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付き添えない

最初に浮かんだのは、ベティ様だった。

元看護師さんで、頼り甲斐があって…

でも次の瞬間、すぐに気付いた。


あ、ベティ様、産科が担当じゃないや。


前に前世の事で覚えてる内容を話し合った時に出た結論として、多分内科系の病院勤めだという事になったんだよね。

持ってる知識がそんな感じ。

全く僕には未知の世界でした、意味わからん知識ばっかり。

ちなみに僕は事務系のOLだったらしく、見積や報告書なんかの書き方とかそういう知識は豊富だった。

…営業アシスタントだったんだろうか?

今となってはわからない事だけど。


とにかくベティ様のところへ行くという選択肢は消した。

よくよく考えると、王妃様(ベティ様)普通のメイド(リリー)を診てもらうとか、不敬にも程があるわ。

よく思い止まったよ、僕偉い。


そうすると行き着く先はただ1つ。

『ワープ』を使って辿り着いたのは、1軒の家のリビングだった。

行き届いた掃除に、いつ来ても落ち着く雰囲気。


「…まぁ、坊っちゃま?」


ぽかん、とした顔で安楽椅子に座る高齢の女性。

小さな丸い眼鏡をかけて、編み物をしていたようだった。

その姿を見て、僕は焦るようにリリーを持ったまま近付く。


「ステラ…!!助けて!!リリーが生まれちゃう!!」

「ユージェリス様、落ち着いて下さい!!リリーが生まれるのではなく、赤ちゃんが生まれるんです!!」


シャーリーのツッコミに一瞬我に返る。

普通に間違えたわ…ってそんな事より!!


「あらあら、もう陣痛が始まってるのかしら?」

「そう、そうなんだよ!破水もしちゃってて、間隔も結構短いみたいで…!」

「まぁ、坊っちゃまは随分と物知りなんですねぇ。男の子なのに破水や陣痛の間隔までご存知だなんて。ではそちらの部屋のベッドに寝かせて下さいな。シャーリーさん、お手伝いして下さる?」

「あ、はい、勿論です!」


リリーを近くのベッドに降ろし、様子を見る。

リリーの陣痛は相当のようで、凄い汗をかきながら低く唸っていた。

リリー…頑張れ…!!


「さて、坊っちゃま」

「え?」

「出て行って下さいませ」

「…え?」

「ここからは男子禁制、見れるのは旦那様だけですよ」


…それも、そうか…

いくら僕でも、流石にダメだよね…


「…ドリー連れてくる…」

「よろしくお願いしますね」


目に見えてしょぼんとした僕の頭を笑顔で撫でてくれるステラ。

うぅ、優しい…


「…リリーを、よろしくね。《ワープ》」


笑顔で手を振るステラと頭を下げるシャーリーを見ながら、僕は屋敷へと戻っていった。


食堂に戻ると、辺りは騒然とした。

というか、ドリーに見つかった瞬間に肩掴まれた。


「ユージェリス様!!リリー、リリーさんはっ?!」

「あー、ごめんごめん、リリーはステラのところに連れていったよ」

「へ?ステラさん、ですか?」

「元々、その予定だったでしょ?」


そう、実はリリーは来月が予定日で、もう少ししたら侯爵領の実家に帰る予定だったのだ。

そして侯爵領の薬屋さんであるステラに介助してもらって出産予定だった。

医者という概念がないこの世界では、近所のご年配の女性が助産師代わりになってくれる。

偶々リリーの実家近辺担当だったのがステラだ。

ちなみにステラはうちのなんでも出来るスーパー庭師、ファーマの奥さんでもある。

何回か変装してファーマと一緒に遊びに行った事があったからあそこまで跳べたんだよね。

逆にリリーの実家は行った事ないからわからなかった。

…お兄さん探して跳んでも良かったかな?

でも仕事中だったら街の中歩いてるだけか。


「とりあえずドリー、僕ともう1回ステラのところに行こう。付き添えるのは旦那さんだけらしいから」

「あ、はい!よろしくお願いします!!」

「待って、ユージェリスちゃん!」


母様に呼び止められて、指を鳴らすのを止める。


「あ、はい、母様」

「私も連れてお行きなさい。シャーリーもステラも聖属性は持ってないわ。出産は何があるかわからないから、私も側にいるわ。貴方は部屋には入れないでしょう?」


あ、そっか、確かにそうだよね。

シャーリーもステラも光属性しかないから、例えば大量出血なんかだと対処が出来ない。


「あとミーナ、貴女はリリーの実家の場所を知ってるわね?親御さん達に知らせる必要があります、付いてらっしゃい」

「承知致しました」

「どう?3人なら『ワープ』出来るかしら?」

「何人でも大丈夫だよ、なんたって僕は父様と母様の子だからね!」


心配そうに尋ねる母様に、冗談交じりで明るくそう答える。

それを聞いて少し微笑んでくれた母様とミーナは僕の肩に捕まった。

離れていると『エリア』で指定しないといけないからね、くっ付いてくれた方が楽と言えば楽だ。

ちなみにドリーは既に僕の左手を両手で掴んでる。


「では、行きます。《ワープ》!」


僕達はまたステラの家のリビングに跳んだ。

ほら、僕は隣の個室に入っちゃいけないからね…

ちなみに現在、侯爵家ではエリア石を使用停止としています。

なのでリリー実家に『レター』が送れません。

ユージェリスにやらせればいいのですが、何が起こるかわからないので魔力を温存させたい母様。

なのでミーナも連れて行く事に。


ただし母様、ユージェリスのMP量知りません。

そしてユージェリスはそこまで考えがいってないので言われるがままです。

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