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新たな命

そこからは怒涛の展開だった。

ステラの家のリビングに着いた瞬間に聞こえたリリーの悲鳴。

僕の体は恐怖で固まったが、ルリエルさんは逆に声の聞こえる方向へ瞬間移動の如く一瞬で駆け込んでいった。

うん、母は強い。

どうやらミーナも手伝っているらしく、リビングにいたのは僕とフォームさんだけだった。

ちなみにフォームさんはリリーの悲鳴が聞こえる度にビクつき、部屋の中をウロウロしてたよね。

僕が来た事にすら気付いていない模様。

ただ待つだけの時間がこんなに苦痛だとは思わなかった…


リリー、頑張れ。


そして…


「っふぎゃぁっ、ふぎゃあっ…」


今までで1番大きなリリーの叫び声のすぐ後に聞こえた、可愛らしい泣き声。

その瞬間、僕とフォームさんは顔を見合わせ、嬉しさのあまり抱き合った。

フォームさん、めっちゃ泣いてるし。


「…ぅわぁ!!も、申し訳ありません!!」

「いえいえ、僕もつい抱きついてしまって…」


勢いよく離れて、謝罪を繰り返すフォームさん。

しょうがないって、僕そんなんじゃ怒らないよ?


「ユージェリス様!お義父さん!」


部屋のドアが開き、中からドリーが現れる。

あ、ドリーもめっちゃ泣いてる。


「ドリー!リリーは?!」

「母子ともに健康です!どうぞ、中へ!」


許可を得たので中に入る。

ベッドの上のリリーの腕の中には、小さな小さな尊い命が確かに存在していた。


「リリー…おめでとう、お疲れ様」

「ユージェリス様…本当に、ありがとうございました…ユージェリス様がいらっしゃらなかったらどうなっていた事か…あの、よろしければ、抱いてやってくれませんか?」

「え、いいの?」

「勿論です、是非お願いします」

「えっと、ルリエルさんは抱っこした?ベティ様が…」

「私は取り上げた際に抱っこ出来ましたから、大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」


そう言って微笑んでくれるルリエルさん。

というか、よく見たらめっちゃ血だらけだ。

取り上げてそのまま抱きしめたんだろうなぁ。

というか、もしかしてドリーはまだ抱っこしてないんじゃなかろうか。

パパより先でいいのか不安になり、ドリーを見る。

ドリーは泣き腫らした目を丸くしてから、笑ってくれた。


「ユージェリス様、是非お願いします」

「そ、そう…?じゃあ、えっと、失礼します…」


恐る恐る、リリーから赤ちゃんを受け取る。

ふにゃふにゃで、皺くちゃで、柔らかくて、力を加えたら壊れてしまいそうなくらい小さかった。

それでもしっかり抱っこすると、なんだか心がとてもあったかくなっていった。

あぁ、愛しいって、こういう事をいうのかなぁ…


「…可愛いね」

「ふふ、ありがとうございます」

「この子、名前は?」

「まだ決めてないんです。色々迷ってしまっていて…」

「…あの、ユージェリス様。もしよろしければ、名付け親になっていただけませんか?ちなみに女の子です」

「え?僕が?」

「ユージェリス様に名付けていただけたら、この子も嬉しいと思うんです」

「そうですね、それは名案です、ドリーさん!」

「だろう?」


そ、そんな事言われたって…!!

え、えっと、なんか前世の名前でいいのとかあるかな…?!

うーん、うーん、うーん…

日本語だと浮いちゃうよね…

何か、どこかの言語で…

そして、この子に望むのは…


「…ラウレア」

「ラウレア、ですか?」

「…精霊語の一種で、『幸福』とか『幸せ』とかって意味があるんだ。この子には、幸せになってもらいたい」

「ユージェリス様…ラウレア、うん、いい名前ね、良かったわね、ラウレア」

「ラウレア、生まれてきてくれて、ありがとう」


リリーが微笑み、ドリーがまた涙する。

周りのみんなも笑顔になっていた。


「《ラウレア、君の未来が末永く幸多からん事を》」


僕の言葉に、ラウレアの体がキラキラした光に包まれる。

生まれてすぐに愛し子の祝福だなんて、贅沢な赤ちゃんだねぇ。


「ユージェリス様…!!」

「大事な妹分だからねぇ。なんなら僕が結婚出来なかったら、ラウレアに貰ってもらおうかな?」

「ゆ、ユージェリス様が義理の息子…?!」

「まぁ、ラウレアちゃんがお嫁さんに?可愛がっちゃうわぁ!」

「奥様?!」


母様までもが認めてくれちゃった。

じゃあまぁ、僕も将来結婚出来ないかもと不安になる事はないな!

というか…


「…それだと完璧に光源氏計画ってやつだな」

「ヒカルゲンジ?なんですか、それ」

「んーん、ただの独り言だよ。ラウレア、可愛いねぇ、いい子に育つんだよー?」


自己中な我儘レディにはならないでおくれ。

素直に育ってねー?


「さて、出産頑張ったリリーには、何かご褒美をあげようかな。何がいい?」

「えぇ?!そんな、ご褒美だなんて…!!」

「いーの、それだけ大変だったんだから」

「…ほ、本当によろしいのですか…?」

「願いをどうぞ?お嬢様」


ドリーにラウレアを渡して、僕は跪いてリリーの手を取る。

…ベティ様が言ってたのはこういう事かな、王子様気質ってのは。

なんとなくカッコ付けちゃうとこうなるんだよねぇ。


「…ユージェリス様、あの…」

「ん?」


ぐーぅ…


「…お腹、空きました…」


リリー、奇遇だね、僕もお昼食べてないからお腹空いたんだ。

ぐぅ…

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