お疲れ様パーティー
屋敷に戻ってレリック達に説明して、屋敷の中は狂喜乱舞だった。
とりあえず厨房に向かい、セイルに許可を得て色々と超特急で料理を作る。
セイルには「全然見えなくて何作ってるかわかんねぇ…」って泣かれた。
まぁ今回はスピード重視だから諦めてくれ。
出来上がったものは片っ端からアイテムボックスに詰め込む。
出来立てそのままにしておけるのは助かるよねぇ。
まぁ『キープ』でもいいけど、量があるから手が足りないんだよな。
全部作り終わって、厨房からそのままステラの家に『ワープ』する。
リリーがいた部屋の真ん中には、大きめの簡易テーブルが置いてあった。
あ、リリーの横にベビーベッドが設置されてる。
さっきはなかったのに。
ラウレアちゃんは寝てるみたいだな。
「お待たせぇー」
「ユージェリス様!」
「はいはい、置くから退いといてねー!フライドポテト、餃子、ハンバーグ、天ぷら、エビフライ、チャーハン、ピラフ、コーンポタージュ、芋餅、ミネストローネ…デザートにゼリー、カップケーキ、アイス…」
ポンポンとアイテムボックスから料理を取り出す僕。
すぐに机の上はいっぱいになっていった。
目をキラキラさせるリリーとドリー。
嬉しそうにニコニコするのは母様とステラとシャーリーとミーナ。
目が点になって固まっているのは残りの3人。
「まぁまぁ、半刻くらいで随分と作ったわねぇ!ユージェリスちゃん、エプロン付けたままよ?」
「あ、外すの忘れてた。まぁそんな事いいから食べようよ。リリー、何食べる?動けないだろうから取ってあげるよ」
「全種類食べたいです!!」
「だと思った、とりあえずリリーとドリーに3種類ずつよそるから、一緒にゆっくりお食べ」
そう言ってアイテムボックスからお皿を数枚出してから、リリーとドリーの分をよそう。
そのまま2つともドリーに渡して、ドリーがリリーの横で食べさせ始めた。
母様達も各々好きなものをよそって食べ始める。
意外と素早く動いたのはステラだった。
さっさとよそって隅っこの席に座って食べ始めてる。
そこで漸く固まっていた3人が動き始めた。
「ま、マリエール様!!私が配膳致しますから!!」
「いいのよぉ、立食形式なんだから、自分で取れるわー」
「い、愛し子様の手料理…」
「食べない事の方がユージェリス様に失礼ですから、是非お召し上がりになって下さい、フォームさん」
「え、俺今日死ぬの?こんなすげぇの食わせてもらえるとか…」
「ユージェリス様はお優しいですから、大丈夫ですよ。さぁ、どうぞ」
「あ、どうも…えっと…」
「リリーの同僚でミーナと申します。カジェスさん、とお呼びしても?」
「え、えぇ、勿論です。リリーの同僚にこんな美人さんがいたなんて…あはははは…」
「やだ、そんな…美人だなんて…」
あ、なんかいい雰囲気になってる2人がいる。
ミーナもかなりいい歳なのに相手がいなくて荒んでたらしいから、これを機に上手くいってほしいな。
カジェスさんはいい人だからオススメだよ。
…というか、ミーナって確か30歳手前だよな?
