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お叱りを受ける

遅くなりました!

ちょっと長めです!

「…あれ?父様いない…」


魔法師団室の父様の座席前に『ワープ』したんだけど…本人がいなかった。

周りを見回してみると、困った事に知ってる顔がない。

僕と関わりあるのって第1〜3が殆どなんだよなぁ…

だからなのか、ここにいる人達の『え?愛し子様いるんだけど、どうしたらいいの?』みたいな空気が凄い。

気持ちはわかるよ、マジでごめんね。


「…失礼を承知で発言を許可していただけますでしょうか?」


凛とした声に、僕はそちらを向く。

そこにいたのは色素の薄い感じの儚げ美人な女性の師団長さんだった。

ちなみに師団長さんとただの団員さんの違いって服装なんだよね。

師団長は羽織ってるローブの丈が長くて、装飾に銀の刺繍が入ってる。

師長の父様は長い丈に金の刺繍で、団員さんの刺繍は師団によって色が違う。

確か虹と同じ7色だったはず。

それにしてもこの人、確かスタンピードの時にもいた…


「勿論です、ええと…」

「第5師団長、イザベル=バライドルと申します。家名はありますが爵位は継いでおりませんので、どうぞイザベルとお呼び下さい。それで、本日は如何致しましたでしょうか?」

「改めまして、ユージェリス=アイゼンファルドと申します。少し王妃様にご用があり、突然ではありましたがこちらにお邪魔させていただきました」

「そうですか、王妃様に…多分、今は師長から陛下と宰相様も一緒に本日の説明をお聞きしていると思いますので、陛下の執務室にいらっしゃるとは思いますが…」

「そうですか、教えて下さってありがとうございます」


うーん、執務室なら勝手に行くわけにはいかないよなぁ…

ちょっと急いでるんだけど…


「…不敬を承知で、一言よろしいでしょうか?」

「え?あ、はい」

「…愛し子様は、少々行動を自重された方がよろしいと思います」

「は?」


…え?どういう事?

少し呆けた顔をしていると、イザベル様が思いっきり眉間に皺を寄せてから僕に向き直った。


「以前から愛し子様の行動には、少し問題があるように思えます。例えば通常、この王城に出入りする際には申請と承認が必要になるにも関わらず、貴方様は簡単にここまで入ってきてしまう。まだ成人前なので大目に見るべきなのかもしれませんが、貴方様は他ならぬ愛し子様です。その行動が簡単に世間へ知れ渡る事をご認識下さいませ」


…なんか、初めて普通に怒られた気がする。

愛し子だからって結構甘やかされてたりするからな、僕って。

あー、うん、そうだよね、普通こんな簡単に入ってきちゃダメだよね…

ここ、忘れてたけど国の最重要機構だし。

…でも僕がここに突然来たのって、黒死病の時と昨日と今だけじゃ…?

黒死病は緊急事態だったし、昨日は父様に呼ばれたからなわけで…

まぁ今日は国としての緊急性はないから、転移してくるのはあんまりよろしくなかったな、反省。


「お言葉の通り、ここへの転移行為は愛し子という権力を振るうかのような振る舞いだと思います。国の最高機関である王城への無断侵入と取られてもおかしくはない。大変申し訳ありませんでした」


僕はイザベル様に深く頭を下げる。

悪い事は悪いし、素直に謝らないとね。

でもなんだか、周りから息を飲むような音が聞こえる。

うーん、愛し子的には謝るのはNGだったか…?


