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魔物と魔石と僕の仮定

屋敷に帰ると、フローネがセリスと一緒に玄関の中で待っててくれた。

僕達を見つけると嬉しそうに微笑み、そして抱きついてくる。


「お兄様達、お帰りなさい!」

「ただいま、フローネ」

「ただいま」

「お嬢様!はしたないですよ!あぁ、お帰りなさいませ、ロイヴィス様、ユージェリス様」

「「ただいま、セリス」」

「いいのよ、家族に対してですもの。ちっともはしたなくなんかないわ!それよりユージェお兄様、学院はどうでしたの?」

「楽しかったよ、ちょっと色々あったけど」

「色々?」

「うーん、この後多分父様に王城へ呼び出されるから、それが終わったら話すよ」

「…またお出かけしちゃうんですの?」

「ユージェは忙しいんだよ。悪いんだけど、僕で我慢してくれるかな?フローネ」

「勿論ロイお兄様も一緒に遊ぶ予定でしたのよ!でも、みんな一緒が良かったですわ…」


目に見えてしょぼくれるフローネ。

僕達は眉を下げながらも微笑み、フローネの頭を撫でるのだった。


「お、噂をすれば」


キラキラと目の前に封筒が現れる。

きっと父様だな。

僕は封筒を手に取り、中を開く。

…『至急王城へ来るように ルートレール』、か。


「しょうがない、行ってくるね」

「行ってらっしゃいませ、お兄様」

「行ってらっしゃい、気をつけてね」

「行ってらっしゃいませ、ユージェリス様」


手を振るフローネとロイ兄様と、頭を下げて見送るセリス。

僕も手を振りながら、反対の手で指を鳴らす。

そして一瞬で魔法師団室に『ワープ』してみせる。

…前も思ったけど、こんな簡単に侵入出来ていいものなのかな?

そりゃ『ワープ』使えるのなんて、僕とベティ様くらいだけど…


「ユージェリス」


呼ばれたので思案するのをやめて顔を上げると、父様が室内の端にあるソファと机の一角から手招きしていた。

おぉ、ロイドさんだけじゃなくて、陛下と宰相さんもいるじゃまいか!

あれ?ベティ様いない?


「陛下、この度は…」

「よく来たな、ユージェリス。まぁ挨拶はいいから座れ」

「こちらへどうぞ、ユージェリス様」


ロイド様が座っていた場所を譲ってくれた。

父様の隣、宰相さんの向かいの特等席。

そしてそのままロイド様は一礼してこの場を去っていった。


「ジェイク様、先日ぶりです」

「先日は失礼した。全く、どこかの誰かの管理が杜撰なせいで…」

「いやぁ、だって今まで使う事なかったから…」

「また王妃様に叱ってもらいましょうか?」

「大変申し訳ありませんでした」


まさかの頭を下げる陛下。

そして呆れたようにため息をつく宰相さん。

それを真顔で見ている父様。

何これ、カオス。

とりあえずさっさと座ってしまおう。


「さて、ユージェリス。お前から貰った手紙の内容だが」

「あぁ、うん、黒い瘴気と魔石の類似点についてのやつね」


僕がロイド様に渡した手紙には、ちょっと気になった事を書いておいた。

それは、あの黒い瘴気の雰囲気と魔石から出ていた黒い光と似ているという事。

そしてそこから派生して、魔石の発生原理はどういうものなのか、という事の2点だ。

魔物は魔力を取り込んだもの、と暗記スキルさんから学んでいたけど、その取り込み方ってどこにも載ってないんだよね。

よく前世の小説とかであったのは、空気中にある魔力を過剰に取り込むと魔物化するとか、そういうものだった。

じゃなきゃ、魔物と動物は別種別って認識だったし。

この世界は魔物から魔物が産まれるわけじゃないからな。

で、僕の仮定なんだけど、動物は魔石の元になる何かを体に入れてしまうと魔物化するんじゃないかと思ったんだよなぁ。

だって魔石は黒い光が消えれば宝石(オニキス)になる。

あれ全体が魔力の塊というわけじゃない。

何か特殊なもの…例えば条件に当てはまる石とかを飲んでしまうと、体の中で魔力か何かを溜め込んで魔物化するんじゃないかな?

だから倒されて体の外に出た魔石は効力を失って黒い石(オニキス)になる、と。


そんな自分の考えをつらつらと思いついたままに4人へ話せば、全員が呆然とした表情で僕を見つめていた。

…長々と話し過ぎたかな?


「すみません、話が長くて。もうやめておきますね」

「あぁ、いや、続けてくれ。まさか、そんな説があったとは思わなくてな…」

「へ?」

「…さっき、暗記スキルで覚えた内容に魔物について詳しく書かれている本が殆どなかったと言っていたな?なかったんじゃない、ないんだ」

「どういう事?父様」

「魔物は魔力を取り込んだ動物、という認識しかないんだよ。それ以上を調べるものはいなかったんだ、ただ1人を除いてな」

「なんで?発生原理とか気にならなかったの?それにその1人って…」

「そういうものだ、と習ってきましたからな…そこで完結しておるのだ。ユージェリス殿も授業で習わなかったか?」

「特にまだ…」

「宰相閣下、あの内容は第2学年の騎士コースや狩人コースの実習が始まる前くらいです。まだ魔物についてはやっていないかと」

「あぁ、そうか。まだ、魔物というものがいる、というところまでか…」


へぇ、実習は第2学年からか。

加減を間違えないようにしないとな、手加減スキルさんで。


「それで、なんだ、ユージェリス。お前の見解だと、今回の黒い瘴気とやらは魔物が関係していると?」

「魔物というよりは、魔石が、でしょうか。まぁただの勘なんですけれども」

「…これは、アレを解読する必要があるな…」

「左様ですな…全く解読は進んでいないので、ほぼなくなった案件でしたが…」

「アレ、とは?」

「ユージェリス、我が屋敷の暗記は済んでるな?魔物について書かれていた本を覚えているか?」


本…確かアレは…


「…ハイドロ=キングラーの、"何故魔物は発生するのか"…?」

「その通り。その本は20ページ程度の薄い冊子だが既に絶版で、実はこの世に10冊も出回っていない貴重なものだ。そしてその作者のハイドロ=キングラーは…初代精霊の愛し子様であられる方だ」


なんと、マジっすか!!!!

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