室内のブリザード
「あ、あああああの、師長…?!」
吹き荒ぶブリザード。
父様は氷属性でしたっけ?
そんな属性なかったよね?
あ、メグ様も恐怖でか顔色が悪い。
入口付近にいるマタール様も顔が真っ青。
というより、室内にいる師団員みんな顔色悪い。
ソファに座った大人3人は…そんなに驚いてないな。
「あの状態のルートは久々だなぁ」
「昔はよくあれで怒られてましたわね、陛下」
「懐かしいですな」
マジか、陛下の事、あの状態で…
まだベティ様が王妃になる前の話かな?
今だと怒るのはベティ様の役目だもんね。
「ランフェス…私は前々から言っているよな?1つのモノしか見ない癖を直せ、と。先程も陛下がいる事に直前まで気づかず…私へ報告に来たのに、この子をナンパか?余程私を怒らせたいらしい」
「い、いえ、決して師長を蔑ろにしたわけでは…!!」
「マタール」
「はっ!!」
入口付近にいたマタール様が走って近付き、父様の前でビシッと止まった。
「今まで先輩だからとランフェスが私に報告へ来ていたようだが、次からはロイドからの伝言含め、お前が私に報告せよ」
「は、はっ!!」
マタール様はランフェス様より後輩なのか。
確かに20代前半くらいだし、若いんだろうな。
ランフェス様は20代後半くらい。
「それとランフェス」
「は、はいっ!!」
「…口説くな、とは言わんが、この子が誰なのかをはっきり確認するまで、少しは警戒しろ」
「え…?でも師長、師長のお屋敷のメイドさんだと…」
「何故うちのメイドがここにいると思っているんだ?今まで執事以外が来た事あったか?しかもさっきお前も言っただろう、『貴女のような方がいたなんて』とな。古参のメイドでもないものが、何故ここにいる?ここには陛下と王妃様もいらっしゃる。普通のメイドだと、本当に思ったのか?私はうちのメイドだと肯定していないぞ?」
「「…っ!!」」
父様の言葉に、息を飲むお2人。
そしてゆっくりと僕の方を向き、瞳に警戒の色を表した。
うーん、ちょっと遅いよね。
「まぁうちの屋敷の者ってのは嘘ではないがな」
「「えっ?」」
「幻覚魔法を解いてやりなさい」
「はい、旦那様」
僕は一礼し、そして指を鳴らす。
ふわりと風が纏わりつき、次の瞬間には元の僕に戻っていた。
…お2人は顎が外れるんじゃないかというくらい、口を開けている。
「男の子を口説くとは、お前もまだまだだな。精進しろよ?」
父様がブリザードを止め、ニヤニヤしながらランフェス様の肩を叩く。
そして手に持っていた書類を奪い取り、澄ました顔で確認を始めた。
「…い、愛し子、様…」
「騙してしまったようですみませんでした」
「い、いいいいいえ、お、お気になさらず…というよりも、失礼致しました…」
顔面蒼白で僕に頭を下げるランフェス様。
マタール様も顔色が悪い。
まぁ知らなかったんだから仕方がないよね、そういう時もあるって。
僕はランフェス様の肩を軽く叩いて、心の中で慰めておく事にした。