「…分かれば結構です。ここは仕事場ですから、気軽に遊びに来られても迷惑なのです。二度としないで下さい」


…悪いのは、僕だけども…

なんか、ちょっと、言い方が厳しいと思う。

いや、まぁ正しいんだけども…うーん…


「…承知しました、ではこちらの部屋には転移してこないように致します。如何なる理由があろうとも」

「この部屋だけでなく、王城への直接転移をお辞め下さい。ここ以外にも重要な部屋は沢山あるのです。キチンと手順を踏んで入城されるように」

「はい、今後はキチンと『レター』にて入城の許可を頂き、城の門を自分の足で通ってから入るように致します。二度と王城内へ直接転移は致しません、《精霊の名にかけて、必ず》」

「はい、聞き届けました。それで結構…」

「例えまた黒死病のような感染症を見つけたとしても、通常の手順通り普通に『レター』を申請課の方へ送り、承認が下りるまではこちらにはお伺いしないようにします。それでは、失礼しました」

「え?あ、いや、そういう事ではなく…」

「え?何か問題でも?そういう事ですよね?」

「違います!私はあくまで遊びに来るなと言っているのです!」

「今までだって遊びに来るならキチンと馬車で来てましたが?」

「は?」

「ベティ様…王妃様や王女様とのお茶会の際には招待状がありますから、我が家の馬車でお伺いしてましたし、それ以外で転移してきた事などありませんが」


イザベル様の顔色が悪くなる。

どうやら少し勘違いをされている模様。

僕は別に転移でフラフラ遊びに来てるわけじゃないんだよね。

ベティ様達とのお茶会の時はいつも馬車で来て、キチンと入城の申請もしてたし。


「で、ですが今日は…!!」

「王妃様に至急のお願い事があったのですが、流石に直接王妃様のお部屋や別の場所に伺うわけにはいきませんから。なんたって重要な部屋は沢山ある(・・・・・・・・・・)わけですし。だから父に確認を取れるように、こちらへ転移させていただいたのです」

「…っ!!」

「でもそうですね、この部屋だって重要な書類が山ほどあるのですから、私のような部外者が立ち入るのもよろしくありませんよね。このまま一旦城の門まで戻る事にします。改めて手続きをして参りますね」

「あ、愛し子様、そのっ…!!」

「おや?ユージェリス、どうかしたのか?」


焦って僕を止めようとするイザベル様を気に留めずに部屋を出ようと扉に手をかけた瞬間、勝手に開いた。

どうやら父様が帰って来たところだったらしい。

少し驚いた顔の父様がいた。

そして後ろにはロイド様もいた。


「ユージェリス様、今日はお疲れ様でした」

「父様、ロイド様、お邪魔してます」

「なんで部屋から出ようとしてたんだ?私を探してたのか?」

「いや、ベティ様のところにいるリリーのお母さんを探したいんだけど…」

「ん?ルリエル殿か?なんでまた」

「リリーが産気づいたから、付き添ってほしくて。もうすぐ産まれちゃうの」

「なんだと?!…あぁ、すまん、大声出して。リリーは確か来月では?」

「陣痛きて破水しちゃったの。さっき領地に連れてって、母様達が側にいるんだけど…やっぱりお母さんもいた方がリリーも安心するかなって」

「そうか…それもそうだな。よし、王妃様のところへ一緒に行こう。事情を説明すれば許可が出るだろう。王妃様も4人の子供の母親なんだ、わかって下さる」

「あ、でも僕、城の門に行って申請出してから入り直すから、父様先にベティ様に説明しといてくれる?」

「は?なんでまたそんな事を。このまま行けばいいだろう?」

「精霊の名にかけちゃったからね。僕もうここじゃ転移しない事になったんだ、どんな事があろうともね」

「…どういう事だ?」

「別に?売り言葉に買い言葉ってやつかな?まぁ悪いのは僕だから、仕方がないんだけどねー」

「あ…わ、私…」


震える声に、僕達は一斉にそちらを向く。

そこにいたのは…顔を真っ青にして、震えて、ボロッボロに泣いてるイザベル様だった。


…やっべ、女性泣かせちゃった…

ちょっと大人気なかったかな…

あ、いや、僕、今は大人ではないけども。


「イザベル?どうした?」

「イザベルさん?」

「そ、そ、そ…」

「「「そ?」」」

「…そういうつもりじゃなかったんですぅー!!!!」


わぁ!!泣き崩れちゃった?!

やっぱり悪いのは僕ですか?!

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