変装というか女装というか
「さて、王妃様にお調べいただくまで、どうしましょうか」
気を取り直した父様が周りに問う。
最初に反応したのは宰相さんだった。
「そうだな、やはりユージェリス殿の仮説を検証してみた方がいいかもしれん。明日以降、動ける師団はあるか?」
「この件に関わっているのは第1と第3です。明日以降でしたら調整は可能ですので、この2つの師団と私で検証してみましょう」
「ん?どうやって検証する気だ?」
陛下が首を傾げながら父様達を見る。
やっぱこの場合の検証といえば…
「検証したい事案はエリア石を動物に取り込ませた場合の影響ですね。あと調べる事と言えばエリア石と黒い瘴気の関係性でしょうか。前者はウサギなどの比較的小さな動物で試せば、仮に魔物化してもなんとか倒せるはずです。問題は後者ですね、きっかけはまだ明らかになっていないし、もし瘴気が発生してしまった場合に対処の方法がない」
「そこはユージェリスに同席を…と、それはいかんか。対外的に『愛し子様』を使っているように見えてしまうからなぁ」
そう、僕を動かす事は簡単には出来ない。
いくら僕から言い出したとはいえ、国家機密案件だしね。
事情を知らない人達からは『なんで愛し子が師団と一緒にいるんだ?』となってしまう。
ならば、やり方を変えるしかない。
「じゃあまぁ、変装ですかね」
「「「「「変装?」」」」」
その場にいた全員が不思議そうな顔をする。
そんなに思いつかないものかな?
「魔法で姿を変えて参加しようかと」
「そんな事が出来るのか?」
「あぁ、そういえばユージェリス殿は息子達と遊びに行く際には髪の色を変えてましたな…」
「ねぇねぇユージェ、どんな風に変装するつもり?」
驚く陛下に、思い出す宰相さんと、ニヤニヤするベティ様。
父様とメグ様は『あー、成る程』みたいな納得の表情だった。
「がっつり変えるなら女装しますけど」
「「「女装?!」」」「ブッフォ!!!!!!」
驚いたのは陛下と宰相さんとメグ様。
吹き出したのはベティ様だった。
女装を見た事のある父様は平然としていた。
いや、ちょっと目が遠くを見てるかな?
「…ベティ、なんで笑ってるんだ?」
「…っじょ、女装っ…!!ユージェの女装っ…!!女装じゃないでしょうがっ…ふふ、あはははは…!!!!」
笑いが止まらないベティ様。
まぁベティ様は僕が元女だって知ってるわけだから、『女装』っていう言葉がツボに入ったんだろうな。
「女装とはまた思い切った…した事があるのか?ユージェリス殿」
「まぁ2度ほど。と言っても5年くらい前ですが」
「ユージェの女装…似合いそうじゃな…というか、女装したら妾と似てるのではないか?」
「ユージェリスの顔立ちはマリエールと似ておりますが、マリエールはガルフィ様よりもアマーリア様に似ておりました。マーガレット様は王妃様に似ておりますし、そこまで女装姿は似ていませんでしたよ」
「そうか、ならば楽しみじゃな!」
うーん、さすがメグ様。
ベティ様の血を継いでるだけあって女装にも強い関心があるようだ。
微妙そうな顔をしてる陛下と宰相さんとは大違い。
「だが、流石に女装は難しいんじゃないか?」
「そうですな、女性とは細かな仕草で表現されていると言ってもおかしくはない。男性であるユージェリス殿が真似て、違和感なくいれるかと言うと…」
「じゃあ今から幻影魔法で姿を変えましょうか。暫くそのままでいるので、いけるかどうか確認して下さい」
「お、おぅ」
「では、《ハルーシネイション》」
うーん、久々に変身するなぁ、ジェリスちゃんに。