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検証(ほぼ)終了

今回はちょっと長めです。

僕は剣を構えて、魔物と対峙する。

鞭のようにしなった尻尾が僕に向かって繰り出されてきた。

察知スキルと身体強化スキルでそれを避けながら、剣で受け止めて斬り返す。

でも、中々斬れなかった。

さすが神話級、天災級は斬れた剣でも尻尾すら落とせないとは。


「…っお硬い方ですことっ!!」


スカートが広がらないように気をつけながら、空中で一回転。

どうやら中は見えなかったようで、数名から落胆の声が聞こえた。

あ、父様がまたブリザード。

…まぁ、中にはスパッツ擬きを履いてるから下着は見えないんだけどね。

そして下着は男物のボクサーパンツです。

どうやら過去の愛し子のおかげか、この国の下着は前世とあまり変わりがない。

女性物も同様です。

但し貴族はブラジャーじゃなくて、コルセット兼用の結婚式とかのドレスの下に着てるようなタイプのを着用してるそう。

流石に使った事はない、僕は男だもの。

今日は女体化してますが、胸にサラシ巻いただけです。


閑話休題。


魔物の攻撃を避けつつ、僕は剣で少しずつ斬りつけていた。

でもかすり傷程度。

これは聖属性魔法でも付与してから攻撃した方がいいかなー?


…というより、この魔物、元のねずみに戻せないものか。


「…試す価値はありますわね」


確か魔石を取り出すのは詠唱した聖属性魔法が必須なはず。

倒す前にそれで取り出してみればいいんじゃないか?

普通は魔石の場所がわからないから、倒した後に探すものだと父様は言っていた。

でも僕の鑑定スキルなら既に額にあるってわかってる。

やるしかないよねぇ…

詠唱は恥ずかしいけど、みんなの前だから無詠唱擬きは避けておきたい。

よぉっし、腹括ったぞ!!


「《汝、屍となりて彼の地へ赴く。御霊よ、精霊の加護を受けよ、"エクサイズ"》!」


詠唱を受けて、持っていた剣が聖なる光で輝く。

さながら勇者って感じだよね。

…いや、見た目がメイドさんじゃダメか。


「まだ倒してないのに『エクサイズ』を?!」

「何をされる気なんだ?!」

「もっかい一回転してくれねぇかな…」

「あぁん?」

「すいませんっしたぁー!!!!!」


父様、ガラ悪ぅっ!!

…でもそんな父様も素敵です、ドキドキ。


「さぁ、覚悟はよろしくて?」


不敵な笑みを浮かべ、こっそり指を鳴らして『ジャンプ』を足に付与。

勢いよく踏み込んで、魔物の上まで跳躍する。

途中で鋭い爪が僕に向かって繰り出されてきたが、聖属性を付与した僕の剣に斬れないものはない。


〈ghYEjJuraAgjaaArugAaaa!!!!〉

「お黙り」


空いた隙をついて、剣を縦に振り下ろす。

カチ割るようにじゃなく、あくまで皮膚を切り裂くだけ。

それでも魔物の額からは多くはないけど血が噴き出ていた。

体を捻り、噴き出る血で汚れるのを避ける。

そのまま地面へ着地すると、剣を振って血を落とす。

察知スキルで感知した物体を一瞥せずに右手でキャッチする。

多分、今回の検証で用いたエリア石だった魔石だろう。

握った感触的に、ギリ握って包めるくらいのサイズだった。

あんなザラメみたいなカケラが随分と大きくなったもんだ。


「チェックメイト、ですわ」


巨体が倒れ、重い音が森に響く。

振り返って魔物を見てみると、その体は段々と砂が崩れるように小さくなっていった。

暫くして、残ったのは小さな小さな塊。

僕はその塊に近付き、手を翳す。


「…《ヒール》」


パァッと辺りが暖かい光に包まれる。

光が収束したところで、僕は屈みこんでその塊を左手ですくい取った。


「ジェリス!!」


父様達が慌てて『バリア』から出て僕に駆け寄る。


「旦那様、こちらをどうぞ」


僕は右手に持っていた魔石を手渡す。

これは検証の結果として詳しく調査される事になるだろう。


「…随分、立派な魔石だな…これがあのカケラとは…《サンクチュアリィ》」

「今まで見た中で、1番デカイっすね…」

「あと、アレックス様、こちらもどうぞ。《ケージ》」


魔法で作り出した小さな檻をアレックス様に手渡す。

怪訝そうに受け取ったアレックス様は、中身を確認して驚きの声を上げた。


「ちょっ、これって…!!」

「はい、予備のねずみと検証に用いたねずみです。額に傷が残ってるのが検証ねずみですね」


そう、檻の中で動いてるのは2匹のねずみだった。

元の大きさに戻ったねずみは瀕死だったが、『ヒール』で回復させる事に成功した。

わかりやすいように額の傷は残しておいた。

そして実は予備ねずみは全く怪我をしていない。

あの時流れ出た血は、僕の血だったのだ。

ショックを与えて気絶させてたから、側から見れば血を流したのはねずみに見えただろう。

そのままアイテムボックスにしまっておいた。

意識さえなければ生き物もしまえるようだ、便利。


「…まだ1刻も経っていないが、ほぼ検証が終わったな」

「びっくりっすね…ちなみに俺、他にも驚いてる事あるんすけど」

「なんだ?」

「ジェリスちゃんが戦ってる時…ずっと女の子が戦ってるように見えて…あの、本当に坊ちゃんっすよね?」

「…ちょっと私も自信がなくなってきたよ…完璧に女性特有の身のこなしと言葉遣いだった…いや、倒してる相手はおかしいんだがな…」


2人だけでなく、他の団員さん達も僕に疑心暗鬼の眼差しを向ける。

やだなぁ、僕はちゃんと男の子ですよ?

そんな気持ちを込めて微笑むと、何故か全員が重く息を吐き出してから目線を逸らした。


何故だ、解せぬ。

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