進化する獣
ねずみから感じられる違和感は、段々と膨れ上がるようだった。
これが魔力なのかな?
なんだかちょっと禍々しい。
「ねずみに魔力だと…?!」
「まさか、本当に魔物化するのか?!」
父様とアレックス様は驚きを隠せないようだ。
そうだよねぇ、この世界で魔力を持ってるのって、人間と魔物だけだし…
…なんでその2つだけなんだろ。
いや、魔物は特異変化だからしょうがないか。
人間って不思議な生き物だねぇ。
「ジェリスちゃん?!なんで平然としてられんの?!」
「…あ、すみません、考え事してました」
「その神経逆に凄いと思う!」
わーい、褒められたー。
「褒めてないと思うぞ、ジェリス」
…父様に釘刺された、グスン。
「さーて、コイツは何に変わるのかなぁ…?!」
段々と驚きや恐怖よりも、好奇心が勝ってきたアレックス様が目を輝かせながらねずみの変化を見届ける。
暫くすると結界の檻がガタガタと音を立ててから勢いよく爆発した。
咄嗟にみんなが腕でガードし、目を逸らしてしまう。
〈JhugarrajUaAaaaa…!!!!!〉
低く響くように這う音が、森に響き渡る。
恐る恐る全員が目を向けると、そこには…
「…っ魔物化、しやがった…!!」
僕の身長を遥かに越すような、大きなねずみの魔物だった。
「本当に…魔物が…」
「これ、自然級か…?」
「自然級でねずみがこんなにデカくなるのか…?象よりデカいぞ…」
…確かに、象以上ギリ恐竜以下って感じ。
いや本物の恐竜見た事ないけど、イメージとしては正しいと思う。
そう思いつつ、僕はねずみをジッと見つめる。
【ねずみの魔物(神話級)→額に魔石あり】
「…うん?」
「ジェリス、どうした?」
「…神話級だそうですよ、旦那様」
「「「「「「「「「…は?」」」」」」」」」
僕の言葉に、その場にいた全員が呆けた声を出す。
そして段々と顔色が悪くなっていき、父様に至っては僕の肩を勢いよく掴んできた。
「…ジェリス、すまない、もう1回言ってくれるか?」
「神話、だそうですよ、旦那様」
「…なんでそんなに冷静でいられるんだ…?!」
「それは勿論…私だからですわ」
にっこりと微笑み、父様を横にズラして前に出る。
そのまま指を鳴らして、アイテムボックスから自前の剣を取り出した。
まぁ周りの人達はパニクってるから、無詠唱もどきには気付いてないでしょ。
「図体ばっかり大きくなられたところで、私に勝てるとでもお思い?ふふっ、寝言は寝ておっしゃって?」
〈JhugarrajUaAaa!!〉
「そうそう、貴方の仇は私ですわ。しっかり狙って下さいまし。《エリア》《バリア》」
僕は後ろにいる9名を範囲指定して、『バリア』を展開した。
これで攻撃は当たらないし、余波も防げる。
「『バリア』?!あの伝説の?!」
「流石は愛し子様…」
わーい、もっと褒めてー!
なんちゃって。
さぁて、ネズ公、一騎討ちといこうか!