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種明かし

「よし、じゃあ作ってくるからちょっと待ってて」

「はいっ!」

「り、リリー!!おま、愛し子様になんて事を言ってるんだ?!」

「リリー?!」


驚いた声を上げるフォームさんとルリエルさん。

なんなら顔面は蒼白だ。


「いいのよ、お2人とも。ユージェリスちゃんはお料理が趣味なんだから。ねぇ、私もお昼が途中だったから小腹が空いてしまったわ。多めに作ってきてくれるかしら?」

「はい、母様。何人前か作ってきますね。僕もご飯食べてなかったし」

「あぁ、そういえばお待ちいただく間にリリーさんが産気付いたんでしたね…」

「す、すみません…」

「リリーのせいじゃないってば。んじゃ、一旦屋敷に戻って…」

「リリー?!生まれた?!」


僕の言葉を遮るように、叫び声が響く。

扉の方を振り返ると、そこにはリリーのお兄さんが立っていた。

おぉ、やっぱりリリーに似てるなぁ。

あの後数回変装して街を歩いた時に見かけてたけど、とっても真面目にお仕事してる人だった。


「ほら、お兄ちゃん、ラウレアって言うのよー」

「ラウレア…あぁ、ラウレア、可愛いなぁ。初めまして、僕の可愛い姪っ子ちゃん。カジェス叔父さんですよぉ」


ドリーの抱っこしてるラウレアを見て、お兄さんはデレデレな顔をしてる。

うわぁ、折角の好青年の顔が見るも無残な姿に…


「カジェス!そっちも大事ですけど、それよりも早くご挨拶なさい!!」

「え?母さん?なんでいるの?今日は王城じゃ…」

「連れてきていただいたのよ!!ほら、早くなさい!!」


そう言って、ルリエルさんが無理矢理お兄さんの顔をこちらに向ける。

少し痛そうな顔をしてから、目を見開いて固まった。


「…ご無沙汰しております、奥様」

「ふふふ、お久しぶりね、カジェス」

「…そして、そちらはもしや…」

「リリーの仕えている、うちの息子のユージェリスよ」

「…い、愛し子様…?」

「こんにちは、お兄さん。ユージェリス=アイゼンファルドです」


あ、さっき以上に完璧に固まった。

まるで壊れたロボットみたいにギシギシ音を立てて僕から目を逸らした。

ある意味新しい反応だな。


「カジェス!ユージェリス様が名乗って下さっているんだから、貴方も名乗りなさい!!」

「はっ!!…えっと、あの、リリーの兄の、カジェスと申します…い、いつも妹がお世話になって…」

「いえいえ、こちらこそ。お兄さんもいつも街を守ってくれてありがとうございます」

「へ…?俺、いや、私の職業をご存知で…?」

「えぇ、お見かけした事も、お会いした事も、お話した事もありますからね」

「「「え?」」」


僕の言葉に固まるフォームさん、ルリエルさん、カジェスさん。

あぁ、そっか、知らないんだったな。


「《ハルーシネーション》」


一瞬でジェリスに見た目を変える僕。

にこやかにカテーシーでご挨拶だ。


「アイゼンファルド侯爵家特殊(・・)メイドのジェリスと申します。数年前にこちらの姿でお会いしたのが初めてですわね」

「あ、あぁー!!!!あの時の!!!!」


驚愕の表情で目を見開いて叫ぶカジェスさん。

そして僕はまた一瞬で元の姿に戻る。


「まぁ、後はお忍びで来た時ですかね。最低でも1年に1回程度、侯爵領の様子を兄と一緒に見たりしてましたから」

「あ、あぁ…そうなん、ですか…」


最早放心状態のカジェスさん。

そんなに衝撃的だったかね?


ぐぅぅぅー…


そんな最中に鳴り響く音。

室内にいた全員が音を奏でた人を見る。


「…お腹、空きました…」

「…リリー…」


だよね、うん、わかってた。

とりあえずポケットを経由したアイテムボックスからクッキーの小袋を取り出す。


「ほら、とりあえずこれ食べて待ってな?ちょっと作ってくるから」

「うぅ…ありがとうございます、ユージェリス様…」


袋を開けて嬉しそうにクッキーを頬張るリリー。

意外と元気だな…これが産後ハイってやつ?

クッキーを食べてるリリーの周りで慌てる3人を放置して、僕は屋敷へと戻るのだった。

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