秘密のメモ帳
「いや…とりあえずなんでもない。ジェイク、例のモノは?」
いち早く立て直した陛下が宰相さんへ尋ねる。
宰相さんはソファに座り、手に持っていた小さなメモ帳のようなものを机の上に差し出した。
「特に今日は解読するつもりがなかったようで、すんなり借りてこれました」
「え、やらないんですか?」
「これの解読に携わっているのは現在1人なのだが、通常業務の片手間にやっているだけだからな。さぁユージェリス殿、確認してみてくれ」
ふーん、本当にもうやる気のないものなんだなぁ。
メモ帳は魔法で保存処理をされているようで、比較的綺麗な状態だった。
受け取っていざ表紙を捲ると…
「…え、ドイツ語?」
「「「…どいつご?」」」
僕の呟きに、3人が首を傾げる。
一旦無視して、そのまま読み続ける。
「…今度はスペイン語、いや、フランス語?」
「「「すぺいんご?ふらんすご?」」」
え、何これこのメモ帳、多言語過ぎるんだけど?!
言葉のニュアンスで何語かはわかるけど、読めねぇから!!
あ、ロシア語っぽいのもある…ん?
「…私、は…見つける、見つけた?虹色の石…隠す、土の下…」
「読めたのか?!」
父様の驚愕の声が部屋に響く。
陛下と宰相さんも目を見開いていた。
うーん…読めるけど…
「…英語かぁ…」
僕、英語苦手なんだよねぇ…
理系だし、英語は5段階の2か3だった。
ちなみに社会系もそれくらい。
代わりに数学とかはオール5です。
…あの頃、暗記スキル欲しかったなぁ。
「「「えいごって…?」」」
あ、3人とも、ぽかーん。
うーん、どこまで話していいんだろう…
ベティ様にも助言いただきたい。
「えっと…まぁ、あれです、やっぱり皆さんがよく言う精霊語ってやつですね」
「そうか、やはり…聞くところによると、それが見つかった時の愛し子様はお1人の時期だったが、1度確認はしていたらしい」
「へ?ならわかったんじゃ?」
「当時の記録には『わからない』と言われたと記載されていた」
…それ、ただの『わからない』っていうか、『読めないから意味まではわからない』って事じゃ…
「…うーん…」
「どうした?ユージェリス」
「…ここだけの話にしておきたいんですけど、いいですか?」
「あぁ、構わん、黙っておこう。それで?」
「…精霊語ってのはですね、多言語なんです」
「多言語?」
「この世界では私達が話している公用語以外にも、少し訛っている言葉や地域毎の言葉ってあるでしょう?」
「そうだな、我が国に亡命してきたところなんかも少し言葉が違う」
「精霊語にもそれが言えます。様々な言語があるんですよ。その言語でこのメモ帳は埋め尽くされています」
「ほう…興味深いですな」
「生憎私は殆ど解読出来ません。雰囲気のみです。もしかしたらベティ様は他の言語を読めるかもしれないのですが…ベティ様はどこに?」
「メグを心配して付き添っているよ。それにメグから女同士の話があるとか言われていたなぁ」
…学院長の事かな?
「可能ならここにお呼びしてお聞きしたいのですが…」
「なら呼んでみるか、《レター:ベティ》」
陛下がベティ様を呼び出してくれるらしい。
さてさて、ベティ様は僕より英語ってわかるかなぁ?