は凄いお方です。

王妃様が転移魔法を使ったところは見た事があったけれど、実際に自分が体験した事はなかった。

王妃様曰く、かなりMPを消費するものだとお聞きしている。

なのに難なく何回も転移するユージェリス様は、きっと王妃様よりもMPが多いのでしょう。

そんな事を考えていたら、背後から悲鳴やら歓声やらが聞こえ始めた。

…それもそうですわね、ユージェリス(愛し子)様が突然現れたんだから…って、え?


「…ユージェリス様、それは…?」


いつの間にか、ユージェリス様は目元に仮面を付けていた。

いや、とてもお似合いですけれども…


「王都はたまに変装してフラフラしてるので、まだ公に顔出ししたくないんですよ。貴族子息…愛し子としている時は、基本的にこれで顔を半分隠してるんです」


…そうでした、ユージェリス様はまだ成人前でした。

というか、まだ学院に入ったばかりの年齢で…

あぁ、ユージェリス様は学院に通っていらっしゃらないんでしたね。


「では、ここまでで申し訳ありませんが、ベティ様にもよろしくお伝え下さい」

「い、いえ、こちらこそお手数をお掛け致しまして…ありがとうございました、娘の事も…」

「リリーは大事な…家族みたいなものですからね。当然の事をしたまでですよ。そしてそのお母さんであるルリエルさんも、大事な人ですよ」


仮面の奥の瞳が優しく微笑む。

あぁ、本当にお優しい方だ。

ユージェリス様が御伽噺の王子様のように、繋いでいた私の手を恭しく持ち上げて、軽く一礼して下さる。

私も手を離していただいた後に淑女の礼を返す。

これでも元は子爵令嬢、貴族の礼も出来ますのよ?

少し驚いた顔をしたユージェリス様も、すぐに微笑んで下さった。

そして手を振りながら、その場からまた去られてしまった。


王妃様にご報告しなくてはいけませんね。

ユージェリス様は本当に、素敵なお方であったと。

そうして私は王城の中へと入っていったのだった。


この時の私は知らなかった。

王城に戻った途端、同僚達にユージェリス様について根掘り葉掘り聞かれて、中々王妃様の元へと戻れなくなるという事を…




◇◆◇side ???◇◆◇


カジェスが帰ってきた。

見回りついでに家に忘れ物を取りに行くと言ってから、全然帰ってこなかった奴が。

真面目なアイツがサボるわけないって思ってはいたけど…

でもなんだ?

すげぇトボトボしながら帰ってきたぞ?


「おい、カジェス!どうしたんだよ、何してたんだ?」

「…あぁ、うん、悪いな。実は妹が産気付いたって聞いて、薬屋まで行ってたんだ」

「マジかよ!えっと、ミミーちゃんだっけ?大丈夫だったのか?」

「リリー、な。特に問題なく出産して、姪っ子が産まれたよ…」

「良かったじゃねぇか!おめでとう!んで、なんでそんなにしょぼくれてるんだ?」

「…実は、俺、愛し子様とお話しちゃったんだ…」

「はぁ?!?!」


なんだって?!

い、愛し子様って、侯爵様の次男坊だろ?!

なんでまたそんな事に?!


「リリーが愛し子様の専属メイドだったんだよ…んで、産気付いた妹を見つけて連れてきてくれたのが愛し子様だったんだと…しかも、愛し子様お手製の今まで食った事のないめちゃくちゃ美味い料理まで食わせてもらっちゃった…」

「はぁー?!おま、それ『領域の料理』だろ?!なんだってそんなもん!!!」


実は伯爵家四男だった俺は、そういう知識を持っている。

まぁ勘当された身だけど。

カジェスは知らなかったようなので説明してやると、より一層顔色が悪くなる。


「どうしよう…俺、お礼とか言ってなかったような気がする…そんな凄いモン食わせてもらったのに…」

「おいおい…それで?愛し子様ってどんな方だったんだよ?」

「そうだな…思ってたより普通の男の子だったよ。優しくて、美少年で、料理上手くて、気さくで…俺の事も送ってくれるとか言うくらい」

「お前それ断ったのか?!」

「断るに決まってんだろ?!緊張して死にそうだわ!!」


…それもそうか。

しかし態々ここまで送ってくれるとか言うなんて、どんだけ優しいお方なんだよ。

…送って貰えば良かったのに、俺も至近距離で拝見したかった。

なんなら同僚って事でお声をかけていただけたかも…


「…それにしても、やっぱり美少年なんだな。という事は、妹君も美人さんなのかなー?」

「あぁ、奥様に似て美人さんだよ、フローネ様は」

「…お見かけした事あんのかよ…いいなぁ、あのお屋敷の方って美形が多い気がする」

「…うん、ミーナさんも美人だった…」

「は?ミーナさん?」

「…妹の同僚に一目惚れしちゃった…もっと早く出会いたかった…恋人とかいるのかな…」


さっきまでショボくれてたカジェスが一転して、熱に浮かされたような表情をする。

…コイツ、全く浮いた話がないと思ったら、突然恋してきやがった…!!

女に興味ないのかと思ってたけど、そうじゃなかったんだなぁ…


「…まぁ、今度妹ちゃんに聞いてみろよ。既婚者じゃなきゃまだチャンスあんだろ」

「そうだな、そうしてみるよ」

「今日は早く帰れよ、大変だろうからな」

「1児の父親は経験済みか。わかった、頑張って妹を支えるよ」


お前は旦那か。

まぁシスコン気味だし、そんなもんかな?

あーあ、俺もなんか嫁と娘に会いたくなってきたなー!!

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