この世界だと10代後半から20代前半で結婚する人が多いから、ミーナの歳で独身だと遅いって言われるんだよね。
そんな事ないと思うんだけどな…前世の年齢から考えると複雑な気分だよ…
「美味しーい!!美味しいです、ユージェリス様!!」
「えぇ、本当に!また是非参考にさせて下さいね!」
リリーとドリーが笑顔で褒めてくれる。
「坊っちゃま、大変美味しゅうございますよ」
「そうね、ステラ。流石ユージェリスちゃんだわ!」
「ユージェリス様のお料理は久方ぶりでございますが、やはりセイルの料理とは格が違いますね」
「そうですね、セイルさんの料理も悪くないのですが、やはりユージェリス様のものを口にしてしまうと、差が中々…」
「「う、うまーい!!!なんだこの料理!!!」」
「…これが、王妃様の恋い焦がれていらっしゃった『領域の料理』はんばぁぐ…とても、とても美味しい…」
あぁ、そういえば前にリリーが言ってたな。
それで昔ハンバーガーもどき作ったんだっけ。
そんな事を思い出しながら、僕はエプロンを外してアイテムボックスにしまう。
そして遅ればせながら僕も料理をお皿によそって食べ始めるのだった。
半刻後。
「…お腹いっぱい…幸せですぅ…」
「うーん、あの料理の隠し味はきっと…いやでも、あれだけじゃあの味は出ないし…」
「ほっほっほ、いつもよりも食べ過ぎてしまいましたねぇ」
「うーん、私も食べ過ぎてしまったわ。ドレスが苦しくて…」
「私も少し腰回りが…うぅ…」
「セーブしたつもりでしたのに…」
「…ここは天国か…幸せな料理だった…」
「天国って事は、父さん、俺、やっぱ死んじゃったんだね…でも幸せだよ…」
「…美味にございました…」
約3名トリップしてるけど大丈夫かな?
とりあえずみんなお腹いっぱいになったみたいで良かった。
さっさと食器類をアイテムボックスにしまい、テーブルを拭いて後片付けを完了させる。
「あぁっ!!ユージェリス様、申し訳ありません!!」
「いいよ、今回は片付けまでが僕の仕事だからねー」
「…愛し子様って、めちゃくちゃ優しいんですね…」
「はい、ユージェリス様はとてもお優しくて素敵な方ですよ、カジェスさん」
「…ミーナさんも、素敵、です、よ?」
「え?!あ、その、ありがとうございます…」
おぉ、またいい雰囲気になってる。
カジェスさんってミーナと歳も近そうだし、このままくっつくかも?!
「ミーナさんが義姉になるのか…ありだな…」
ボソリと呟くリリーの言葉は、どうやら僕にしか聞こえなかったようだ。
リリー、僕も同じ気持ちだから、暖かく見守ってようね!
「さて、リリーは暫く安静の方がいいよね。とりあえず後で実家に送るよ。とりあえず、先にルリエルさんを王城に送りますね。荷物なんか全部置いてきてるでしょうし」
「え?!そ、その…よ、よろしいのでしょうか?愛し子様のお力をそんなに簡単に何度もお借りしてしまう行為…」
「構いませんよ。でも王城の入口までですが、よろしいですか?」
「勿論でございます!!」
「すげぇ…母さん、愛し子様に送迎させてる…」
「よろしければカジェスさんも衛兵所までお送りしましょうか?その格好、お仕事の途中だったのでしょう?」
「い、いいいいいえいえいえ!!結構でございます!!!!」
「そうですか、残念。あぁ、そうだ、さっきの僕の変装姿は他の人には教えないで下さいね?お忍びで歩き回ってる事は言ってもいいですけど」
「しょ、承知致しました!!!」
うーん、まだカジェスさんとの心の距離があるんだよなぁ。
リリーのお兄さんだし、仲良くしたい。
「じゃあ、ルリエルさん送ったら次は母様達を送るね。んで最後はリリーとラウレアちゃんとフォームさんを家に送って、今日は終わりだ!」
「ユージェリスちゃん、MP大丈夫?」
「大丈夫、MPじゃなくて気力の方が減ってるだけだから」
まさか出産があんなに凄まじいとは思わなくて…
心の中の何かがガリガリ削れていった。
前世では結婚してなかったから産んでないしな…
将来結婚して、奥さんが子供を産む時にはもっとガリガリされそうだ…
「じゃあ、ルリエルさん、行きましょうか」
「は、はい!」
気を取り直してルリエルさんの手を取り、しっかりと握る。
「《ワープ》」
…今日何回跳んだんだろ。